桃李歌壇  目次

いつの頃

連作和歌 百首歌集

4201  いつの頃よりかさほどに書を読まずなりぬる吾を恥づる心よ  冬扇 3月21日 12時13分
       

4202

 いつの頃よりか技術の進歩にはついてゆけないメカ音痴われ  素蘭 3月22日 00時06分
       
4203  戦死者の数にも麻痺してゆくやうな「いつの間にか」てふ時間は怖い たまこ 3月22日 05時59分
       
4204  麻酔てふもの久方に体験す胃カメラを飲む年とはなりて  冬扇 3月22日 07時27分
       
4205  内視鏡さまざまあれど年なれど未だなさざる知ルノガ怖イ  素蘭 3月23日 02時26分
       
4206  海光を入れてみてゐる万華鏡 午後の茶房に手わたしあひつつ たまこ 3月23日 09時47分
       
4207  肩書きにおもねる主婦ら団居して情報交換いそしみをりぬ  素蘭 3月24日 01時15分
       
4208  七七の後ろの方の七言は四三良からず四三良からず  冬扇 3月24日 13時15分
       
4209  片歌をかけあふ皇子と翁より筑波の道はおもやひのもの  素蘭 3月25日 01時12分
       
4210  言の葉は生まれ出でたるそのとたん親の意届かぬ我が路進む ぽぽな 3月25日 01時37分
       
4211  ことごとはなべて裏目に果てんとす凍てしこだまのごとくむなしき  蘇生 3月25日 08時33分
       
4212  恥多き人の世を生きさらばひて今このときに何思ふべき  冬扇 3月25日 10時04分
       
4213  恥多きと思ふことより人間はやさしくなるるもののやうにも  素蘭 3月26日 00時27分
       
4214  あはき香に見まはせば闇に浮きいでて灯ともすごとき柊の花 たまこ 3月27日 15時12分
       
4215  自己愛のジョバンニ短歌滅ぼすと塚本邦雄の予言 肯なふ  素蘭 3月28日 00時58分
       
4216  幼子に鏡は何を語るのか燃えるひとみを放そうとせず ぽぽな 3月28日 08時44分
       
4217  三面鏡の端にプリズムきらめいて今日こそあらむ開花宣言 たまこ 3月28日 09時59分
       
4218  花陰に佇む君の横顔の深き愁ひをとく術のなく  冬扇 3月28日 15時02分
       
4219  記念切手貼り混ぜて来る恋文のその謎解きにしばし微笑む  千種 3月29日 15時57分
       
4220  ひとたびは血潮騒ぎし一言をいま白く聞く耳な咎めそ ぽぽな 3月30日 03時43分
       
4221  月日経て巡り逢へどもその人の熱きことばはもはやきかれず 茉莉花 3月30日 09時04分
       
4222  擦れ違ひざまにあひ見したまゆらにエスカレーター地下と地上へ 千種 3月30日 11時31分
       
4223  ゆきずりに見し紅き花白き花椿はからき土を好みぬ  素蘭 3月31日 01時28分
       
4224  霧深き渡しに咲ける夕椿たび行く我に問ふことやある  冬扇 3月31日 10時34分
       
4225  地球儀の南をなぞる我が指がわれに問うなり何故に愛しき   蘇生 3月31日 20時07分
       
4226  未だ海は青とどめをり少年の父が贈られしとふ地球儀の海 たまこ 4月1日 01時12分
       
4227  太古より海は境を持ち得ずも誰が決めしか領海なぞ言う 茉莉花 4月1日 02時35分
       
4228  「海が呼んでる」と彼女言い「山が呼んでる」とわたし言うビルの孤島の正午 ぽぽな 4月1日 10時00分
       
4229  若き日は楽しみにせる夏休み今はもの憂く無為の日々なる  冬扇 4月1日 16時53分
       
4230  街灯が雫のやうに灯を点しすでに過去形で語る今日の日 たまこ 4月1日 21時48分
       
4231  半開きの唇ばかり喉ひらき嘯きながら一人づつ消ゆ  素蘭 4月1日 22時59分
       
4232  ゆかないで腕のうちのみどりごのはじめての語を聞いてください  千種 4月2日 16時34分
       
4233  アメリカのみどりごイラクのみどりごの喃語は同じであること思ふ たまこ 4月2日 23時04分
       
4234  斎庭あらばたてがみ撫でむ夢ならば獅子をあやつりいづちに行かむ  素蘭 4月3日 00時26分
       
4235  ライオンの絵を見て怖いと言ふ子あり恐れと憧れ時に同居し ぽぽな 4月3日 02時41分
       
4236  届きたい届きたくない 枇杷の実をゆする木ネズミのこころはゆれる たまこ 4月3日 10時22分
       
4237  眠れ眠れおさなきものよ吐魯蕃の絹につつまれみんなおやすみ  素蘭 4月3日 22時36分
       
4238  誕生日まで得体の知れぬ不安ありて遠く母体を案ずる四月 ぽぽな 4月4日 01時00分
       
4239  すこやかに育てと祈るみどりごのけふ春の日の宮参りかな  冬扇 4月4日 08時31分
       
4240  毒をもて育ちきたりぬ主婦達の噂話の末は泥土  素蘭 4月5日 00時11分
       
4241  春泥の求むるままに靴しずめ燃ゆる連翹亜米利加にあり ぽぽな 4月5日 11時23分
       
4242  へんろ路にたんぽぽ菜の花咲きつづき足裏のよろこぶ土の感触 たまこ 4月5日 12時32分
       
4243  短文のメールに思うことありて返してまたの返えりを待つや  蘇生 4月7日 09時09分
       
4244  優雅なる短歌教室はびこりてうたのいのちの末枯れゆくかも  素蘭 4月8日 00時32分
       
4245  教へるといふは両刃の剣にて一ついかせば一つしぬやも ぽぽな 4月8日 07時37分
       
4246  学び舎を出て少年は海を見る見えぬ白帆の航跡追って やんま 4月8日 08時26分
       
4247  あわ雪はふはりふはりと牡羊の毛になりすまし誕生祝ふ ぽぽな 4月8日 09時10分
       
4248  白白と桜吹雪けり残されし時間は誰にもわかりはしない たまこ 4月8日 16時35分
       
4249  うなゐこは両手ひろぐる帆のやうに蜜のしたたる丘の蛮族  素蘭 4月8日 19時28分
       
4250  恐竜が今も地中に住んでいて爪出すようにクロッカスの芽 ぽぽな 4月9日 07時26分
       
4251  うた作るほどかんたんなことはなく松の針にもをめく男よ  素蘭 4月9日 10時11分
       
4252  川べりをいつもの様に自転車で日々に色なす木々を愛でつつ  蘇生 4月9日 11時31分
       
4253  〈あげた〉のに〈くれない〉族のたはたはけよりて浅知恵女離れぬ  素蘭 4月9日 22時56分
       
4254  この部屋を離れぬ訳を問はれれば貴方々(あなた)の歌と出会ふ快感 ぽぽな 4月10日 09時33分
       
4255  春押しの色に染まりつ遠山がやがて凛々しく夏立つらしき  蘇生 4月10日 09時50分
       
4256  遠山のうすき緑にうるみそめ冬鳥夏鳥いれかはるころ たまこ 4月11日 08時42分
       
4257  朔太郎ならずもパリに行ってみたし春着明るきピンクに替えて 茉莉花 4月11日 14時46分
       
4258  パリ薄暑微かな風に後れ毛の清かにうつる君の帯締め  蘇生 4月11日 18時27分
       
4259  塞ぐ日はノートルダムの懐に音の女神の声聴きにゆく ぽぽな 4月12日 04時32分
       
4260  羞恥なき詩なき言葉よ口あけた柘榴のやうな 死 の・やうな・もの  素蘭 4月12日 13時47分
       
4261  一歩ごとナイフのやうに研ぎ澄まし地雷をよけしことさへもなし ぽぽな 4月13日 01時21分
       
4262  満開の花を散らしてひよどりの数羽いさかふ鋭き声に たまこ 4月13日 07時20分
       
4263  今日も未だ目覚めの見えぬ大公孫樹春は来たぞえ芽吹き賜えよ   蘇生 4月13日 10時07分
       
4264  京雀囀りやまぬ落日を尖塔の上鴉見てゐる  素蘭 4月13日 21時02分
       
4265  山積みの袋に詰めた厨芥を身じろぎもせず鴉見下ろす  蘇生 4月14日 06時15分
       
4266  大がらす飛び来る銀座のレストラン見本のコロッケ掠め飛び去る  冬扇 4月14日 09時29分
       
4267  塵捨て場に生ごみ袋肩ならべさへづる音に春雨弾く たまこ 4月14日 13時30分
       
4268  野に山に捨てられしもの満ち溢る都市の奢りの屍のごとく  ぎを 4月15日 00時14分
       
4269  捨てられしもの拾ふものゐることを映像に見む何か捨てつつ  素蘭 4月15日 01時45分
       
4270  コマーシャル・爆撃・お笑ひ眼球の表を滑る映像あはれ たまこ 4月15日 13時57分
       
4271  魂を入れぬ教育きはまりて女子と小人助詞と精進  素蘭 4月16日 01時12分
       
4272  そもそもの元始女性は太陽でありしとぞ云ふ吾国めでたき  冬扇 4月16日 10時03分
       
4273  正しからぬ本質がまづあらはなる三十一音打ち算すれば  素蘭 4月16日 12時29分
       
4274  くもりなき心にふれしことごとは三十一文字の色にいでにき  蘇生 4月17日 20時06分
       
4275  弱虫の獅子と愚かな狐ゐて奔馬は逝けり 短歌滅ばむ  素蘭 4月17日 22時26分
       
4276  歌いくつ幾行間に黙りたる臆せず詠まん新芽のやうに ぽぽな 4月17日 23時38分
       
4277  「聞いて聞いて」と大切な人に話すやうに詠めと最初に教へられにき たまこ 4月18日 19時09分
       
4278  春更けて浅き緑の麗しき常の緑木ひそと隠れて  蘇生 4月18日 19時42分
       
4279  狂ふことなくめぐりあふ望月に山はさみどり花もをはりぬ  素蘭 4月18日 23時57分
       
4280  天よりの妙なる調べ花の香を受けつつ生を終へたく思ふ 茉莉花 4月19日 00時27分
       
4281  奇跡そは眼前にありさみどりのいのち吹き上ぐほつえの若葉  ぎを 4月19日 23時46分
       
4282  復活祭赤き卵を喰ふからに子規はてつぺんかけたかの鳥  素蘭 4月20日 01時38分
       
4283  満月のおぼろに白き受難節木々の花々風に耐えをり  蘇生 4月20日 16時46分
       
4284  泣く笑ふ絡む罵る論ふ 酒場にタンカ〈タムカタタムカ〉  素蘭 4月20日 21時19分
       
4285  ほのぼのと咲く山桜わたくしが歌を詠むのはただ好きだから たまこ 4月21日 18時30分
       
4286  褻晴れなく引き繕ひて歌を詠むわれを酔へないわれが見てをり  素蘭 4月22日 01時10分
       
4287  どこからか手水に蘂の舟の帆が小さくなりて風に酔いたし  蘇生 4月22日 08時30分
       
4288  月朧ひとり酌みたし戯れごとをさ緑くぐる風に問はれて 4月22日 10時34分
       
4289  北のかた遠く異郷の地に在りて独り酌むこそ哀れなりけれ  冬扇 4月22日 17時09分
       
4290  オ茶オ花オ着物オ短歌…オは似てる。どろんどろどろ狸のハツパ!  素蘭 4月23日 00時06分
       
4291  ショショショジョ寺のツンツン月夜を思ひだし檻のたぬきが満月仰ぐ たまこ 4月23日 19時09分
       
4292  四畳半の檻がこの世のすべてゆゑ飛べない鳥よ空を見てゐむ  素蘭 4月24日 01時23分
       
4293  山路来れば吃々として羽抜鳥たれを偲びて高き声音ぞ  冬扇 4月24日 15時30分
       
4294  大空に出でて小鳥はよすがなき自由にふるひて鳥籠恋ふる  ぎを 4月24日 22時23分
       
4295  不知哉川いさやいさやとながるれば歌の病のとこしきところ  素蘭 4月25日 01時39分
       
4296  源流へ遡りゆく晴をんな毛虫も蝮も道づれにして たまこ 4月26日 10時45分
       
4297  短歌ほろべ うたへどうたへど傷つかぬ心驕りに春ひさがれて  素蘭 4月26日 13時13分
       
4298  支え合い響き合うのが人しあれば百千の歌の連なりぞ美し 茉莉花 4月26日 23時18分
       
4299  もはら言の端言の葉漁る四畳半文りて短歌 下張もある  素蘭 4月27日 00時17分
       
4300  倫敦のビルのあはひに羅馬あり砦言なく歴史を語る ぽぽな 4月27日 10時14分