第102回桃李七月定例句会披講
選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:蜜豆、波、夏休み(不言題)
雑詠または題詠
兼題1(季題):「蜜豆」 馬客さんの出題
兼題2(キーワード題):「波」
兼題3(不言題):「夏休み」 青榧さんの出題
披講
・14点句
夏風邪の誰彼欠けし山羊当番 馬客
- <鞠(天)>
- 夏休み中の飼育当番の日には、普段から仲好しの山羊と、特にゆっくり遊んだ
記憶がある。そして熱帯夜には寝相も乱れて、夏風邪を引く友達も多かった。
- <佳音(人)>
- にわとり当番、うさぎ当番、かめ当番。山羊当番は大仕事!
- <水(人)>
- ひょっとしたら、夏風邪は口実かも、と考えてみるのもたのしい。
- <ぽぽな(地)>
- 夏休みと言えば、学校。学校と言えば、子供の当番。類想もありそうですが、「山羊当番」という山村を思わせるのどかな言葉の選択と、「夏風邪で誰彼欠ける」の、会話が聴こえてきそうなおかしさがいいですね。
- <童奈(地)>
- <月雫(天)>
- 兎当番でもなく、ニワトリ当番でもなく、山羊当番という、どうかんがえても普通ではありそうもない世界観に惹かれました。夏風邪をひいて、当番を休むというのは常套手段で、おそらくは山羊という存在が重荷にってきたのでしょうね。
- <やんま(人)>
- 当番の登校日。みんな揃う訳ではない。
きっとお腹を出して寝たりして夏風邪なんぞを引いてしまったのだろう。
- <梵論(人)>
・11点句
青簾夜風の中で波となり 青榧
- <月雫(人)>
- 句としてのもたつきはあるのですが、波となる簾、その発見が新しいと思います。
- <しゅう(天)>
- ひっそりと揺れている青簾、うつくしい景だと思いました。心象の表出のように読みましたが。「中で」は「中に」のほうがきれいだと思いました。
- <眞知(地)>
- <四万歩(天)>
- 「夜風の中で波となり」がうまいです。きれいですね。
- <香世(地)>
- 毎日の酷暑の中、選ばずにはおられません。
・10点句
蜜豆と声を揃へて注文す 眞知
- <佳音(天)>
- 勢いのよさにひかれました。
- <顎オッサン(天)>
- これぞ青春、いまでも青春なり。
少女も、心は少女も。
- <ぽぽな(人)>
- とても素直な句だと思いました。家族かな、友達かな、それとも恋人かな。気の置けない間柄が見えてきます。
- <童奈(人)>
- <月雫(地)>
- 右党が甘味処の一角を占領したのでしょう。揃った声の主が、みな初見だとしたらと考えると、更に楽しい句です。
・9点句
遠雷や波に砕けし砂の城 葉子
- <芳生(天)>
- 遠雷と砂の城との対比が効いています。
- <眞知(天)>
- <たま(天)>
- 遠雷がいいと思いました。もっと遊んでいたい、でも雷が・・・という不安な気持ちが次に出てくるフレーズにうまく出ていると思いました。
・7点句
蜜豆やまた僕のことボクと呼ぶ 康
- <潮音(天)>
- くすぐったい会話の描写は一歩間違うと新聞家庭欄投稿のような生温い表現になるが本句はそうではない。なんということのない表現にみえて読者の微笑をさそう佳作に、作者の実力を感じる。
- <やんま(地)>
- 「そこのボク、蜜豆食べに行こうか」
そういう昔からの親しい人とは一体誰なのか。
- <明子(地)>
- 一緒に食べているのはきっと年上のすてきな女性なのでしょうね。
蜜豆のあの甘さとやさしい色合いは、ちょっと背伸びをした恋ごころにふさわしいと思います。
秋波に気づかぬ素振り鱧捌く 康
- <雛菊(天)>
- 関西の夏の風物詩鱧。あこがれていながら未だいただいたことありません。
秋波に気ずかぬそぶりというところに板前の心意気をかんじました。
- <やんま(天)>
- 残暑お見舞い申し上げます。
季節は微妙に移ろっていつしか波には秋の錆色が。
- <四万歩(人)>
- 秋波は「ながしめ」と読ませるのでしょうか。女の媚びた流し目をあえて無視する男ぶり。
「にんげん」のいまだ還らず原爆忌 素馨
- <雛菊(人)>
- ちちをかえせ ははをかえせ としよりをかえせ こどもをかえせ わたしをかえせ わたしにつながるにんげんをかえせ にんげんのにんげんのよのあるかぎり くずれぬへいわを へいわをかえせ 原爆詩人の峠三吉の詩 重いテーマをひらがなでやさしく書かれたこの詩 今この時にこそひとりひとりの胸にきざみたいですね。
- <素蘭(地)>
- 歴史を正しく認識するのが「にんげん」への第一歩と思います
- <好鵡(天)>
- <庚申堂(人)>
- 決して忘れてはいけないことですね。
蜜豆や目を伏せて聞く子の無心 たま
- <佳音(地)>
- 匙で何かをさがすふり・・・。
- <葉子(地)>
- <素酔(天)>
- 蜜豆をはさんで、母と娘でしょうか。母と娘はそういうところで談合をしているのか。娘のいない父親である私にとっては、とても新鮮でした。どんな無心でしょうか。聞いてみたくなりました。目を伏せているのだから、ちょっと辛い内容なのでしょうか。
・6点句
向日葵の迷路に消える一家族 柊
- <康(人)>
- 人間の、いや家族というものの不確かさをも感じさせる何か象徴的な句しているよです。まだそのあたりを「道をしへ」が旋回しているような。
- <しゅう(地)>
- 向日葵畑に入っていった家族はほんとうに消えてしまったのでしょうか?ミステリーの読みをそそられる、「向日葵」の、黄色と緑の、鮮やかな、太陽に親しい花だけに、「忽然と」というミステリーが生まれるような・・・「向日葵」ならではの句と思いました。
- <晴雨(天)>
- ゾクゾクする新鮮な句ですね。
・5点句
人波を浮き沈みつつ神輿かな 童奈
- <顎オッサン(人)>
- 祭の景をきっちりと詠み込んでいます。
- <梵論(天)>
- <眞知(人)>
蜜豆やつきつけられし王手飛車 英治
- <馬客(天)>
- 蜜豆を付き合って、その相手から舌鋒鋭く、何か
問い詰められている男。相手は奥さん、恋人、もしか
して不倫相手?。深読みが過ぎましたか。
- <径(地)>
- 縁台のへぼ将棋?文句なく楽しいです。
蜜豆を食べながらなら、
「待った」「待たぬ」の喧嘩にもならないでしょう。
蜜豆や隅田の風を掬いけり 青榧
- <英治(天)>
- いかにも涼味の感じられる句。
- <四万歩(地)>
- 「隅田の風を掬いけり」の表現が洒落ています。
絵日記は蝉のあれこれにて埋まる 雪女
- <顎オッサン(地)>
- かつての自分にオーバーラップして
共感しました。
- <素馨(天)>
- 今回は、子どもの頃を思わせる句が沢山あって、選句に迷いました。
この句は、宿題の夏休み日記に苦労した、小学生の頃の想い出が蘇ってきました。
蜜豆や教授を囲み女子学生 柊
- <好鵡(地)>
- 日ごろ厳しい教授の好物を見つけ出して誘い出しに成功した娘達の笑い顔が浮かびそうです。
- <香世(天)>
- 女子学生の笑い声や、教授の嬉しそうな笑顔が見えてきます。教授は、若くない、と、思いたい。
・4点句
蜩の波を呑み込む遠嶺かな 好鵡
- <青榧(天)>
- 夕暮れに霞んで行く遠嶺、かぼそく流れて行く蜩の音。日本の夏の情緒ですね。
- <潮音(人)>
- 晩夏から初秋にかけての蜩の声だけが響き渡る壮大な空間を描ききって見事。一見平凡な「呑み込む」が静寂を効果的に捉えている。「[108]:夕波に翳の生まるる天瓜粉」。天瓜粉と夕波の陰影の取り合わせはやはり良いものだと感じさせる。「[42]:盥出すあかごの背伸び波小虹」。「波小虹」の評価に迷ったが、のびのびと水浴する赤ん坊(「あかご」)を祝福するかのような波小虹の意匠が魅力的である。
大南風怒濤吐き出す桜島 欅
- <英治(地)>
- 力強さの感じられる句。火の山からの怒涛。暑い暑い。
- <双六(地)>
- 雄大な句風に惹かれました。怒涛が打ち寄せるのではなく、溶岩の岩肌に覆われた桜島が吐き出しているように捉えたところが新鮮。腹に響くような波音を感じます。
蜜豆の切子の皿の光透く 四万歩
- <梵論(地)>
- <晴雨(地)>
輝きの度に崩れて夏の波 やんま
- <馬客(地)>
- 波が崩れんとして最高潮に達し、崩れる。
その瞬間真夏の陽光に輝く、そして
また盛り上る波。
上五中七がそれを言い切っている。
- <庚申堂(地)>
課題図書傍らに置き昼寝かな 眞知
- <雛菊(地)>
- 課題図書の感想文の宿題。課題図書って教訓的でつまんない話が多いからすぐ眠たくなっちゃうね。これが推理小説だったら目はランランなのに。
- <鞠(地)>
- 読みたい本なら、夜更かししても読むのに、読まねばならぬとなると、すぐに
眠気が……。
忽然と蜜豆消えし冷蔵庫 葉子
- <素蘭(天)>
- 真夏の夜のミステリー
せっかく楽しみにのこしておいた蜜豆がナイ…
夏休みの不言題にもなりそうな句ですね
- <しゅう(人)>
- お中元か何か、高級な「蜜豆」だったのではないでしょうか。楽しみに後で食べようと冷やしておいたのに、遅く帰った息子にきっと食べられてしまったのでしょう。おもわず、ニヤリ笑ってしまいました。
玄関に靴の溢るる夏休み たま
- <康(地)>
- かっての夏休みの、我が家の様子が重なります。
- <素酔(地)>
・3点句
蝉を追ふ自由研究母の郷 英治
- <青榧(人)>
- 子供の頃を思い出しました。野で川で、いろいろなものを追いました。
- <鞠(人)>
- 帰省先はお母さんの故郷、そして自由研究が蝉取りとは、なんという幸せ。
- <素人(人)>
- 懐かしい自由研究です。わが少年時代は大らかでした。
炎ゆる日の国民学校一年生 素馨
- <双六(天)>
- 国民学校一年生まで、あと一歩だった私の胸にも一生焼き付いている、あの日を鮮烈に切り取ってあります。これだけの言葉から想起されるものの大きさに感じ入りました。ただ、「炎ゆる日や」と切れ字を使ってイメージを重層的にする方がいいのか?あの日、あの時をきっぱりと表現した方がいいのか?未熟者には判断がつきません。作者のご意見をお聞きしたい思いです。
レポートの最後の一枚大西日 明子
- <素人(地)>
- 私も苦労しました。暑かった夏休みでした。
- <頼髪(人)>
朝顔を数えて日記書きし頃 東彦
- <頼髪(天)>
土用波すでに午前に凶事あり 素酔
- <ぽぽな(天)>
- 土用波の持つ不穏さを顕在しています。「すでに午前」という表現から、繰り返し寄せる波のように、これからもまだ起こりそうという不安を暗示しています。
波寄せて映画始まる土用かな 月雫
- <明子(天)>
- スクリーンいっぱいに波がくだけて映画会社のマークがど−んと出てくる。
でもこの句の作者はこの映画がどうしても見たいわけではなく、つい足が向いてしまった
のではないだろうか。たぶんまだ仕事中。でもまあいいや、土用の町中は暑さで眠ってしまってるようだし・・・・
ハンモック岩波文庫の糊匂う ぽぽな
- <素人(天)>
- 遠い日が鮮やかに蘇えりました。共感する句です。中七お手柄。
美術館小さき半袖行き交う日 静影
- <素馨(地)>
- 美術館でよく見かける風景ですが、小さき半袖というのがいいですね。
夏休みの課外学習で、小学生の団体が、先生に連れられて、来ているのでしょう。
- <素酔(人)>
蜜豆にをのこ群れをる浜辺かな 顎オッサン
- <雪女(天)>
- 平和な日本のをのこたち
伊勢湾がおし寄せてくる土用波 明子
- <童奈(天)>
すいか割り今泣いた子が笑ってる 雛菊
- <水(天)>
- 真夏の通り雨のように清々しい。
蜜豆や恋敵とも行きし店 素酔
- <康(天)>
- 蜜豆と恋敵、絶妙の取り合わせ。ただ、かってのその店に今ひとりで(あるいは誰かと)来ている情景の方が面白い。
追ふ雲や尻ポケットに夏帽子 潮音
- <たま(地)>
- さわやかな高原を思いうかべました。明るくいきいきしていて好きです、こういう句。
- <明子(人)>
- 追ふ雲や、に何にも縛られない自由な時間を感じます。
髪洗ふ心模様の波立ちて 眞知
- <葉子(天)>
砂日傘レゲエは波を裏返し ぽぽな
- <径(天)>
- 実はレゲエがよく分からないので、
状景は鮮明には浮かびませんが,
とても惹きつけられました。
刹那刹那夏の無限を切り崩す 径
- <庚申堂(天)>
- 人生も,夏休みも同じようなものですね。
蜜豆や付き合ってやると言ひながら 明子
- <双六(人)>
- 男だけでは入る勇気のいる店に入るチャンス。こういう人、いますねぇ。
上手な切り取り方。
- <雪女(地)>
- 実は好きなのね
・2点句
野の百合を見てきて僕の夏終わる 康
- <雪女(人)>
- 老いてなお眼の奥の百合の花
- <径(人)>
- いい夏休みでしたね。
野の百合なんてそう簡単に見られるものではないから。
舞人の眼差し涼し青海波 馬客
- <芳生(地)>
- きれいな句です。
百日紅ラジオ体操くちずさむ 好鵡
- <頼髪(地)>
向日葵の音なく暮るる日一日 四万歩
- <青榧(地)>
- ジーンと、暑さが伝わってきました。
少年の眼を満たす雲の峰 青榧
- <英治(人)>
- 「雲の峰」がよく生きている。
- <たま(人)>
- 白く輝く雲の峰を一途にみつめる少年が見えます。少年の風貌までが感じられます。
乗り継ぎて西瓜の土産従姉妹ん家 童奈
- <水(地)>
- 西瓜をあげてきたのか、もらってきたのか;おそらく前者でしょうか。いずれにしても、西瓜を割るまでの、長い道程にわくわく。
蜜豆ややわらいしゃくりカタカナ語 しゅう
- <潮音(地)>
- 難解でわたしの解釈が追いつかなかった。「やわらい」「カタカナ語」の言葉の当否も判断がつかない(方言では「やわかい」もある)。しかし作者独自の世界を感じさせる本句に非常に魅力的な雰囲気を感じた。いわれてみれば、蜜豆を食べているときの幸福なしゃっくりはラテン語でもスワヒリ語でもなく「カタカナ語」だ。
蜜豆や笑うたび出る糸切歯 やんま
- <芳生(人)>
- 笑っている人を彼女ととるか、それとも子供ととるか。後者ととりたいですが。
- <素馨(人)>
- 蜜豆と糸切り歯の取り合わせが、いいです。
糸切り歯を覗かせながら蜜豆を食べている少女と、やさしく話を聞いてやってる父か兄といった感じでしょうか。
・1点句
ひねもすに顔突きあはす暑さかな 素蘭
- <晴雨(人)>
蜜豆の豆見つけたりもぐりをる 雪女
- <馬客(人)>
- 一読愉快、分かるわかる、の俳諧味。
蝉取りの放りおかれし阿弥陀堂 梵論
- <好鵡(人)>
- 蝉取りに飽きたのでしょうか。それとも昼寝?
日焼けして波を枕に寝てござる 晴雨
- <香世(人)>
- ござりますか(笑い)
虫干しや昭和二十年通信簿 水
- <素蘭(人)>
- 古い箪笥からはいろんなものがでてきて面白いですね
私も昔両親の通信簿を発見
どちらとは申しませんが品行方正学術優等全甲の通信簿に
ひたすら恐れ入った記憶があります
山風も斜めに降りて磯涼み 水
- <葉子(人)>