第103回8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:百合、花火、 アテネ五輪(不言題)

夏または秋の句 雑詠または題詠
兼題1(季題): 百合   画廊桃李をご覧下さい
兼題2(季題): 花火  
兼題3(不言題):     アテネ五輪 


披講


・13点句

葛飾や重なる屋根に遠花火  青榧
<芳生(天)>
下町の夏の夜の情景が分かります。

<素酔(地)>
これは実景なのでしょうか。葛飾という、俳句にとって由緒深いところの、今にしてある、郊外の広がりでしょうか、50年前の東京の風景を見たような、錯覚に誘われました、

<ぎふう(地)>
この場合、「葛飾」という地名が効いていると思いました。

<葉子(天)>


<雛菊(人)>
黒と白の切り絵を見ているよう 葛飾やといきなり言い切ったところが面白いと思いました。

<梨花(地)>



・11点句

百合の香や正座の白き膝頭  虹子
<雪女(天)>
「正座」がいい。

<葉子(人)>


<頼髪(地)>
百合は清楚で少し大人のイメージ

<双六(地)>
膝頭を見せて坐っているのは、ミニスカートの少女であろうか。慣れない正座の膝をそろえて、きりっと前を見つめている少女と白い百合との対比が美しい。

<明子(天)>
清楚な色気が漂います

百合の香や夢に男を殺めたる  たま
<葉子(地)>


<素蘭(天)>
なんとも妖艶な夢
情の深い「女らしい」女性が見そうな夢ですね
私など現の独語で「**ったれ」など罵倒専門

<月雫(天)>
百合の香に誘われる殺意はミステリーじみてますが、百合の香には そういう面もあると同感します。

<馬客(地)>
男性の「作り話」か、女性の本音の句か。

<虹子(人)>
夢でよかった♪


・9点句

遠花火なかったことにしてあげる  ぽぽな
<やんま(地)>
ありがとうございます。

<佳音(地)>
あのとき・・・だったなぁ・・・だけど・・ふふふ、ま、いいか。
と心の中で思う。二人ゐて。

<ぎふう(人)>
なぜかホッとさせられる句です。

<顎オッサン(天)>
夏の日の思い出は切ないものですか。

<頼髪(人)>
そ、そうですかっ!
ありがとうございます!

来年の同窓会も花火の日  馬客
<鞠(天)>
 加齢と共に、同窓会での話題も、世知辛いものになりがち。しかし毎年学友と、華やかに潔い花火を見ながら集えば、日々の憂さも吹っ切れ、元気が出そうな。

<頼髪(天)>
来年もみんな元気で集まろう

<硝子(天)>
来年の花火を期して友と別れる、来年もまた一緒に花火を見られるだろうか?年々歳々花相似、歳々年々人不同・・・明るい句調ながらこんなことも思わせてくれる句。

百合の花平均台の端に立つ  雪女
<英治(天)>
バランスの落ちつかなさとそれをこなす美しさを感じさせる。

<水(地)>
なぜか今回のオリンピックでは百合の花(女子)の映像が少なかった。コマネチの再現を期待していたのに。

<好鵡(天)>
百合はきわどい崖にもツンと茎を伸ばして咲いています。ツンではなくてリンとですかね。

<丹仙(人)>
これは、題詠を二つ盛り込んだ、難易度Cの句ですね。

百合匂ふ封筒の糊舐めるとき  ぽぽな
<潮音(天)>
着想・感性が実に見事。味覚と嗅覚の融合。「あるある、そういうこと」の共感。下五に意見もあろうが、このままで、佳作である。それにしても同想でより完成度の高い「[100]:百合香る夜の鉛筆を削りをり」の佳作よりも本句に魅力を感じたのは、なぜだろう。「[98]:百合活けし卓に一膳多き箸」「付きすぎ」などと難しくは考えず、親の子を思う情・さりげない心遣いに心を打たれた。

<素人(天)>
どんな手紙を書かれたのでしょうか。そばに活けた百合があるのでしょうか。
それとも開け放った窓から庭に咲く百合が香ってくるのでしょうか。
日常のさりげない一こまから様々に想像のふくらむ句です。

<たま(人)>
百合の香と封筒の糊と、なんの関連もないのですが、その関連のなさ具合が絶妙でいただきました。

<丹仙(地)>
百合の花の側で手紙を書き終えた、書いているときは気づかずに、封筒にいれて封をしたときに、突然、その花の存在感が際だったという趣向。どういう手紙であったのか、余情のある句。


・8点句

まっとうに生きております鳥かぶと  顎オッサン
<英治(人)>
トリカブト殺人事件以来の、この名の持つ強烈なイメージ。

<潮音(人)>
ははははは、やられた。

<素蘭(人)>
配合の妙で逆に疑念が…

<梨花(天)>


<しゅう(地)>
山では、鳥兜の群れているところがところどころありますが、そこに立っていると何やら不気味な感じがするものです。「まっとうにいきております」ちょっと滑稽に作者は詠んでおられますが、その時の感じがよく出ていると思います。正に!と膝を打ちました。


・7点句

花火見るうしろ大きな富士の闇  芳生
<英治(地)>
「富士の闇」が気に入った。富士まではとても届かぬ花火の明り。

<明子(地)>
富士の闇の大きさに惹かれました

<たま(天)>
富士の闇でいただきました。花火のあかりをうけて闇の中にぼんやりと浮かぶ刹那の富士がみえるようです。堂々としていてよい句だと思います。

野の百合を見しのち開くマタイ伝  硝子
<やんま(人)>
そんな心の片隅を確かめる。

<庚申堂(地)>
日曜日ですか、優雅な生活スタイルですね。

<素人(人)>
何か心に期すものがあったのでしょうか。
聖書にくらい私には謎解きはできませんが、この気持ちに何か共感できるような気がします。

<径(天)>
静謐な心境・格調高い姿に惹かれました。


・6点句

手におへぬものばかり好き揚花火  佳音
<顎オッサン(地)>
これはまた勝ち気ですね。

<月雫(地)>
多情な方なのでしょうね

<径(地)>
どんなものが好きなのかは分からないけれど、
この気持には実に共感を覚えます。


・5点句

パルテノン直下を汗の走者かな  芳生
<素酔(天)>
風景の大きさ、美しさ。ぬけぬけとしていて清清しい、端倪すべからざる句だと思いました。

<素人(地)>
TV中継を見逃したのですが、さもありなんと様子が目に浮かびます。炎天下の大変なレースであったと聞きました。神殿が美しかったでしょうね。

教会の正午の鐘や百合の花  柊
<青榧(地)>
清楚な光景が広がります。

<丹仙(天)>
百合の花は伝統的に新約聖書と縁がありますね。
今回は画廊桃李に写真と共に掲載いたしますので、この句を冒頭にのせました。

父母の掌の温もりや遠花  庚申堂
<東彦(地)>
回想の句であろう。幸せだった日を花火を見ながら思い出している。

<馬客(天)>
今月の投句中、一番素直で懐かしく
あたたかい句でありました。

百合投げ入れて騒がしき芥箱  佳音
<月雫(人)>
騒がしきの表現が秀逸です

<虹子(地)>
掃き溜めに鶴? もちろん白百合なんでしょうけど、
どうして芥箱に入れられたのでしょう?

<たま(地)>
花弁が茶色に変色し無残な百合。でも、まだ芳香を放ちつづけている。ごみ箱に投げ捨てられても賑やかな百合なのです。作者の視点がおもしろい所にあって捨てがたい一句です。

病む人の生命確かむ花火かな  雛菊
<白馬(天)>
病床に今年もまた花火を感じることが出来た。
花火にも似た儚い命。喜びか哀しみか。

<硝子(地)>
暢気に花火を見ていても、その一つ一つの鮮やかな自己実現、瞬時のその一生懸命さに打たれる。次々に揚がる花火・・・病む人には殊更ではないだろうか。


・4点句

すぐ部屋に篭りし姉や百合の花  頼髪
<素酔(人)>
物思う頃の季節と香り。「姉」の自分でも持て余すような鬱陶しい生命力、百合の憂鬱な甘い香り、その二つが奇妙に呼応する風景。羨ましくなるような、生命力の浪費がうまく捉えられていると思いました、

<虹子(天)>
<叱られて姉は二階へ柚子の花  鷹羽狩行>を思い出しました。
きれいなお姉さまなんでしょうね。

大花火宇宙は膨張しつづける  梨花
<双六(天)>
夜空に咲く花火から描く、壮大な宇宙運行の幻想。

<馬客(人)>
ちょっとぶっきらぼうな感じですが、実感は
たしかに伝わって来ました。
この宇宙はやがて消滅するのでしょうか?。

潮騒の島黙しをり遠花火  潮音
<東彦(天)>
誰もいない、潮騒の音だけの世界に花火が見えるが、花火の音もない。遠花火が効いている。

<水(人)>
島の対岸(本州?)の花火でしょうか、特別席ですね。

たむけたる百合一本の白さかな  馬客
<やんま(天)>
百合白く、彼の人は今汚れなき国に。

<しゅう(人)>
供花としての百合だろうか。花を差し入れて、下がったところからみると、百合の白さがくっきりと立っているのに、改めて見入ったのであろう。さりげなく詠まれていて、しっかり作者のたむける思いが伝わる、素朴な詠みにいっそう感銘深かった。


・3点句

白百合や渓流竿の見え隠れ  白馬
<佳音(人)>
短めの毛鉤用の竿がひょいひょいと百合の咲く岩のあたりを登っていく。
つれますか?・・・はい、静かにします。

<雛菊(地)>
こんな景色の中に私を置いてみたいと思いました。いえ私が白百合などど言うつもりはなく 涼やかな句ですね

花火筒抱くをのこの力顔  白馬
<雛菊(天)>
美しい花火の下で縁の下の力持ち的役割の男達を見ている作者の視点にハナマルです をのこの力顔の表現できまり!

寝不足の顔つき合はせ休暇果つ  頼髪
<眞知(地)>


<明子(人)>
まだ眠いです

金と銀たかが濁点夏さわぐ  水
<ぎふう(天)>
なるほど、たしかにそりゃそうだと納得。楽しい句です。

おおとりの花火であったか闇の増す  旻士
<眞知(天)>


百千の語の上りゆく天の川  硝子
<青榧(天)>
短冊に書かれた言葉が、短冊を離れて上ってゆく。いくつかの願いは叶うでしょう。

呆けたまふ母の手ゆれて花火ゆれ  ぎふう
<庚申堂(天)>
母は強し、素晴らしい句です。

湖ひとつとよもして降る大花火  双六
<木菟(天)>
雄大な風景が花火に似合っています。

餓死といふ死に方のあり遠花火  欅
<佳音(天)>
「自分自身の死は自分で決めて餓死をする」と言ったひとがいました。
しかし自分自身どうしようもなく、そうして死んでいく命もこの地球上にあるのですね、荒野でも密林でもなく街の中にさえ。

オリーブの冠涼し表彰台  柊
<雪女(人)>
オリンピック句は全体に不調なれど、この際、一句はと思ってこの句。「オリーブ冠」と「表彰台」の安易な組合わせですがむしろ妙な作為がなくて流れが自然で、「涼し」がいいかな、と。

<芳生(地)>
「冠涼し」が効いている。

手花火やきゅきゅとサンダル笑ひをり  海月
<水(天)>
サンダルはきゅきゅ、子供たちはどんな笑い? 大人は?

アテネまで蚊取線香たづさへて  たま
<しゅう(天)>
ほんとうにアテネへ蚊取り線香をもって行った人がいるのか?、また、アテネには蚊が多いのか?それは私には分からないのですが、「たづさへて」と文語調にしているところからも、相当の遊び心の句かも、と思いました。この蚊取り線香を持ってゆくと云うばかばかしさと、地球的祭典、国家間の競演、オリンピックと妙に響いて、面白いと思いました。


・2点句

君が代に貰ひ涙の夜長かな  月雫
<鞠(地)>
 教育現場での国歌問題については、戦中派としても「君が代」に対して、アレルギーがあるけれども……。

揚花火ドカンと鳴って足蹴られ  雛菊
<潮音(地)>
ばかばかしくていいなあ。大好き。(褒めています。念のため。)「[96]:病む人の生命確かむ花火かな」病人への博愛のこころを持つ作者が静かに突き放した表現の本句には勉強させていただいた。

したたむる手紙のかしこ夜の百合  虹子
<好鵡(地)>
書き終わって、ふと香ってきた百合の花に気がつきました。手紙を書くという緊張が和らぐのでした。

山百合や落人の里渡る風  潮音
<東彦(人)>
ちょっと付き過ぎかな。

<径(人)>
時が止まったようなロマンチックな雰囲気がすてきです。

天翔けるニケの羽の音秋の夜  佳音
<素蘭(地)>
「天翔けるニケ」に脱帽
「羽の音」は「羽音や」(はおとや)にしたほうが
句も音韻も整うように思います

末の子が帰農し作る百合紅し  鞠
<雪女(地)>
がんばって〜

猫弄ふ鼠花火や朝の庭  欅
<鞠(人)>
 昨夜の庭先での手花火の名残。猫と鼠の取合せが面白い。

<梨花(人)>


鳩よオリーブを届けよあの灼けし地に  明子
<白馬(人)>
鳩、オリーブ、灼けし地 この取り合わせが良い。
「灼けし地」がギリシャの歴史を彷彿とさせる。
破調が却って生きていると思います。

<庚申堂(人)>
オリンピックにばかり浮かれていられません。

笹百合や恋知り初めし頃のこと  虹子
<木菟(地)>
女の子のことを思いながらの句でしょうね。

人去って空虚のなかに百合の花  葉子
<白馬(地)>
恋人との短い逢瀬。百合のような美しさを残して去ってゆくひと。
この虚しさはどこからくるのだろう。


・1点句

花火散る波静かなる日本海  柊
<芳生(人)>


無功徳の清しき寺や百合の花  丹仙
<青榧(人)>
[26]と同じ感想ですが、清楚な光景が広がります。

大花火浮気な恋はすぐ終わる  やんま
<顎オッサン(人)>
妻の心意気でしょうか。
今時は男性もありえますね。

鬼百合に呼び止められし巖の蔭  芳生
<好鵡(人)>
危うく通り過ぎてしまいそうでした。鬼百合の強い香りに思わず振り返ってしまいました。危険なところに美しい花は咲くものですね。強い香りを伴って…。

高らかにギリシャの汗に乾杯す  ぽぽな
<双六(人)>
アテネオリンピックへのおおらかな挨拶句として頂きました。

こんこんと鉄砲百合の首垂れ  しゅう
<硝子(人)>
「こんこん」のひらがな表記に惑わされましたが。「昏々」でありますように。

ルールなき夏の球宴イラク燃ゆ  水
<木菟(人)>
参加者はどんな想いで毎日を過ごしているのでしょうか。

百合活けし卓に一膳多き箸  月雫
<眞知(人)>