鮟鱇上声29韻65首(21−42)

           鮟鱇上声29韻65首(21−42)

21  (上声九蟹)              −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

賢  妻  勤  賤  買              賢妻は賤買(安い値でかう)に勤め
姿  態  常  瀟  洒              姿態、常に瀟洒なり
文  質  允  彬  彬              文質、まことに彬彬たり
随  時  親  訓  解              おりにふれて訓解に親しむ

22  (上声十賄  其一)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

商  賈  儲  財  賄              商人は財貨を蓄え
樵  夫  能  伐  採              木こりはよく伐採す
各  人  勤  職  分              各人、職分を勤めれば
天  下  修  千  載              天下、千載に修まる

23  (上声十賄  其二)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

五  欲  皆  原  罪              五欲はみな原罪なり
慢  心  歓  厚  待              慢心して厚待を歓ぶ
老  躯  神  気  衰              老躯、神気は衰えるも
煩  悩  猶  遍  在              煩悩、なおあまねく在り

24  (上声十賄  其三)        −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

雨  過  蒼  浪  海              雨過ぎて蒼浪の海
雄  壮  懸  虹  彩              雄壮たり、虹彩かかる
千  里  有  薫  風              千里、薫風あり
釣  舟  聴  欸  乃              釣舟に舟歌を聴く

25  (上声十一軫  其一)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

夜  夜  京  坊  極  殷  賑  夜夜、京坊(盛り場)は殷賑(=賑わい)をきわめ
胡  姫  酒  肆  能  勾  引  胡姫は、飲み屋によく勾引(客引き)す
曙  光  清  耀  楽  人  眠  曙光、清耀して楽人は眠り
空  巷  餓  烏  鳴  不  忍  空巷(=人気のない通り)に餓えた烏、
                                               鳴いて忍ばず

26  (上声十一軫  其二)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

少  時  身  便  敏         若い時は身体も軽かったが
老  大  心  紆  軫         歳をとると心も紆軫(=心むすぼれる)として憂う
花  短  越  冬  長         花は短く越冬長し
来  春  何  処  蠢         来春、何処にうごめかん

27  (上声十二吻  其一)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

明  月  雲  間  隠              明月、雲間に隠れ
夜  陰  花  柳  近              夜陰、花柳に近し
游  侠  揮  馬  鞭              男だて、馬の鞭を揮い
名  妓  粧  脂  粉              名妓は脂粉を粧う

28  (上声十二吻  其二)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

賢  智  能  韜  隠              賢い人はよく才能を隠し
凝  然  通  秘  蘊              思いを凝らして奥義に通ず
凡  愚  口  吻  先              愚か者は口ぶり先んじ
浅  学  喧  卑  近              浅学にして喧卑に近し

29  (上声十三阮  其一)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

駿  馬  思  長  坂              駿馬は長坂を思い
駑  駘  憂  往  反              駑駘は往復を憂う
人  生  無  復  元              人生は元に復することなく
日  暮  途  猶  遠              日が暮れても、道はなお遠し

30  (上声十三阮  其二)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

田  父  勤  開  墾              田父は開墾に勤め
鯉  魚  游  禁  苑              鯉は禁苑に泳ぐ
孰  賢  人  与  鱗              いずれか賢しこきや、人と魚と
天  意  尊  平  穏              天意は平穏を尊ぶもの

31  (上声十四旱  其一)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

春  夜  東  風  暖              春夜、東風暖かく
月  光  江  上  満              月光、江上に満つ
遙  聴  一  笛  声              遙かに聴く、一笛声
佳  曲  無  聊  散              佳曲、無聊散ず

32  (上声十四旱  其二)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

緑  陰  人  裸  袒              緑陰に人は裸袒し
避  暑  愉  慵  懶              暑を避けて慵懶たるを愉しむ
白  雨  逐  村  童              白雨、村童を追えば
喬  松  張  翠  傘              喬松、翠の傘を張る
                              −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
33  (上声十五潸  其一)

我  欲  先  嘗  饌              我、先に毒味をせんと欲す
君  当  傾  一  盞              君、まさにさかずきを傾けるべし
河  豚  有  禍  災              フグには災いあり
中  毒  無  齊  限              毒にあたれば齊限なし

34  (上声十五潸  其二)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

探  秋  山  径  之  飛  桟      山径に秋を探して、飛桟をゆく
目  下  深  渓  驚  両  眼      眼下の深い谷、両眼を驚かす
錦  繍  紅  黄  起  浪  騒      錦繍の紅黄、波だちて騒ぎ
方  今  天  賦  風  光  簡      まさに今、天は賦す、風光の簡 (手紙) 

35  (上声十五潸  其三)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

月  傍  明  星  皖              月のかたわらに明星あかるく
辺  亭  傾  一  盞              旅先でちょっと酒を飲む
何  来  無  故  愁              どこから来るか、故なき愁い
暗  涙  心  中  潸              暗涙、心のうちに潸たり

36  (上声十六銑  其一)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

酔  時  弄  宏  弁              酔っては宏弁を弄し
醒  後  知  浮  浅              醒めては浮浅を知る
口  過  老  来  繁              失言、年老いて繁し
請  寛  吾  杜  撰              願わくはわが杜撰(ズサン)をゆるせ

37  (上声十六銑  其二)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

慶  賀  君  栄  転              慶賀す、君が栄転
英  才  能  掌  典              英才、よく掌典す
民  求  平  直  時              民、平直を求むる時なれば
勿  怠  勤  忠  善              忠善を勤むるを怠るなかれ

38  (上声十六銑  其三)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

賢  人  審  問  勤  明  弁      賢人は審問して明弁に勤め
下  士  先  言  而  実  践      下士は先ず言いて而して実践す
吾  善  誦  経  無  慎  思      吾よく誦経すれども思いを慎むなく
老  猶  愚  昧  唯  剛  健      老いてなお愚昧にしてただ剛健なるのみ

39  (上声十六銑  其四)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

月  光  不  忍  蹂  苔  蘚      月光、苔蘚を蹂むにたえず
蛍  火  漂  漂  将  息  偃      蛍火、漂漂と将に息偃せんとす
炎  旱  松  陰  猶  夜  乾      炎旱の松陰、なお夜に乾き
碧  巌  無  露  渓  流  浅      碧巌に露なく、渓流浅し

40  (上声十七篠  其一)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

尼  院  山  圜  繞              尼寺、山、圜繞す(=山が取り巻いている)
四  時  来  百  鳥              四時に百鳥来る
庭  園  多  野  花              庭園、野花多く
芳  馥  漂  昏  暁              芳馥(=よい香り)、昏暁に漂う

41  (上声十七篠  其二)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

朧  月  臨  京  兆              朧月、京兆に臨み
幽  風  吹  僅  少              幽風、僅かに吹く
栄  芬  鬱  後  庭              栄芬、後庭にこもり
官  女  眠  春  暁              官女、春暁に眠る

42  (上声十七篠  其三)      −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

日  夕  深  林  杳              日夕、深林暗く
寒  蜩  鳴  樹  杪              寒蜩、樹杪に鳴く
山  湖  思  渺  茫              山湖、思い渺茫たり
遙  看  飛  帰  鳥              遙かに看る、帰鳥飛ぶを


●記録者 鮟鱇 [h016.n078.nhk.or.jp]
●記録日 12/28(月)17:28

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