鮟鱇上声29韻65首(1-20)

                  鮟鱇上声二十九韻六十五首

                            序

  雖然詩古来以押平声之韻為好、但是有孟浩然「春暁」之例。「春暁」押上声
十七篠之韻。余鮟鱇思之而嘗試作押韻上声之詩。鮟鱇不厭悪食也。
  思徒多至情少、難得玉石頭多、可是我想第三十九号上声十六銑韻之詩其四
比較好。請願他家批判。

    鮟鱇喜海暝    大抵昏昏睡    点火口前燈    語魚鱗聚戯

  詩は古来、平声の韻を踏むを好しとしていますが、孟浩然「春暁」の例があり
ます。
春暁は上声十七篠の韻を押韻しています。
  わたし鮟鱇は、これを思い上声押韻の詩を作るを試みました。鮟鱇は悪食(ア
クショク:粗末な食事)を厭いません。
  思いはいたずらに多く情に至るは少なく、玉得難くして石ころ多しですが、
第39番の上声十六銑韻の詩その四は比較的よいと思っています。
  みなさんのご批判をお願いします。


1  (上声一董)              −−−−−−−−−−(訳)−−−−−−−−−

明  君  能  董  統            明君、よく董統(トウトウ=よく統帥する)し
天  下  無  驚  動            天下、驚動することなし
宸  慮  重  群  経            宸慮(=天子のお気持ち)、群経を重んじ
官  租  軽  斗  桶            官租(=税)、斗桶(=マス)に軽し

2  (上声二腫  其一)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

佳  人  愉  愛  寵              佳人、愛寵を愉しみ
英  俊  勤  陪  奉              英俊、陪奉(=おそばにつかえる)に勤しむ
宸  極  楽  和  平              宸極、和平(=平和)を楽しみ
宮  苑  花  満  壟              宮苑(=宮殿の園)、花、壟(おか)に満つ

3  (上声二腫  其二)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

魁  士  貴  侠  勇              魁士(=すぐれた男)は侠勇を貴び
麗  人  優  舞  踊              麗人は舞踊に優る
雅  才  天  下  多              雅才、天下に多く
難  語  其  軽  重              その軽重、語るに難し

4  (上声二腫  其三)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

寒  風  透  骨  波  洶  湧    寒風、骨にしみて波、洶湧たり
難  渡  黄  泉  新  鬼  恐    難渡の黄泉、新鬼(=死んだばかりの魂)恐る
人  欲  避  逃  善  悪  衡    人は善悪の衡(=はかり)を逃れんと欲すも
無  貴  無  賤  能  還  踵    貴きも賤しきもよく踵(きびす)をめぐらすなし

5  (上声三講)              −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

翰  林  多  緑  陰              翰林(=アカデミー)、緑陰多く
学  士  勤  聴  講              学士、聴講に勤む
飄  客  逐  佳  人              飄客、佳人を逐い
好  揮  如  意  棒              如意棒を好く揮う

6  (上声四紙  其一)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

艶  笑  如  花  蕊              艶笑すれば花蕊のごとく
朱  唇  輝  皓  歯              朱唇、皓歯を輝やかす
胡  姫  淳  五  情              胡姫は五情に淳にして
調  戯  明  眸  恥              調戯(=からかう)すれば明眸恥ず

7  (上声四紙  其二)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

何  笑  吾  行  止            なんぞわが行止(=ふるまい)を笑わんか
黒  猩  猩  拍  髀            黒猩猩(=チンパンジー)髀をうつ
当  知  神  在  天            まさに知るべし、神、天にあり
就  是  将  長  跪            ついてはこれ、まさに長跪(=拝礼)せんとす

8  (上声四紙  其三)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

有  銭  慎  汰  侈              金はあるが汰侈(=過ぎたる贅沢)を慎み
質  実  求  玄  旨              質実にして玄旨を求む
四  運  委  天  工              四季のめぐりを天工に委ね
従  容  収  一  死              従容として一死を収む

9  (上声四紙  其四)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

明  月  浮  湖  水              明月、湖水に浮かび
秋  虫  鳴  故  址              秋虫、故址に鳴く
沈  沈  草  木  深              沈沈として草木、深く
寂  寂  諠  塵  累              寂寂として塵累を忘る

10  (上声四紙  其五)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

酔  生  夢  死  士              酔生夢死の士
帰  老  知  心  髄              帰老(=老いて退職)して心髄を知る
人  有  望  郷  情              人には望郷の情あり
晏  晏  終  息  止              晏晏として、終に息止(=やむ)す

11  (上声五尾)              −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

老  当  陪  驥  尾            老いてはまさに驥尾(=駿馬の尻)に陪すべし
命  短  隣  冥  鬼            命は短く冥土の鬼近し
寿  楽  在  無  為            寿楽(=長生きを楽しむ)は無為にあり
依  才  功  未  幾            才に依りても功は幾許もなし

12  (上声六語  其一)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

火  雲  空  谷  無  人  語      火雲の空谷、人声なく
唯  有  蝉  声  堪  酷  暑      唯あり蝉の声、酷暑に堪える
順  着  碧  巌  超  距  渓      苔むす岩を伝って渓流を跳び超えれば
緑  陰  好  釣  香  魚  処      緑陰、鮎を釣るのによいところ

13  (上声六語  其二)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

山  径  崎  嶇  伸  脊  膂      山径、崎嶇たるも脊膂(=背骨)を伸ばし
老  妻  能  走  如  仙  女      老妻の健脚、仙女のごとし
欲  窮  天  阻  冠  雲  嶺      天阻、雲かぶる嶺を窮めんと欲し
私  望  坐  龍  乗  鳳  旅      秘かに望む龍に坐し鳳に乗るの旅

14  (上声七麌  其一)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

四  野  萌  青  蕪              あたりの野は青々と緑もえ
丘  陵  光  旁  午              丘陵に光、旁午(=縦横)
安  求  午  睡  風              いずにか求めん、昼寝の風
蝶  夢  緑  陰  舞              蝶夢は緑陰に舞う

15  (上声七麌  其二)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

凶  歳  襲  辺  土              凶作、辺土を襲い
黎  民  飢  櫟  釜              黎民飢えて釜をかく
厳  冬  雪  意  濃              厳冬、雪の気配濃く
寒  餒  透  腸  肚              寒餒(=ひもじさ)、腸肚に透る

16  (上声七麌  其三)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

老  来  勤  汲  古              年老いて古きを汲むに勤めれば
経  巻  覃  孤  苦              経巻、孤苦(=身寄りのない苦境)に語る
四  海  為  家  時              四海を家となせば
夢  魂  游  洞  府              夢魂は仙洞に遊ぶ

17  (上声七麌  其四)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

雷  公  頻  撃  鼓              雷公しきりに鼓を撃ち
玉  女  披  襟  舞              玉女、襟を披いて舞う
冥  冥  乱  雲  辺              冥冥たり、乱雲のあたり
驚  風  吹  急  雨              驚風、急雨を吹く

18  (上声八薺  其一)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

秋  雨  浣  洒  塵              秋雨、塵を浣洒し
夜  晴  天  洞  啓              夜晴れて、天、洞啓(=がらんと開く)す
菊  花  留  涕  開              菊花、涙を留めて開き
蛩  語  悲  簷  底              こおろぎ、軒下に悲し

19  (上声八薺  其二)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

嘆  訴  聞  丹  陛            嘆訴、丹陛(=天子の宮殿)に聞こえ
明  君  将  賑  済            明君、まさに賑済(=ふるまう)せんとす
吏  人  開  社  倉            吏人(=役人)、社倉(=保管庫)を開き
黎  庶  収  糧  米            黎庶(=庶民)、糧米を収む(=手に入れる)

20  (上声八薺  其三)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

他  郷  愉  饗  禮              他郷に饗禮(=もてなし)を楽しみ
連  夜  醺  芳  醴              連夜、芳醴に酔う
村  酒  勝  帰  心              村酒、帰心に勝り
霊  魂  留  口  軆              霊魂、口軆に留まる


●記録者 鮟鱇 [h016.n078.nhk.or.jp]
●記録日 12/28(月)17:14

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