桃李歌壇  目次

夢とき

連作和歌 百韻

1301 > たはむれに夢ときのもと尋ぬればおどろおどろの物語せり
(紀) フロイド後100年 (1232232)

1302 > 物語る者の心は荒野への罪を償う冱つる旅路よ 
(春秋)
(124 0005)

1303 > 頼政に射られし鵺はうつほ舟蘆屋の浦に浮きつ沈みつ 
(素蘭)
(124 0012)

1304 > 目もあやに卯槌飾れよ あてやかに神やらひする国柄ぞよき 
(堂島屋)
(124 1953)

1305 > をとめごの寝(な)すや板戸を押そぶらふ八島の神は鵺鳥のごと  
(紀)
(124 2132)

1306 > ももづたふ八十の島みのそくへまでわれ立ち送る君が小舟を 
(堂島屋)
(124 2152)

1307 > 波風も静かであれと念じつつ君を見送る大物の浦 
(素蘭)
(125 0038)

1308 > ひたすらに君の旅路を見念ぜば神代の月は全てを照らすか 
(春秋)
(125 0421)

1309 > 訪れしサイパン島の夕映えの珊瑚の浦の美しきかな 
(重陽)
(125 0603)

1310 > 激戦の名残とどめし環礁の波のまにまにわれも漂ふ 
(素蘭)
(125 1850)

1311 > 漂いてスクランブルの交差点火照りし心に春夜半の風 
(春秋)
(125 2226)

1312 > 春風とスクランブルを駆けてゆく君の待ちたる黄昏の街 
(素蘭)
(125 2356)

1313 > 春風とともに駆け出すひとときに幼き日々の里山の見ゆ 
(萌)
(126 0001)

1314 > かすかなる雪解の音のトレモロに春待ちわびし幼き日々を
(重陽)
(126 1509)

1315 > 坂道を泥流となる雪解水(ゆきげみず)土に還らず舗装しあれば  
(小梅)
(126 2138)

1316 > 麓より村雨くれば林道をさわたる蟹の爪あかき見ゆ  
(堂島屋)
(126 2345)

1317 > 群時雨一樹の陰に宿りなば慰むるごと蟹は戯る 
(素蘭)
(127 0019)

1318 > ごうごうと吹雪荒れたる鎌倉のかの雀らのいずこ宿りし 
(重陽)
(127 1206)

1319 > 参道に雪降りつみて鎌倉は今宵鎮めり 昔語らむ 
(素蘭)
(127 1623)

1320 > 紅梅の雪残りたる枝々にかそけき春の色のともれり 
(重陽)
(128 0847)

1321 > 玉椿紅く淡くと染めゐたり雪解雫のきらめきのなか 
(素蘭)
(128 1451)

1322 > 影冨士の厳かなりし浦に立つ雲か霞か朱に染まるを 
(重陽) 
(128 1933)

1323 > 霞たつ熊野古道を辿りなば花訪ふひとの影ぞ恋しき 
(素蘭)
(128 2211)

1324 > やせネット負けるな浮世ここにあり 霞たなびく ゲンジツの影
(耽空)  (129 0000)

1325 > チャット中オネエ言葉も板に付きゲンジツなんて忘れそうだわ 
(素蘭)
(129 0018)

1326 > 気付いたらこんな歳にもなっていた街を出て行こう酒を飲まずに 
(春秋)
(129 0040)

1327 > 酒を断ち必ず明日はと繰り返す震える手から春雨滴る 
(春秋)
(129 0049)

1328 > 焼酎の湯割りを愛でて食毎に和む心の父の卒寿は 
(重陽)
(129 1324)

1329 > 水無月の晦日にくぐる茅の輪にて荒ぶる神を祓へ和める 
(素蘭)
(129 2347)

1330 > 夕風や夏越の祓そよぎいて川浪すずし星待ち渡る 
(春秋)
(130 0113)

1331 > 夏祓きしみ微かに巫女を待つ廊の緑の涼しかりけり 
(重陽)
(130 0811)

1332 > 雲間より光の微塵のやうにふる雪を浴びつつひたすら祈る
(たまこ)
(130 1047)

1333 > 冴え冴えと波にただよう月光の胸に迫りてわれは祈らむ 
(重陽)
(130 1451)

1334 > 「あのときは」といつか笑つて話したい息つめて今は祈るほかなし
(たまこ)
(130 2040)

1335 > 春を待つ初天神のにぎはひに絵馬を奉ずる受験生見て 
(素蘭)
(131 0005)

1336 > 初空に鐘はさやけし受験にと講堂見たしと遠回りする 
(春秋)
(131 0210)

1337 > 梵鐘の午前六時の渚にて鐘を見たしと遠回りする 
(重陽)
(131 1606)

1338 > 鐘の音を聞きたし深き霧のなかに総身凍れる耳として待つ
(たまこ)
(131 1956)

1339 > しろがねを鋳こみたりてふ高麗の鐘さやけくも響む朝かな 
(堂島屋)
(131 2039)

1340 > 新しき町を訪ねてその町の鐘を聞きたる朝のさやけき 
(萌)
(131 2302)

1341 > 彫金の鎚音かろく響かせて無口となりぬ工房の午後 
(素蘭)
(21 0052)

1342 > 朝靄やモンマルトルの石段をひたすら登るサクレ・クール(聖なる心)へ 
(春秋)
(21 0105)

1343 > 草の葉にとまる刹那を祈るかに羽をあはせるムラサキシジミ
(たまこ)
(21 0600)

1344 > 東雲のやうやう朱になずみきて山端をいずる一閃を待つ 
(重陽)
(21 0828)

1345 > あかつきの女神籠もれる天空の光の宴(うたげ)オーロラを見ゆ 
(素蘭)
(21 1819)

1346 > 闇の中イエローナイフに放たれた奇跡の光あふれる慈悲よ 
(春秋)
(22 0006)

1347 > 「大丈夫?」さりげなくそっと覗かれて己が愚かさのただに恥ずかし
(しゅう)
(22 1248)

1348 > さりげなく虚心にあらむわがこころ惑うことなき日々をおくらむ 
(重陽)
(22 1411)

1349 > なよ竹はいと虚心なり日はたけて青あらはれつ霜の下より 
(堂島屋)
(22 1802)

1350 > 朝霜の白く置きたる地を割りて蕗の芽吹ける 春を告げむと 
(素蘭)
(22 2343)

1351 > 風が吹き春夏秋冬繰り返す科学も解ったそこまでは    
         その在る意味は何時わかる?不安が募り悩みぬき何かが見えそう。    
       それだから信じていたい孤の道を春風の中ふと決めました。 
(春秋)
(23 0426)

1352 > 学問はいつしか向かう一へと大きな力を証明しつつ 
(春秋)
(23 0432)

1353 > アテナイに学堂あればラファエロの絵筆動きぬその指の先 
(紀)  
(23 1142)

1354 > ラファエロの描きし聖母たをやかにルネッサンスの息吹伝へる 
(素蘭)
(23 1512)

1355 > ユトリロの肖像描くヴァラドンの油彩に母の思いあふれて 
(重陽)
(23 1533)

1356 > 子を思ふ母の心を十六夜の日記に綴りいざ鎌倉へ 
(素蘭)
(24 0100)

1357 > 遥々の唐の縁の陶片に和賀江の跡の春の大潮
(重陽)
(24 0926)

1358 > 暮れてゆく春の岬のかもめ鳥 旅立ちたまへと風や吹くらむ 
(素蘭)
(24 1401)

1359 > 内海の干潟のごときわが家なり子らは旅立つ鴎のごとく  
(紀)
(24 1431)

1360 > 福聚海無量と聞けりみなのわたかぐろき海苔よ荒びなゆきそ 
(堂島屋)
(24 1744)

1361 > 奢りきて二十世紀のわざわいの根源なりき浅き人智は 
(重陽)
(24 1816)

1362 > 沈黙の春といへどもこの海は劫初の生命響む潮の音 
(紀)
(24 1946)

1363 > 有明の海のゆりかご諫早の干潟追はるる生命いづこへ 
(素蘭)
(24 2335)

1364 > 限りある同じ未来を絞る日々、脱け出そうよとその言葉。
   同じ命が揺れ溶けむ宇宙の風に草は萌ゆ。
    いつか来た道また辿るもうこれ以上歩めずとも探し続ける彼方の言葉 
(春秋) (250237)

1365 > 生け花の燃ゆる命は鳥雲に風に溶けゆく我の旅路よ 
(春秋)
(25 0237)

1366 > 冬河に浮くゆりかもめの白き胸風に晒して生きる清しさ
(たまこ)
(25 1412)

1367 > 流れてはさだめも無けれゆりかもめ眦ゆるめ生くべく思ほゆ 
(堂島屋)
(25 2300)

1368 > 新世紀先取りしたる街並みを細かく縫いて回る「ゆりかもめ」 
(萌)
(25 2332)

1369 > 近未来描く小説読み終へて明るき明日またも翳りぬ 
(素蘭)
(26 0013)

1370 > 空狭き小さき谷(やつ)の湧水の清き流れに時宗おもふ 
(重陽)
(26 0549)

1371 > 霧深き谷間を抜けてさらに抜けうなだれてゐる場合ではない
(たまこ)
(26 0927)

1372 > 銅鉄の額もつ人の狭霧吐き叛けりとなむ史書に見えたる 
(堂島屋)
(26 1949)

1373 > 通ひなれし道をさ霧に迷ひをりいつかの夢のつづきのやうに
(たまこ)
(26 2206)

1374 > 霧深き海に光輪あらはれて祖国とふもの見つめてをりぬ 
(素蘭)
(27 0002)

1375 > 祖国での安息やぶりアガペーを大切にした祈らぬ祈り 
(春秋)
(27 0228)

1376 > マリンガの日本人祭り月光に老いも若きも踊る「炭鉱節」
(たまこ)
(27 1007)

1377 > 幾重にも雪に埋もれしぼたの跡メロンハウスに往時をしのぶ 
(重陽)
(27 1141)

1378 > 雨の音に震へるメロン思ひ出を一方的に遺されさうで
(たまこ)
(27 1501)

1379 > さよならも何も言わずに消えゆきてただ思うのは楽しかりし日 
(春秋)
(28 0036)

1380 > さざん花に子犬にわれに雨が降るひと雨ごとに春を呼ぶ雨
(たまこ)
(28 0100)

1381 > 雨だれの音聞きをれば初夏のショパン弾きたる君を思へり 
(素蘭)
(28 0116)

1382 > 夜更けまで霙打ちたる朝ぼらけいよよ紅さす窓の梅が枝 
(重陽)
(28 0812)

1383 > おだやかな時が続けばそれでいい小春日には「小犬のワルツ」を弾いて
(たまこ)
(28 0857)

1384 > 小春日の渚に寄する小波の真白き潮のささやきを聞く 
(重陽)
(28 0939)

1385 > あすよりの別れすずしき夕べには小波の音さへ高き白浜
(日麿)
(28 1027)

1386 > 汀なる宿をいづれば淡海は寄する波のみ音に聞こゆる 
(堂島屋)
(28 2141)

1387 > いにしへの道の国なり近江路はからくれなゐに深山染まりぬ 
(素蘭)
(29 0024)

1388 > 冬枯れの小径たどりて眺むれば絵島かすみて錆びもとけ初む 
(重陽)
(29 0703)

1389 > お隣の奥さんが今日も弾く「ハノン」ぽつぽつぽつぽつ梅もほころぶ
(たまこ)
(29 0842)

1390 > 連弾の調べゆるかに春を待つ子らよ正しき人となれかし 
(堂島屋)
(29 1257)

1391 > 「トルコマーチ」われと連弾する吾子よゆつくりゆつくり大きくなあれ
(たまこ)
(29 1901)

1392 > オルガンは吹き下ろすごと胸のうち余燼となりていよよ高鳴る
(日麿)
(210 0131)

1392 > 小澤塾若きオペラに喝采の声は至福の余韻となりぬ 
(素蘭)
(29 2350)

1394 > 広縁に祖母の弾きゐしオルガンの音思ひつつ眠らむとする
(たまこ)
(210 0751)

1395 > 面影にたちたる君は花ねむの吉祥天のごとき貌して 
(素蘭)
(210 0945)

1396 > 古里の山のお堂の天邪鬼 もう許されてもいいではないか
(たまこ)
(210 1120)

1397 > まろびゐてしどろにありし野仏の冬日のなかにしづみてゐたり 
(重陽)
(210 1248)

1398 > 雪野原色とりどりのフリースで駆けつまろびつ児らは遊びぬ 
(素蘭)
(210 1453)

1399 > とりどりのアロマに酔いしティスティング二月の夕べワインにあそぶ 
(重陽)
(210 1541)

1400 > 「情熱のアロマ」と歌ふ陽水の色に染まりぬ『コーヒー・ルンバ』 
(素蘭)
(211 0100)