第114回桃李6月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:青梅、紫陽花、鵜

夏の句 雑詠または題詠
兼題1: 「青梅」
兼題2: 「紫陽花」
兼題3: 「鵜」

句会の日程は

 6月15日 (水)    投句受付開始
 6月22日 (水)24時 投句締切、翌日選句開始
 6月29日 (水)24時 選句締切
 7月 1日 (金)    披講

投句: わたなべはるを、青榧、佳音、白馬、葉子、梵論、鞠、康、素蘭、芳生、明子、悦子、毬栗、馬客、文枝、ぽぽな、素人、雛菊、潮音、丹仙、晴雨、愛子、英治、月雫、伊三、木菟、治男、雪女、柊、素馨、童奈、双六
選句: 英治、青榧、童奈、わたなべはるを、潮音、葉子、木菟、佳音、悦子、梵論、雪女、芳生、ぽぽな、鞠、文枝、月雫、雛菊、毬栗、馬客、治男、素人、素馨、愛子、明子、素蘭、丹仙

披講

・30点句

青梅や吾子ふぐりもて生れたり  童奈
<青榧(地)>


<葉子(天)>
青梅が実るころ、もうひとつのみのり男の子がふぐりもてうまれた、という表現がいい。

<佳音(天)>
吾が子への愛しさの満ち溢れた景だと思います。

<梵論(天)>


<ぽぽな(天)>
ちょっとくすぐったいですが、生命の喜びを感じさせる見立てです。

<文枝(天)>
ふぐりと言えば、犬ふぐリを連想しますが、青梅の鮮やかさと、吾が子の無事な誕生を喜んでいる作者が見え、俳諧味のある気持ちのいい句と思います。

<月雫(天)>
ふぐりをバレ句ではなく きちんと詠みきった作者に敬意です

<毬栗(天)>
爽やかでありおめでたくあり。新鮮な気持ちで読ませて頂きました。

<素人(人)>
おめでとうございます。

<素蘭(天)>
青梅とオムツをかえるたび対面した我が子の睾丸
父と息子の微妙なライバル意識か、母と息子の…
文学・心理学の永遠のテーマがほの見えて面白い

<丹仙(天)>
青梅を見るたびに思い出しそうな句ですね。お見事。


・10点句

鵜ら逸る篝の火の粉浴びながら  鞠
<童奈(人)>


<木菟(天)>
情景がぴったりですね。

<芳生(天)>
情景描写がリアルである。

<治男(天)>
 鵜と鵜匠の緊迫し、力強さが表出ている。見物人にも伝わってくる句である。
写実され素直に表現されているのに、惹かれる。


・9点句

実梅もぐ天の青さを手繰りては  芳生
<佳音(地)>
上を向いて、天へ天へ。

<馬客(天)>
梅の実そのものが「天与の青」であり、枝を
手繰って実をもぎつつ仰げば、梅雨の晴れ間の空の青、
すがすがしい句です。

<素馨(地)>
見梅をもぐのは、晴れた暑い日。
語尾が言いさした形なのが、不安定なようでいて、かえって、空の青さとうまくマッチしているように思います。

<愛子(地)>
実感でしょうね


・7点句

鵜飼見る美濃の大きな闇を負ひ  芳生
<文枝(人)>
今月、私は鵜の句は駄目でした。
しかし、鵜飼は観たことがあり、美濃国の景もうっすら覚えています。
そんな、思い出のアルバムを脳裏に浮かべ、しばし楽しみました。

<雛菊(天)>


<明子(人)>
光と闇の対比。ついつい闇のほうに心惹かれます。

<丹仙(地)>
景が大きいところに惹かれます。

黙黙と青梅の蔕取る二人  柊
<鞠(天)>
 青梅の蔕取りは、簡単なようでなかなか根気の要る仕事である。この二人を夫婦とすれば、そろそろ銀婚か或いは金婚?青春のカップルとは思えないけれど……。

<月雫(人)>
夫婦でしょうか 黙々と蔕をとる二人に 年季を感じます 

<雛菊(地)>


<素馨(人)>
青梅の出荷を控えた農家の夫婦でしょうか。
黙々と言う言葉で、そんなに若い夫婦ではない年月と、信頼感が伺われます。


・5点句

梅の實のひとつ地に落ちピアニシモ  丹仙
<梵論(地)>


<愛子(天)>
たわわに実った青梅のひとつが落ちた
始めのひとつなら多分ピアニシモだろう

紫陽花にゲートボールの始まらず  雛菊
<治男(地)>
 情景がよく分かる。種類が色々ある紫陽花について、熟年達の話が弾んでいる。
なかなか始まらないゲートボールを心配している人もいる。

<素馨(天)>
何でもない句ですが、あじさいの見事さが、言葉のウラに巧まず現れていて、うまいなあと感心しました。

紫陽花の濃きひとむらを背に待てり  康
<毬栗(地)>
濃い紫陽花の色を背に待つ人はどんな方でしょうか。
想像逞しくさせられた句です。

<馬客(地)>
待たせた人の句でありましょう。
待っていたのは当然女性。
絵になっていますねぇ。

<丹仙(人)>
発句と云うよりは俳諧の良き平句としての味わいがあります。
こういうのは恋の呼び出しに使えそうですね。


・4点句

篝火の陰に疲れ鵜引かれけり  英治
<童奈(天)>


<素蘭(人)>
まさに「おもしろうてやがて悲しき鵜舟かな」の世界

禅寺に警策の音濃紫陽花  童奈
<芳生(地)>
よく見られる風景だが、音と色が禅寺の寂を出している。

<素人(地)>
鎌倉建長寺でこんな経験をしました。


・3点句

紫陽花や駆け込み寺は坂の上  毬栗
<悦子(天)>
鎌倉を散策している様子がとてもよく出ていていい句ですね。

紫陽花や声変わりの子笛を吹く  治男
<潮音(人)>
笛を吹く孤独な少年。何人もの方々が惹かれ、そして作品を残してきた魅力的な意匠です。声変わりした声を聞かれたくなかったので笛をふいているわけではないでしょう。不安定な思春期を表現したものと解しました。少年の境遇や状況をいろいろ想像して楽しませていただきました。

<月雫(地)>
紫陽花の色変わりと変声期の声変わりとを重ねて
良い塩梅のハーモニーになってると感じます

篝火の火勢に荒鵜たらんとす  晴雨
<わたなべはるを(人)>
伝統的な漁法、その「鵜」の心のたかぶり、矜持を捉えた句。一幅の絵をなした句。鵜にして、このような句がなせた。

<素蘭(地)>
荒鵜は作者自身の遺伝子に潜む猛きものの記憶
狩猟に明け暮れた太古の血がたぎるのも篝火のなせる業

青梅のふた粒ころと雨に落つ  悦子
<わたなべはるを(天)>
中七「ふた粒ころと」と捉えた観察眼、写生力が生んだ秀句。

鵜の夢や鵜飼の夢や暮れなずむ  雪女
<素人(天)>
同床異夢だと思いますが。

幼きの青梅ほどなる堅き意思  梵論
<明子(天)>
顔を真っ赤にして口を一文字にむすんだ幼い子の顔が浮かびます。
あの甘酸っぱい梅の香も感じられます。

荒鵜ひしぐ若き鵜匠のするどき目  葉子
<雪女(天)>
鵜飼は見たことがありませんが、見に行きたくなるような。

青梅や電車の床を跳ね通す  康
<潮音(天)>
万緑の中を行く地方の鉄道。乗客は背負籠に農産物をいっぱいにいれた農家の主婦。零れた青梅の動き、それを見ている乗客たちの目。描いておられるのは青梅だけなのに夏の山村の情景が鮮やかに目に浮かんできます。わたしも車内をころがり続ける空き缶の動きについ見とれてしまうのですが、それが青梅だったときの面白さは格別でしょう。

膨らみし薬袋や梅雨晴れ間   毬栗
<悦子(人)>
お気持ちの現れているいい句だと思います

<文枝(地)>
生活習慣病の常備薬でしょうか、今日、明日と言っているうちに、薬がなくなってしまう。朝から気になる空模様。ふと空を見上げると、雲の割れ目から、青い空が覗き出した。梅雨晴れ間、一ヶ月分のお薬を頂いて、やれやれ。
ちなみに、私は先日、経過良好につき、半年分の処方箋がでました。

波裏に白き小島や海鵜舞ふ  明子
<青榧(人)>


<ぽぽな(人)>
景の大きさに弾かれました。色の対比も考えられています。

<愛子(人)>
北斎の波裏のパロディのような絵を想像した
波間に見えるのは海鵜の堆積された糞の小島か・・

天も地も豊かに濡れて実梅もぐ  明子
<英治(天)>
採集の様子がありありと浮かぶ。

艶話たまにはいいか七変化  素馨
<鞠(人)>
 粋が命の話題ゆえ、のべつ聞かされては辟易するけれど、「たまにはいいか」がなんともいい。

<明子(地)>
堅物と定評のあるひとの思いがけない一面。たまにはいいですよね。

小雨降る紫陽花の道海人の道  わたなべはるを
<青榧(天)>
なぜか三島由紀夫の『潮騒』を思い出しました。


・2点句

青梅の青溢れだす背負子かな  毬栗
<童奈(地)>


鵜飼縄暗き水へと沈みゆく  月雫
<鞠(地)>
 鵜舟同士の接触で、先頭の鵜一羽が犠牲になった或夜の鵜飼を思い出した。

 青梅の毒に嵌って行く小道   白馬
<木菟(地)>
一生食べたりしないだろうけれど、誰か試してみてくれないか。

紫陽花の沿ふ石段を上りけり  青榧
<わたなべはるを(地)>
飾り気なく、直截に言い切ったところが良い。

青梅を日に透かし見る高さかな  雪女
<悦子(地)>
素適なくですね

紫陽花のステージ秘めごと打ち明けり  文枝
<潮音(地)>
「ステージ」「秘めごと」などの言葉遣い。自然に出た「若者ことば」。「ステージ」は劇場の「ステージ」だけでなく、コンピューターのゲームでの「ステージをクリアーする」などの表現も連想させられました。作者の若々しさが印象深く、自分には経験できなかった青春の世界を羨ましく感じました。

懸案のひとつ片付き芒種かな  素馨
<葉子(地)>
人事に忙殺されているうちに自然ははや初夏に移っていったことに改めて気づいたことへの感慨か。読むものも思わず周囲を見回してしまう。

父とゐて父は鵜の目をかなしみき  康
<英治(地)>
人生を達観する境地に入った父の姿。

ぞうあざらしの眼のさきの額の花  雪女
<ぽぽな(地)>
ぞうあざらしと額の花の出会いが新鮮。

抗えぬ定めと知るや鵜の潜る  素人
<雪女(地)>
鵜には鵜の定め。


・1点句

紫陽花やブリキの缶を埋め戻す  潮音
<佳音(人)>
湿った土の中から頭を出した缶。なんだろう、いえいえ、今は掘り出す時にあらずとそっと埋め戻す。
雨の日の秘密。

紫陽花やよく太りたる地域猫  明子
<葉子(人)>
美しい紫陽花にデブ猫の取り合わせがユーモラス。地域猫というのは面白い造語である。

紫陽花を見つめ面影追いにけり  白馬
<木菟(人)>
紫陽花にはそんな既視感をさそうものがある。

あぢさゐに偲ぶシーボルトの悲恋  鞠
<雛菊(人)>


青梅や女忙しき笊仕事  素蘭
<英治(人)>
リズムがよく、てきぱきとした仕事ぶりが伺える。

鵜の叫び貧しき人の声に似て  白馬
<治男(人)>
 鵜飼いの鵜の立場に立てば、と頷かれる。

火の粉上げ鵜篝闇を濃くしたり  童奈
<毬栗(人)>
鵜飼の様子がよく読まれていると思います。

潜りきてつつと天恋ふ海鵜かな  ぽぽな
<雪女(人)>
「つつと天恋ふ」がよき。

青梅や控えめにする自己主張  素人
<馬客(人)>
「青梅」の季語がこんな風に使えるのですね、
勉強になりました。

青梅や浸せば美しき泡出づる  月雫
<芳生(人)>
「美しき泡」は実景である。