第115回桃李7月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:蓮、雷、扇

夏の句 雑詠または題詠
兼題1 「蓮」
兼題2 「雷」
兼題3 「扇」

 7月15日 (金)    投句受付開始
 7月22日 (金)24時 投句締切、翌日選句開始
 7月29日 (金)24時 選句締切
 7月31日 (日)    披講

投句: わたなべはるを、素蘭、梵論、ぽぽな、毬栗、伊三、芳生、悦子、青榧、鞠、佳音、葉子、童奈、庚申堂、馬客、愛子、雪女、慎、康、潮音、素人、半可、英治、治男、明子、柊、雛菊、月雫、丹仙
選句: わたなべはるを、英治、芳生、童奈、治男、半可、ぽぽな、青榧、梵論、毬栗、鞠、双六、伊三、雛菊、悦子、潮音、月雫、葉子、馬客、愛子、佳音、素蘭、木菟、雪女、康、明子、庚申堂、丹仙

披講

・11点句

遠雷や妻胸中を明かさざる  馬客
<半可(人)>
あり得べき日常の小景に共感。

<双六(天)>
黙っている妻の胸中を遠雷が表しているようです。

<月雫(天)>
遠雷が秘めたる静かな怒りを感じさせてくれます

<愛子(地)>
女の怒りは長い時間をかけてくすぶっているものご用心ご用心

<素蘭(地)>
長年連れ添った夫婦とはいえ夫と妻
微妙にすれ違う心理が火花を散らす密室の無言劇…


・9点句

遠雷の中仙道を下りけり  青榧
<わたなべはるを(天)>
句柄の大きく、きっぱりと言い切った思い切りの良い句。
俳句は決断の文芸と飯田龍太が言っているが、まさに
こういう句を言うのだろう。

<芳生(地)>
広重の「五十三次」をふと思い浮かべる。

<佳音(人)>
景が美しいです。

<丹仙(天)>
無駄のないシンプルな言葉に味わいがある。


・8点句

花蓮消光とのみ師のたより  康
<ぽぽな(地)>
必要以上のことは言わず、思慮深く、美しい恩師の姿が見えます。

<馬客(天)>
句も簡潔内容も簡潔、すがすがしい。

<素蘭(天)>
蓮の花を眺めながら手紙の文言を反芻されているのでしょうか
消光という言葉も清々しい

黒き山雷飲みて太りけり  梵論
<青榧(人)>


<潮音(天)>
わたしもこのような大きな句を詠んでみたい。

<愛子(人)>
切り裂かれずに飲み込んだとはお見事

<康(天)>
不気味さである、しかし自然のエネルギーを感じさせる大きな景の句でした。

たまさかに海境白み夜の雷  明子
<治男(天)>
 瞬間を捉えての写生が旨くできている。「海境」は「海坂」とも言うが、
そこに稲光が走っている様子。「たまさかに」も俳句らしい表現である。

<梵論(地)>


<雪女(天)>
雷に白む海境の光景を見てみたい。


・7点句

団扇風ゆるりゆるりと産毛かな  毬栗
<梵論(天)>


<庚申堂(地)>


<丹仙(地)>
酷暑の中、汗をかいて眠っている赤ん坊への愛情が良く表現されている。

告白を聞く間閉じてる扇かな  愛子
<治男(地)>
 酷暑の折、更に暑くなる、告白を聴くに一瞬、扇がとまる。
緊迫した様子が良く表現されている。

<鞠(地)>
 暑さを忘れるほどの真剣な場面でしょうか?

<葉子(天)>


ひとり立ちひとりのかがむ蓮見かな  佳音
<童奈(人)>


<雪女(人)>
たしかに蓮見はかがんでもみたくなる。

<康(地)>
うっとりと、蓮の花から目をはなさずに、立ったり、かがんだりする女人の姿が目に浮かびます。

<庚申堂(天)>



・6点句

雷やママを守るとしがみつく  童奈
<鞠(天)>
 なんとまあ健気なナイト!! 「しがみつく」姿が可愛い。

<雛菊(人)>
かわいい坊やに守られてママしあわせ

<馬客(地)>
川柳ぽくなるのをぎりぎりで抑えて。
これは男児ですね、オカアサンは
たまらないね、可愛くて。


・5点句

雷神の一打に明けし佐久平  芳生
<英治(地)>
勢いのある描写。

<ぽぽな(人)>
景の大きな句。浅間山麓も見えるよう。

<双六(地)>
この句のいさぎよい音感に惹かれました。一打の「だ」と佐久平の「だ」が響きあって、雷鳴のようにも感じられます。

日雷古代遺跡の巨石群  柊
<佳音(天)>
遠い時から目覚めてきそうです。

<明子(地)>
時間を超えた大きな空間に乾いた雷の音が響く。
不思議な世界が目の前にひろがりました。

場違ひの伽羅の香送る古扇  明子
<半可(地)>
風を送るのは自分か他人か。いずれの場合もそれぞれの情景の軽い心の動きが面白く。

<鞠(人)>
 抽斗の奥に長年仕舞い込んでいた白檀の扇子を取り出し、久しぶりに扇いで
みたことでした。

<木菟(地)>
思いがけず昔のことが思い出されたりして。

次の手を思案の扇子頬に当て  柊
<わたなべはるを(人)>
将棋か囲碁の対戦場面。これは、プロの対戦でも、素人の対戦でも
良いと思いますが、作者自身が対戦し、思案の扇子を頬に当てている
ととったほうが臨場感が増す。

<童奈(地)>


<葉子(地)>



・4点句

加賀の宿古き団扇に耳澄ます  丹仙
<英治(人)>
夕蝉の声か、隣室の気配だろうか。

<悦子(天)>
いかにも団扇の音が聞こえてきそうな俳句で、加賀の宿が雰囲気をだしていて良い句だと思います

鬼がまだ探しに来ない日雷  ぽぽな
<童奈(天)>
で、どうするの?

<康(人)>
少年(少女?)の不安気な様子が見事に表されていると思います。人生もまたこのような待ちの部分がありますよね。

湧きあがる扇子の波や逆転打  鞠
<雛菊(天)>
打者、観客席ともに盛り上がる躍動感が伝わってきます
七回裏あたりですかね

<木菟(人)>
高校野球の応援風景に似つかわしい。

海鳴りの音引き寄せて扇風機  潮音
<毬栗(天)>
音を引き寄せているのが扇風機だという面白さ。

<悦子(人)>
海の臭いが扇風機の風にのって感じられます。

蓮の花今日はきっぱり家事しない  雪女
<ぽぽな(天)>
楚々と涼しげに決断した主婦の姿が見えます。「家事しない」の言い切りが面白い。

<毬栗(人)>
主婦の気持ち気持ちよく代弁してくれてます。


・3点句

遮断機のゆつくりあがる雷の中  わたなべはるを
<芳生(天)>
雷と遮断機の取り合せ。音(あるいは光)と物と。

はばたくはこういふことか扇振る  月雫
<青榧(天)>
扇は鳥の羽をまねたものでしょう。

老いたれど緋色の扇なほ好む  素人
<愛子(天)>
死に際まで身ほとりにあるものが・・すなわち本当のお気に入りですね

缶を蹴る子の鬱屈やカンナ燃ゆ  葉子
<伊三(天)>


蓮池や朝稽古の声渡りくる  明子
<治男(人)>
 田園のさわやかな風景が、伝わってくる。蓮池だから反響が強い。
剣道か、何か球技の練習かも知れない。子供達の掛け声が聞こえる。

<雛菊(地)>
さわやかな朝 広々とした蓮池を渡ってくる風と一緒に

決断のときと迫られはたた神  英治
<木菟(天)>
心を決めかねている時をいつも教えて貰えたら!

いつよりか蓮埋め尽くすかっぱ沼  英治
<芳生(人)>
かっぱはどうなったのか、考えさせるのがよい。

<悦子(地)>
かっぱ沼がいいですね。何処にあるのですか?

白壁に水影揺るる蓮の花  ぽぽな
<明子(天)>
光と影がおりなす美しい景色です。

しばらくは別の世にあり蓮の花  柊
<半可(天)>
蓮の持つ異次元的な気配を捉える。

雑踏に居てテロ想ふ日雷  鞠
<わたなべはるを(地)>
昨今の世の中の不安を言いとめた句。
時事に関することは、俳句に不向きと言うが、
人の心は時事問題にも関わって、切り離せないから、
この句のように、なにげなく詠えたらと思う。

<馬客(人)>
「今」だからの句でしょうか、川柳ならずとも
時事への関心は持ちたいものです。

蓮池の水に悲しみありにけり  丹仙
<英治(天)>
心象と響きあっている。


・2点句

扇指す方へ別るる淀屋橋  英治
<雪女(地)>
芝居のひとこまみたいでいい。せりふを付けたくなる。

はたた神過ぐ珈琲に小さき塵  佳音
<潮音(地)>
不安な雰囲気を的確に表現しておられます。珈琲に浮かんだ小さい塵のように、日常生活に紛れ込んだ異物。大きな障害が生じたわけではないのですが、ぼんやりとした不安を感じることは誰しも経験のあるところです。

ひらひらと扇の踊る会議かな  童奈
<月雫(地)>
昔「会議は踊る」という映画がありました。面白い句です。

雷やバカヤロ解散その昔  素蘭
<佳音(地)>
!、といただきました。

遠雷や子の腹掛けを確かむる  素人
<毬栗(地)>
親御さんの愛情をひしひしと感じます。

指鳴らす魔術師蓮の花開く  潮音
<青榧(地)>


白蓮に四方のしずもる夕べかな  半可
<伊三(地)>



・1点句

蓮の葉の雫に映る空の色  悦子
<伊三(人)>


あおぐより煙管代わりの扇子かな  庚申堂
<明子(人)>
名人の芸のあれこれが思い出されます。

まろ寝の子扇の風を厭ひけり  佳音
<潮音(人)>
別格の一句。母の子に寄せる限りない愛情。情愛を注げば注ぐほど、子の気持ちが自分から離れていくように感じる切なさ。

天地の定め合ひたり落雷す  雪女
<葉子(人)>


遠雷や微分積分逆函数  毬栗
<双六(人)>
なぜか雷の句ばかりの選句になりました。
大昔、こんな日々がありました。「雷がもっと近づいて、涼しくなってくれたらなぁ」など考えつつ。

子育ての乳房ふり乱す大暑かな  馬客
<素蘭(人)>
落語に出てくる「長屋の嬶」を思い出しましたが
乳房(ちち)が父だったら
夏休みあちこちの行楽地で見かける光景で
オカーサンもオトーサンもああご苦労様…

思案止みまた肘動く扇子かな  芳生
<庚申堂(人)>


せつかちにつかふ扇子や負け将棋  素蘭
<月雫(人)>
負け将棋ならではの扇子の動きなのでしょう。

天空を仰ぎて大賀古代蓮  毬栗
<丹仙(人)>
大賀蓮(オオガハス)は2000年前の蓮の種子が、その眠りから覚めて花開いたもの。ロマンを感じますね。読みが「たいが」となっていたのは、大いに目出度いという意味なのかも知れません。