第112回桃李4月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:花見、春灯、森

春の句 雑詠または題詠

兼題1:   「花見」
兼題2:   「春灯」
兼題3:   「森」(キーワード題)


披講


・13点句

春愁や森という字の隙間にも  康
<雪女(人)>
春愁の多様さ

<葉子(天)>
着想がとても面白い。

<馬客(地)>
「森」…「春愁」の想いは自分だけではないのだ、
と嬉しくなりました。
ただ、この句は遥かに繊細な感受性を持つ作者の
作でありますが。

<潮音(人)>
「皸」や「辭」の字などとは違って、「森」は難しい漢字ではなく、いつも目にしているのにそのような発想はできなかった。でも、いわれてみると妙に納得してしまうのが、この作品の持つ力であろう。
春愁は各人感じ方が違うのでこの句の印象も読者によって異なるであろうが、わたしの実感にはぴたりと響いてしまった。

<月雫(人)>
漢字のあきに感じる愁いという着眼は見事です。この場合「森」以上の字がありそうです。

<白馬(地)>
この感覚とても詩的で良いですね。

<双六(天)>
春愁、このあいまいなものが、森という文字の隙間にひそむとは、なんとなくそんな気になって来ましたよ。

春昼や図書館といふ森にゐる  眞知
<ぽぽな(人)>
外は春光溢れる昼、本の保存の為それを遮る建物、図書館の中は暗くまるで鬱蒼とした森のよう。29「森という字の隙間」:漢字の形に注目した面白さ。

<青榧(人)>
たしかに本の原料は森林。

<素蘭(天)>
雑多な書物に埋め尽くされた図書館や大規模書店の渉猟は
薄暗い森をさまよう心許なさに似てちょっと不気味

<馬客(天)>
今回の不言題「森」は大変難しいお題であった
のでは、と思います。
「図書館といふ森」には脱帽、「春昼」も
うごかない。

<毬栗(地)>
こういう図書館が理想です。

<明子(天)>
あっという間に時間が過ぎてしまう不思議な森ですね。


・11点句

鳥たちを寝かせおぼろや神の森  明子
<木菟(天)>
素晴らしいの一語です。

<柊(天)>


<眞知(天)>


<葉子(地)>
あたたかな気分にさせる句。


・10点句

今日からは待つ人のあり春灯下  眞知
<鞠(天)>
 私は待つ人か、待たれる人か。「今日からは」が、新生活を想像させて楽しい。

<顎オッサン(人)>
ほんわかと温かい句です。

<童奈(人)>
新婚の温かみが季語「春燈」下にぴたり。

<愛子(人)>


<願船(人)>
自分の気持ちを率直に宣言する素直さをいただきました。「今日からは」がいいですね。

<白馬(天)>
春のほのぼのとした気分がとても嬉しいですね。

沢庵を掌に盛られ居り花筵  馬客
<童奈(地)>
花筵に同座する人々やら花見の様子が伺える。

<柊(地)>


<ぽぽな(天)>
花見の一こまを旨く切り取り、全体の情景を彷彿とさせる句です。きのおけない仲間と沢山のごちそうを楽しみながらの花見でしょうか。

<径(天)>



・8点句

この森の心の臓かも山櫻  康
<童奈(天)>
山桜を森の心臓と捉えた俳諧味。

<眞知(地)>


<佳音(天)>


繰返す音階練習春灯  明子
<東彦(天)>
冬から春に移り、明るい感じが音階練習に現れている。

<やんま(天)>
春には新しい自分が始まる。

<雛菊(地)>
中学校の吹奏楽部の練習風景かしら。四月新入生を迎えてまずは音階
練習から。暗くなってもがんばっているのですね。

お花見へ古稀喜寿傘寿打ち連れて  鞠
<文枝(天)>
私は週に2、3回、老人保健施設へ、友人の母上をお訪ねます。
広いホールには、切り紙の桜の額絵が僅かに、季節を感じさせるだけ。お花見にご一緒したいと何度思ったことでしょう。
掲句の作者の優しさと、古希喜寿傘寿の方々の嬉しそうなお顔が目に見えるようです。俳諧味のある明るい句ですね。

<雛菊(人)>
お年寄りの方たちの表現を古稀喜寿傘寿としたのがいいと思います。
おめでたいお花見ですね(^o^)喜ばれたことでしょう。引率ご苦労さまです。

<径(地)>


<双六(地)>
お目出度いことです。余分な一言を言わせていただけば「喜寿古稀傘寿」の方が口調が滑らかな気がします。


・6点句

春灯や万年筆の青き文字  願船
<英治(地)>
もう使わなくなった万年筆への思いを促す。

<文枝(地)>
ぴったっと、決まった句のように思います。
ITの時代、万年質でしたためるのは、手紙、あるいは俳句でしょうか。
黒き文字でなく、青き文字が春灯とよく合っています。

<素人(地)>
もう昔のことですが、進学の祝いに万年筆を貰って、嬉しくて、たわいのないことを試し書きしていたころのことが思い出されました。

雑踏を抜けて花見の人となる  東彦
<顎オッサン(天)>
花見こそ混んでいるかも。
山桜のお花見でしょうか。

<毬栗(天)>
花見の人混みを抜けるとほっとしますね〜

文読めば故人の近し春灯  芳生
<眞知(人)>


<青榧(天)>
物思いにふける季節ですね。

<愛子(地)>


真白なる真珠を外す花疲  毬栗
<英治(天)>
「花疲れ」の雰囲気が効果的に表現されている。

<青榧(地)>
容貌、姿が偲ばれます。

<素人(人)>
この倦怠感がなんとも言えず良くわかるのです。


・4点句

校長の手に竹箒花は葉に  文枝
<雪女(地)>
校長せんせ〜〜い

<康(地)>
幸せな小学生たちの登校風景が目にうかびます。

小綬鶏の谺絶えたる森の昼  双六
<芳生(地)>
小綬鶏の甲高い声が消えたあとの森の静けさ。昼が効いている。

<願船(地)>
誘い込むような小綬鶏の甲高い声が絶えた後の森の静寂を感じました。

囀りや森のうさぎの耳が立つ  やんま
<葉子(人)>
春がきた、人間もなにか面白いことはないか、と耳をたてるだろう。

<願船(天)>
想像の世界が広がるような句だと思います。「うさぎの耳が立つ」の措辞によって静寂に誘いこまれるような感じを抱きます。

お花見やつむじ曲りが一人でる  やんま
<潮音(天)>
はい、それはわたしです。

<白馬(人)>
たまにこういう事ってありそう。ユーモラスです。

花見客影絵のごとくうづくまる  木菟
<やんま(地)>
夜桜見物は影絵の世界。お隣さんも幻のごとし。

<月雫(地)>
「影絵のごとくうづくまる」が 酩酊加減をうまく表してるように思います

春の森根つこじんじん発熱す  雛菊
<潮音(地)>
あえて「根つこ」「じんじん」という通俗的な言葉を重ねたあたりは達人の技。句自体も、非常におもしろく味わい深い一句。

「[14]今日からは待つ人のあり春灯下」は読むだけでこころがあたたかくなった。「[56]転職の七曜果ての花見かな」は、わたしも転勤したばかりだったので辛いくらい共感した。

<明子(地)>
春の森の中は、生れたばかりのいろいろな命がひしめいています。
じんじんと言う表現が面白いと思いました。

独り身のパックの寿司や春ともし  英治
<明子(人)>
春灯の温かさが救いでしょうか。

<素人(天)>
便利さゆえの味気なさが良く伝わってきます。

森深く爺のこさへし半仙戯  ぽぽな
<鞠(人)>
 「半仙戯」という言葉が魅力的。

<雛菊(天)>
こさへしが少々乱暴な気がしましたが。爺のこさへし半仙戯。
ぶらんこ、ふらここではなくて。
森の木のぬくもりの野趣あふれるものですね。村の子供は大喜び。


・3点句

春燈や合格の子は目を閉ぢて  潮音
<康(天)>
自分のために頑張ったのだ、いや自分のためだけではない・・・いろいろな感慨が胸を過ぎってゆく。

春灯や牧舎に子牛の生るる声  素人
<庚申堂(天)>


悔い残る花見のあとの仲違い  素人
<月雫(天)>
花びらは散り、後悔が残った。櫻であることが、後悔をより深いものに感じさせてくれます。

花見人無名戦士もその中に  ぽぽな
<芳生(天)>
無数の無名戦士に守られて今日の花見ができる仕合せ。

千本の一朶を愛づる花見かな  佳音
<愛子(天)>


春灯しゴリラのような影がある  やんま
<ぽぽな(地)>
人間の脳はある形を見ると既知の情報と結びつけようとしてしまいます。いったいその実態はなんだったのでしょうか!?春灯では他にも気になった句がありました。
17『音階練習」:ハノン教本でしょうか。たどたどしく、でも一心に鍵盤を辿る音が聴こえてきます。14「待つ人のあり」:伴侶を得た嬉しさが滲みます。下5を「春灯し」とすると、醸し出す情景が更に膨らむと思いました。33「指紋の渦」:脳裏には何が巡っているのでしょう。想像が膨らみます。

<庚申堂(人)>


春灯に指紋の渦を見てゐたり  雛菊
<顎オッサン(地)>
春愁ですね。

<康(人)>
春灯下、指紋の渦に目がいく作者。この愁いは言葉にならない。

月番がまはす花見の回覧板  明子
<鞠(地)>
 町内のご近所付き合いの良さが偲ばれる。

<馬客(人)>
この句のような「ご近所系一体感」は無くなりました。
隣組はあるのですが形骸化した存在です。
この句のようであれば羨ましい限りです。

蘖や森に余白の七つ八つ  佳音
<雪女(天)>
この空間感覚。


・2点句

踏み入りし森にぽっかり青葉闇  白馬
<東彦(地)>
青葉闇に森の深さが窺える

病む友の片方に牧師春灯し  文枝
<佳音(地)>


それぞれの花見も語り尽くされき  英治
<木菟(地)>
みんな誇張して大して面白くない話を。

かもめ舞ふ永代橋の花見かな  毬栗
<庚申堂(地)>


名にし負う造幣局の花見かな  柊
<素蘭(地)>
造幣局という本来は厳めしい場所だから
大仰な「名にし負う」の表現が諧謔になって面白い句です


・1点句

しばらくはこの世離るる花見かな  芳生
<素蘭(人)>
憂き世の塵より花の塵
これが一番の贅沢

あのビルまで滑空しよう春ともし  馬客
<双六(人)>
春の宵、灯りはじめたビルの柔らかい灯を目指して滑空するのは、鳥になった作者でしょうか
 

春灯下想ひの丈を綴りをり  童奈
<木菟(人)>
そんな時代もあった。

花衣解いて歌ふよケセラセラ  晴雨
<柊(人)>


春灯の増えゆき谷戸を優しうす  双六
<芳生(人)>
谷戸と春灯との取り合わせがよい。

ふらここを譲らぬ子らの高さかな  顎オッサン
<毬栗(人)>
ブランコとりの様子が浮かびます。

水分に花追人の集ひけり  素蘭
<東彦(人)>
水の豊かな場所に桜の古木が両翼を張っている。その桜を見に桜を追って旅する人が集まる。同好の士である。

武蔵野の雑木の森の大辛夷  東彦
<文枝(人)>
武蔵野、雑木、森、大辛夷で付き過ぎの気がしますが、大辛夷の景が際立って見えいただきました。

蛇足ですが、私にはキーワードの理解が出来ておりません。ご指導くださいませ。

晩春や臥して重たき森見ゆる  月雫
<英治(人)>
病室の窓から深い森の見える病院で友は逝った。

花見騒紛れて抜きしビールかな  願船
<佳音(人)>


夕櫻喫煙場所はあちらです  康
<径(人)>


鉄塔の食ひこむ森の花あけび  径
<やんま(人)>
実際に鉄の柵が食い込んだ樹木を見かけます。
鉄塔が食い込んで見えるのは心象風景か。