桃李歌壇  目次

楽しき日々を

連作和歌 百首歌集

3901

タラ・レバとあまりごとをぞ思いてはそは歌にして楽しき日々を 

蘇生

1月9日 20時05分

3902

鱈ちりもニラレバも良し熱燗をちびりちびりと一人居酒屋

海斗

1月9日 21時01分

3903

居酒屋におやぢギャルゐてをとこらに敷居は高くなりにけるかも

素蘭

1月10日 00時24分

3904

時の長(おさ)パフォーマンスを居酒屋へ民におもねる政(まつりごと)とは

蘇生

1月10日 06時41分

3905

悪しくとも人に見ゆるは良かりけり隠さるるこそ恐ろしきなり

ぽぽな

1月10日 10時59分

3905

隣り合うて座り飲めるぞ縁なる見知らぬ国の古き居酒屋

冬扇

1月10日 10時58分

3906

イザナギの黄泉の国より逃げにけり泣きべそかける神の顔なり

海斗

1月10日 17時23分

3907

此の世には八百万の神おはします天にも地にも海にも黄泉にも

冬扇

1月10日 17時36分

3908

そばだてるみやまのおくにかしこくもけがれきよめるあみだぶつすむ

海斗

1月10日 18時15分

3909

紅梅のつぼみの色にわが心染めたし汚れて汚れぬ色に

ぎを

1月11日 01時09分

3910

くれなゐのこきもうすきもからころも末摘花の一つ覚えに 

素蘭

1月11日 01時40分

3911

春の夜の宴を思ひ子狸の腹さすりける霜夜なりけり

海斗

1月11日 07時30分

3912

渋谷から湘南行きのジェイアール深夜の遅れに酔いも醒めたり 

蘇生

1月11日 08時18分

3913

江ノ島へ足を伸ばして冬の海蛸釣り上げて八肢もがけり 

素人

1月11日 08時40分

3914

御節にもあきて正月三日目を夫が腕をふるふたこ焼き

たまこ

1月11日 12時35分

3915

ピザも良しお好み焼きも乙なもの伝統抜け出し肩を丸くす 

素人

1月11日 23時21分

3916

板退けて花札広ぐる炬燵掛け温き賭場(とじょう)にいざや一戦

ぽぽな

1月12日 00時47分

3917

歌留多歌恋のあまたに負けまじく競ふゆふべの姉を思へり 

素蘭

1月12日 01時22分

3918

近眼の奈津がこごみて真剣に歌留多を取るに目配せし人

海斗、奈津は樋口一葉の本名

1月12日 14時03分

3919

海底の眼のなき魚となりてなむかたちあること哀しききはみ 

素蘭

1月13日 01時33分

3920

何ものも見えぬ世界に共に住むお琴佐助の恋物語

冬扇

1月13日 07時15分

3921

見えぬまま通り過ぎるが幸せと心の眼をば得て思う日々 

素人

1月13日 07時38分

3922

一月のほがらかなりし砂浜の流木に座す人へ寄する波

海斗

1月13日 15時02分

3923

我がためのぬくき光と思いても同じ渚に集く若人 

蘇生 

1月13日 17時56分

3924

曇天の渚はアンチ・ロマネスク白猫ひとりしのばせてをり 

素蘭

1月13日 23時42分

3925

あなおかし北斎富士の裏浪を富士の裏にて見初めり愛でり

ぽぽな

1月14日 01時07分

3926

北斎は逆巻く波を右にして遥かな富士に絵島をはいす 

蘇生

1月14日 06時39分

3927

嫁ぐ娘の荷にしのばする秘画なれどほのあかみたる母親の頬

冬扇

1月14日 15時16分

3928

たらちねの親はいざなふうたたねに炬燵と蜜柑とお話あらば 

素蘭

1月15日 01時00分

3929

北風が小家を揺する冬の夜に家族もありき炬燵もありき

ぎを

1月15日 01時25分

3930

沖からの大西すさぶ砂浜の風の澪筋知るや鴎は  

蘇生

1月15日 08時35分

3931

耐え抜けば何が見えくる木枯らしの吹きさらす枝の先の蓑虫

たまこ

1月16日 01時26分

3932

蓑虫の蓑はなにかに似てをれりたとへばグリザベラの衣装と 

素蘭

1月16日 01時41分

3933

遠山にもとほり来れば初時雨簑なき猿の雨宿りかな

冬扇

1月16日 09時10分

3934

碑に表六句は刻まれり蕉風連歌発祥のあと 

素蘭

1月17日 02時13分

3935

香りたつガロンヌ左岸のグラン・ヴァン二十有余の時を刻みて 

蘇生

1月17日 06時57分

3936

八年の時を刻みて今日巡る六千有余の炎灯して 

素人

1月17日 08時41分

3937

須弥山を廻るこの世の限りなく広がる三千大千世界

冬扇

1月17日 15時51分

3938

仮の世の我が魂のかそけさを嘆きつつ思ふ妻は有り難きかな

海斗

1月17日 23時44分

3939

月冴ゆ夜不思議な国のアリスさえみしらぬ世界魂のあそべり 

1月18日 01時13分

3940

天明の兄は明治にひろはれて晶子の琴のかなしき音色 

素蘭

1月18日 01時56分

3941

早暁の鐘の音色の幾重にも違いなきかなこれはあの寺  

蘇生

1月18日 07時55分

3942

ゆふぐれの鐘をはなるる鐘の音の上野浅草近江ぞよけれ 

素蘭

1月18日 21時34分

3943

髭剃つて上野の鐘を聞きゆかな風流途絶えてはや百一年

ぎを

1月19日 01時16分

3944

凍った鐘の澄んだ響きは青空へ僕のこころへとけて来たんだ

海斗

1月19日 08時26分

3945

羊春初めて結ぶ満月に澄みたる恋を告げんとぞ思ふ

ぽぽな

1月19日 10時03分

3946

口あけて九十路は眠る冬日射しうらうら羊夢も現も

やんま

1月19日 10時22分

3947

新しい何かが宿るこの春にどくどくどくと鼓動するかな

李花

1月19日 11時17分

3948

李咲く湊の丘に舞ひたちて心しづかに海鳴りをきく 

蘇生

1月19日 12時42分

3949

桃李(ももすもも)下照る道にいで立たばこの世のほかの花に逢ふらむ 

丹仙

1月19日 14時10分

3950

五百首を詠み出づなどと思ひきや一日ひとひと成りもてゆけり  

蘇生

1月19日 16時35分

3951

花守のゐて咲きにほふ桃の苑かの東皐に詩歌は満てり 

素蘭

1月20日 01時16分

3952

水仙の薫り広がる角部屋に誰の写真を飾るともなし 

李花

1月20日 20時31分

3953

水面をば鏡と我を映せども我に移らずナルシスの罠

ぽぽな

1月20日 23時55分

3954

水鏡真澄の鏡に月影のあれや現と夢のあはひに 

素蘭

1月21日 01時10分

3955

晩鐘のこもりてひびく坂の道青みし草の命愛ほし

1月21日 01時36分

3956

稜線の影絵のごとき東雲の梵鐘ひくく春遠からじ 

蘇生

1月21日 05時44分

3957

かいま見し後姿の懐かしく寝(い)ねで明けたる春の夜かな

冬扇

1月21日 14時02分

3958

合わせもつ幸と不幸の天秤にまどろむ棒の揺るぐ春の夜 

李花

1月21日 20時46分

3959

天秤の荷に豊饒な語彙あらむ花の間に顕つ千金の歌 

素蘭

1月22日 02時11分

3960

言葉てふ金貨手に入れ諸人は失ひしもの気づかで生きる

ぽぽな

1月22日 08時26分

3961

寒々の冬をあわれと思ひきや大北風に好き春の音 

蘇生

1月22日 09時15分

3962

角巻にのぞく瞳の愛らしく微笑み掛くる綿雪の朝

冬扇

1月22日 13時40分

3963

街灯の闇を画せる下向きの光の筒をわた雪が舞ふ 

蘇生

1月22日 21時38分

3964

雪の音と弦の調べが競い合い我の心に青空放つ 

李花

1月22日 21時43分

3965

水仙に遊ぶ子狐こんこんと雪は降りけりあはれ古丘に 

素蘭

1月23日 01時36分

3966

軒をこす丈なる雪と合体の氷柱の連に春訪れて 

蘇生

1月23日 07時18分

3967

物芽出で早もせせらぐ雪解川春を待ちゐる里の夕暮れ

冬扇

1月23日 09時09分

3968

待春の想いに駆られ遠出する固き冬芽のふくらみを知る 

素人

1月23日 10時58分

3969

旅人のなんとはなしの行く手にも漲る息吹琴線に触れ 

李花

1月23日 23時06分

3970

草枕宵あけぼののそのなかは蕪村句集の春の哀艶 

素蘭

1月24日 00時37分

3971

南国は早くも春の気配濃し飛機より見えし月は東に日は西に 

素人

1月24日 09時32分

3972

北国はなほ冴えわたり寒風をシャワーと浴びて心洗わん

ぽぽな

1月24日 11時15分

3973

窓硝子の雲は斜めに行き過ぎむ冴にし空は映らずにあり

海斗

1月24日 21時51分

3974

東の空斜めより冴えいでし下弦の月に時奪はるる

1月25日 00時16分

3975

奪はれし時汚すなかれ思ひ出はなまめく香につつみてゆかし 

素蘭

1月25日 01時37分

3976

ジャスミンの香に誘はれ花売りの乙女の笑みに迷ひ込みたり

海斗

1月25日 16時24分

3977

森深く泉涌き出る小屋近く春の訪れ夢に描きて 

李花

1月25日 22時27分

3978

春立ちて咲くや侘助はんなりと華やぎ給ふ母の頬かな 

丹仙

1月25日 23時06分

3979

男神いく歳ぶりに会ひ給ふ女神はなやぐ御神渡りかな

ぽぽな

1月26日 02時01分

3980

女神とて恋には闇をわたるらし真夜一筋の通ひ路たたむ 

素蘭

1月26日 02時19分

3981

語らひのつきまじ狭き四畳半夜霧よ君が帰る道閉ざせ

海斗

1月26日 05時16分

3982

連なりて生けるがごとき砕氷は湖面はるかに誰がための道 

蘇生

1月26日 07時12分

3983

見渡せば地平線より広き海母の許えと帰し給えよ 

李花

1月26日 21時03分

3984

道問へば花守り人は神さびて歩の始まりを指し給ふなり

1月26日 21時40分

3985

花まだき寒空の下ひそやかに灰まく翁あり花あれかしと

ぎを

1月27日 01時49分

3986

一輪の梅のいざなふ夢なれど落花流水鶏犬相聞

素蘭

1月27日 02時20分

3987

白梅の梢はこはき色なして追ひては紅とともに咲かむと

蘇生

1月27日 06時37分

3988

裏山をもとほり来れば梅の花今を盛りと咲きゐたりけり

冬扇

1月27日 11時47分

3989

梅の花咲き初めにける狭庭辺にはつかに頬染め立ちしをとめご

1月27日 19時38分

3990

紅梅の抱き合う姿雲も見て春風の幕今瞬けと 

李花

1月27日 22時50分

3991

花の香にむかしおもひをいたすゆゑ右近橘左近梅よし 

素蘭

1月28日 00時57分

3992

卓に雫る酒を「もったいない」と吸ふ汝と吾は梅に鶯 

ぽぽな

1月28日 06時23分

3993

境内の手水の音の一隅に小さき梅が紅にゆれをり 

蘇生

1月28日 09時17分

3994

春の日の杜に佇む人影に惜春の花降りそそぎをり

冬扇

1月28日 10時59分

3995

枝にすだくつぼみ未だし白梅の地をくれないに山茶花はをはる 

蘇生

1月28日 19時24分

3996

かもめ屋へ食べに行かうと約束す梅の蕾のほころぶころに

たまこ

1月28日 21時16分

3997

出港の船を慕ひてかもめらが飛び立ちてゆく波の間より

1月28日 21時27分

3998

歌でなく詩〈測量船〉の冒頭にかもめは遠くなりゆけるかも 

素蘭

1月29日 00時59分

3999

愛よりも意志もて生きよと都鳥告げよあだなるかの旅人に

ぎを

1月29日 01時19分

4000

冬海は西の沖より重ねきて巖に波の砕けちるなり  

蘇生

1月29日 01時28分