第10回句会桃李10月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:風、髪、美味しい(不言題)

秋の句
雑詠または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)は 「風」 または「髪」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、「美味しい」です。
10月15日(木)投句受付開始
10月22日(木)投句締切
10月29日(木)選句締切、披講

投句: 暁星、葉子、重陽、楽千、楽人、心太、雲外、めじろ、香世、悠久子、東鶴、安寿
選句: 楽千、葉子、安寿、重陽、雲外、木菟、心太、楽人、香世、悠久子、東鶴

披講

・10点句

萩むらが刈られて風は道をかえ  葉子
<安寿(人)>
この情景を私も表現しようと思いつ、結局断念したものです。

<雲外(天)>
野分ですっかり乱れた萩。思い切って刈り取ったら、庭のたたずまいが一変した。
風の通り道もかわった。人生には踏ん切りも必要なのだ。
「萩むらが」はすこし散文的で、「萩むらの」とすればもっとよかったか。

<楽人(人)>
刈られてしまった萩むらを惜しむ気持が、良く分かるような気がします。

<悠久子(地)>
咲き乱れていた萩を刈り取れば、庭の風の流れが変った。
時間の経過を美しく現している。

<東鶴(天)>
感傷的な語を一切廃しつつ、晩秋のうら寂れた感じが良くでています。
風に靡く萩むらの動きこそ「秋風」を感じさせるものですが、ここでは
それが刈られてしまって残像となっている。その索漠とした気分を
「道をかえ」で表したものでしょう。


・7点句

秋風に地図を飛ばしてしまひけり  楽千
<安寿(地)>
秋は、地図のない旅がいい。

<楽人(地)>
地図をなくしても惜しむ気にはならないほど、爽やかな風ですね。
きっとハイキングでのことだと思うのは、単に私が行きたいからなのでしょうか。

<香世(天)>
始めての旅先。行き先が不安になって地図を広げる。
たぶん、ふたりか三人の連れ合いで額を寄せ合って、思案していたのでしょう。
そこへ、秋風のいたずら。さりげない情景が目に浮かびます。


・6点句

秋の山緑それぞれ錆びにける  重陽
<葉子(地)>
木々の紅葉がはじまった。緑が錆びるという表現が面白い。

<木菟(地)>
紅葉前線を山の高さで見せて、季節の移り変わりを一望におさめる、そんなテレビ
番組を、つい先日見ましたが、木々の種類で、錦繍織りなす、いづれにしても美し
い表現です。

<東鶴(地)>
秋の紅葉は月並みな題材。それだけに工夫が必要ですが、この句は
「錆びにける」の写生表現で成功しています。


・5点句

膝抱きて秋の暮れゆく子供部屋  香世
<重陽(地)>
幼いころを思い出させてくれる温かい句です。
子供のゆらぐ心が伝わってきます。童画をみているようです。

<心太(天)>
子供部屋で膝を抱えてるのは、子供じゃなくて
一種の回帰(幼児、少年、少女)としてよんだが。

輪郭のとけて山梨酒になり  安寿
<楽千(人)>
もう何でもかんでもとかして、飲んでおります。
え、山梨って季語ですか。ふむ果実酒を研究せねば。

<雲外(人)>
山歩きでふと収穫した果実を写生し、しばらく壁に架けておいたり…。
思い立って角砂糖を加え焼酎につけておくと、飴色になってきた。
広口瓶のありかにもしみじみとした秋の気配がせまっている。
「輪郭の」としたのはやや説明的で不要か。この上5を「肌寒や」としたら
感興がより出て、よかったのか。

<心太(地)>
ごつごつした山梨がようやく。
たぶん酒(焼酎)につけてるんだろうから、山梨酒にはなるのだろうが、
酒になるという表現は少しひっかかった。

<東鶴(人)>
山梨を使った果実酒というのが珍しい。何とも味がありますね。

秋澄めり粥食い初めし術後かな  重陽
<葉子(天)>
どんな手術であったのだろうか。心身ともに少し余裕が生まれた時、初めて季節の移ろいにきずいた様がよく表現されている。

<雲外(地)>
手術は成功したが患者は死んだ、ということもある。それなりの覚悟をし、
身辺の整理もした。意識が回復しての真っ先の感慨は、「生きている!」
重湯は粥になり、気がついてみると秋の気配だ。あらためて今後の生き方などに
思いが及ぶ。
「食い初めし」で「術後」であることはもうわかっているのだから、「五人部屋」などと下5を情景描写に使ったとしたらどうだったのか。

髪薄すく無精髭なる案山子たち  楽千
<安寿(天)>
「あのおじさまたちは案山子だったのか」と納得しました。

<香世(地)>
最近、かかし博があるとか聞いてます。
しかし、普通の案山子たち(たち、が効いてます)は、風雨にさらされ、あわれです。
お父さんたちもお疲れですか。ごくろうさま。


・4点句

夕風や 蓬髪束ね 秋刀魚焼く  雲外
<木菟(人)>
不言題も兼題もみんなぶち込んで、巧みに詠まれた句に脱帽です。

<楽人(天)>
風と髪の有言題と美味しいという不言題を、同時に、しかも見事に詠んでいると言えましょう。


・3点句

髪を切る見上げた空を雁渡る  安寿
<重陽(天)>
晴々とした気持ちと、何かしら残る少しの未練が伝わってきます。
「髪を切る」と「雁渡る」の配合が良い。

秋蝶の羽風感ずるおくれ髪  楽人
<悠久子(天)>
美しい女の人のそばへ飛んで来た秋の蝶。
羽音も微かで聞き取れないくらいだけれど、羽風は流れて。
「風」も入りませんか?

口笛も身ひとつなりし老いの秋  東鶴
<木菟(天)>
口笛のひびきと孤独感、おなじ老境の身として、つまされました。

恋も色々 秋刀魚だね  心太
<楽千(地)>
何んだか解らないが、嬉しくなる句だ。

<香世(人)>
これ、完成句ですか。気になる(好きだということです)ので選びました。
なぜ、恋と秋刀魚なの? 秋刀魚の顔は皆同じに見えるし。
上5句を勝手に付け加えて遊ばしてください。
<じんじろげ恋も色々秋刀魚だね >なんて。
あっ!もしかしてこれ明石家さんまさんのことかな。

芋焼いて太らば太れ秋深し  楽人
<楽千(天)>
いや、ご同輩。私も喰う飲む運動しないです。


・2点句

緑錆び秋折々の風の声  重陽
<葉子(人)>
もう今年も残り少なくなった。一体実のある仕事をしてきただろうか、など、悔恨の情を折々吹く風は誘う。年をとると、風たちぬ、いざいきめやも、という感じはだんだんにしなくなることが悲しい。

<心太(人)>
緑錆びに作者の工夫を観じた。


・1点句

髪長き娘らさざめきて秋桜  葉子
<悠久子(人)>
秋桜と娘達、は付き過ぎとも思うのですが、とにかく綺麗です。
長い髪、さざめき、コスモスの揺れ、どれも動きがあります。

もろこしの色の髪行くビルの中  悠久子
<重陽(人)>
よく見る光景ですが、見事な切り口で、句に仕立てられています。
ただ、「もろこしの色の髪」は「もろこしの髪」で十分な感じがしますが・・。