第117回桃李9月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:露草、鰯雲、敬老日

秋の句 雑詠または題詠

兼題1 露草
兼題2 鰯雲
兼題3 敬老日

9月15日 (木)    投句受付開始
9月22日 (木)24時 投句締切、翌日選句開始
9月29日 (木)24時 選句締切
9月30日 (金)    披講

投句: 旻士、芳生、明子、素人、白馬、青榧、佳音、毬栗、ぽぽな、双六、伊三、雪女、素蘭、半可、潮音、葉子、英治、文枝、雛菊、悦子、鞠、わたなべはるを、庚申堂、梵論、愛子、治男、馬客、柊、童奈、丹仙、月雫
選句: 雛菊、童奈、英治、葉子、芳生、雪女、わたなべはるを、双六、鞠、梵論、ぽぽな、青榧、毬栗、半可、文枝、治男、馬客、佳音、素蘭、旻士、明子、潮音、愛子、月雫、悦子

披講

・12点句

退院の母のあくびや敬老日  毬栗
<英治(天)>
「敬老日」などどうでもよくなった母。

<葉子(天)>


<梵論(天)>


<文枝(天)>
ご退院おめでとうございます。
順調に回復され、今後の療養にも明るい兆し、句全体ほのぼのとした、優しさと暖かさに包まれ、一番気に入りました。

敬老日色をよりあふドロップス  青榧
<雛菊(天)>


<童奈(天)>


<毬栗(地)>
ドロップにも好きな味があり色がありですね〜

<明子(地)>
ひとつひとつ異なる色と形のドロップが、お年寄りひとりひとりの
姿に見えてきました。やさしい懐かしい味わいです。

<愛子(地)>



・10点句

灯台へつづく電柱鰯雲  治男
<鞠(天)>
 電柱から電柱へと視線を伸ばせば、その先の岬に灯台。そして灯台の空に描く
幾筋もの点線は鰯雲。

<青榧(天)>
こんな水彩画を見たような。

<佳音(天)>
奥行き、そして上への広がりが大きくて好きです。

<明子(人)>
電柱がぽつりぽつりと灯台まで続いていて、その先は光る海。そして
その上には空いっぱいの鰯雲。視点がどんどんひろがって行きます。


・9点句

地球釣りにゆこうかおおい鰯雲  月雫
<童奈(人)>


<雪女(天)>
今回なんだか当たり前の句が多くてものたりなかったので、ついこの句を選んでしまいました。

<佳音(人)>
大きな大きなお話ですね。

<素蘭(地)>
法螺を吹くなら気宇壮大に
スケールのでっかさが愉快です

<潮音(地)>
「地球『釣り』」なのですから「『鰯』雲」でない雲のほうが良かった気もするのですが、それは小さな問題です。「地球釣り」も「おおい雲」もすでに人口に膾炙したことばですが、ふたつの言葉を組み合わせて独自の世界をつくられたのはまさに作者の独創。「地球釣り」という愉快なことばがいきいきと輝いています。全体から感じる屈託のないおおらかな雰囲気も素敵ですね。


・8点句

ステップにモボの片鱗敬老日  素蘭
<芳生(天)>
モボ・モガの時代を生きて、いま尚矍鑠とダンスをする人。「片鱗」がよい。

<雪女(人)>
「モボ」などという言葉がでてこようとは!

<双六(地)>
お目出度いことです。

<鞠(人)>
 そのかみのモダン・ボーイの踏むステップには、今も惚れ惚れとさせられる。

<旻士(人)>



・7点句

窓の日のしづかにうごく敬老日  潮音
<青榧(地)>
“しづかにうごく”がいいですね。

<半可(天)>
窓からの光は柔らかく、ゆったりとした時の流れの
なかで、来し方のあれこれを静思する。

<馬客(地)>
静謐さが胸にしみてくる佳句。


・6点句

曽祖父の名は文八や鰯雲  雪女
<双六(天)>
ひいおじいちゃんのいた故郷は、あの鰯雲のず〜っと向こう。
時間と空間が限りなく広がる伸びやかな句柄に惹かれました。

<ぽぽな(人)>
広々続く鰯雲と、作者に繋がる祖先への思いが重なり、効果的です。個人名を提示しうまく俳諧味をだしました。

<月雫(人)>
文八という曽祖父の固有名詞が鰯雲の句を引き締めてます。

<悦子(人)>
楽しい句で好きです


・5点句

月草や買物籠に眠る犬  佳音
<ぽぽな(天)>
月草の可愛らしさと籠に眠る犬の可愛らしさが通じます。温かい気持ちになる句です。

<文枝(地)>
本当に、露草は月草ですね。
買い物籠で安心して眠っている、小さなワンちゃんとの取り合わせが素敵です。

露草にかがめるひとと四十年  英治
<治男(天)>
 露草に見入って、ががんでいるのは、奥さんでしょう。連れ添って40年になると言う。労り合い、思い合いの雰囲気がにじみ出ている。露草で細やかな愛情を表出し、かがめるが何かほっとした気分にさせる、表現である。

<旻士(地)>


あしうらに下駄清しくて鰯雲  半可
<ぽぽな(地)>
まことに清々しいです。触覚と視覚の冴えがこの句の命です。秋。

<毬栗(天)>
懐かしい下駄の感触が戻ってきました。


・4点句

露草や赤子守する大男  治男
<雛菊(地)>


<雪女(地)>
「露草」と「赤子守する大男」との取り合わせがなんとも微妙でおもしろい。

大手門前に集ひて敬老日  雪女
<わたなべはるを(地)>
簡潔で明快、情景のよく分かる句。

<佳音(地)>
「ほな、いこか」笑顔一杯の敬老日。

露草や伸び切つてゐる犬の舌  毬栗
<わたなべはるを(人)>
取り合わせで成功した句。
中七「伸び切つてゐる」の活写もみごと。

<月雫(天)>
伸びきってだらしない犬の舌と包まれたように清楚な露草の対比が面白いです。

泣けそうな朝いわし雲笑ってた  伊三
<素蘭(天)>
悲しい人ほど空を見る
空をゆうゆうと流れてゆくいわし雲の大群に
束の間慰められた朝のささやかな喜び

<潮音(人)>
「泣きそうな」とされなかったところが流石ですね。「泣けそうな」は、「自然に涙がでてきそうな」の「自発」の意とされたのかもしれませんが、「泣ける」を「可能」ととって「何回か泣こうと試みたが泣けなかった。でも、今朝は泣けそうだ」と恣意的に解釈するのは無理があるでしょうか。そう読んでみても面白いと思ったのですが。
心身の状態の悪いひとたちにとって朝のつらさはひとしおです。そのかなしさに飲み込まれることなく、泣いて発散することを知っている作者の強さ。そして後半の「いわし雲笑ってた」で深刻さがきれいに解消されています。つねに空を見上げることを忘れない作者の生きる姿勢を感じます。


・3点句

母の忌も七度となり鰯雲  双六
<旻士(天)>


富嶽より朝降りてくる螢草  芳生
<潮音(天)>
「朝降りてくる」と大きく読まれたところなど、秀逸。雄大でかつ爽やか。風格ある一句。

老い母にそを看取る子に敬老日  芳生
<葉子(地)>


<素蘭(人)>
さらりとした詠みくちに救われますが
老老介護の毎日のご苦労に敬老日の軽さが辛辣

折り鶴の折り方いくつ敬老日  ぽぽな
<愛子(天)>
人生の来し方もまた様々その方その方の行き方を尊重しあいたいものです

草刈る手束の間止まる蛍草  庚申堂
<鞠(地)>
 露草の藍が目にしみて、しばし利鎌の刃にかけられない。

<半可(人)>
目立たないが、その存在に気がつくと無視できない
ような・・・誰しものふとした記憶。

十字架の真っ直ぐ天へ鰯雲  文枝
<わたなべはるを(天)>
中七「真っ直ぐ天へ」に神々しさがあり、
それはただ単なる神々しさでなく、
季語「鰯雲」の力で深みをもたせた。
俳句の象徴性を遺憾なく発揮した句。

露草の潜めし丈の長さかな  半可
<馬客(天)>
「露草」の在るがままを詠まれた句、と言ってしまえば
それまでの句、ですがナカナカの寓意を潜めた句。

露草のブルーブラック指の先  青榧
<明子(天)>
最近また万年筆を使いだし、ブルーブラックのインクの色の魅力を再発見しました。露草のあのはかない、しかし染物にも使われる確かな青と重なりました。

露草や下駄突っかけて露天風呂  素人
<悦子(天)>
露草の季語が効いていると思います


・2点句

あいまいな齢となりて敬老日  双六
<童奈(地)>


鰯雲朝青龍の蒙古顔  童奈
<半可(地)>
蒙古民族の典型の風貌から、なだらかな起伏の草原
の上に拡がる広い空の連想は楽しい。朝青龍の表情
がもう少しおおらかなら、さらに良いのだが。

ビリ駆ける子の背に拍手いわし雲  雛菊
<芳生(地)>


露草の藍色目立つ夕曇り  悦子
<英治(地)>
暮れなずむ夕景が浮かぶ。

菓子折が二代に届き敬老日  明子
<悦子(地)>
ほんわかとして暖かい句で素敵です

座る席迷ひてゐたり敬老日  柊
<月雫(地)>
この句、高齢化問題を詠んだというわけではないのでしょうが、昨今は老人の数も多く、こういう集いではあたふたされる方も多いようです。哀しい気分の句でした。

露草や友禅洗ふ水の音  明子
<青榧(人)>


<毬栗(人)>
友禅の美しい発色と、露草の青の美しさが重なりました。

西塔に光のかけら鰯雲  潮音
<雛菊(人)>


<英治(人)>
うまい句。

任地へと発つ誕生日鰯雲  鞠
<文枝(人)>
単身赴任でしょうか。赴任の日が、誕生日と重なり、その偶然と、さまざまな思いがこみ上げ感慨無量、鰯雲で見事に表現されています。

<治男(人)>
 偶然であろうが、誕生日に任地へ発つ。行く手に鰯雲が拡がっている。
心は色々なことに気が廻り、不安と歓びが拡がっている。季語がよく働いている。 

露草の露をまとひて灯りをり  童奈
<治男(地)>
 地面にある街灯だろうか。周囲に露を着けた露草があり、まとう様にあって
煌めいているのでしょう。細かく、綺麗な情景である。タ行が「ツ、ツ、ト」頭韻となり、リズムがよい。


・1点句

露草に先客のあり蜆蝶  柊
<葉子(人)>


老い言はず親子二代の敬老日  鞠
<芳生(人)>
高齢化社会になりました。

露草や廃墟のままの純喫茶  雛菊
<愛子(人)>
ほとんど見かけなくなった純喫茶の看板
あるのならこの様な状態かしら

逆らいて世にはびこりて敬老日  馬客
<双六(人)>
可愛らしい老人にはなるまいという作者の気概に乾杯

高層の窓ことごとく鱗雲  ぽぽな
<馬客(人)>
超高層のビル群など目にすることのない
自分の日常ですが、きっとこの句の様な
景色があるんでしょうね。