第118回桃李10月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:茸、菊、十三夜

秋の句 雑詠または題詠

兼題1 茸
兼題2 菊
兼題3 十三夜

句会の日程は

 10月15日 (土)    投句受付開始
 10月22日 (土)24時 投句締切、翌日選句開始
 10月29日 (土)24時 選句締切
 10月31日 (月)    披講

投句: 佳音、悦子、毬栗、青榧、芳生、梵論、潮音、鞠、英治、葉子、雪女、素蘭、月雫、わたなべはるを、ぽぽな、庚申堂、愛子、素人、馬客、治男、半可、童奈、明子、柊、雛菊
選句: 芳生、わたなべはるを、半可、梵論、英治、毬栗、鞠、素人、佳音、青榧、雪女、悦子、童奈、潮音、雛菊、月雫、馬客、治男、ぽぽな、庚申堂、愛子、柊、明子、素蘭

披講

・15点句

軒深き家に住みけり十三夜  わたなべはるを
<半可(天)>
十五夜とは異なり、しっとりとした心の在りようと佇まい。

<英治(地)>
座敷の奥からの月見の風情がよく分かる。

<毬栗(天)>
家に対する愛着を美しい月と共に感じました。

<童奈(人)>


<雛菊(地)>


<月雫(人)>
軒の深さが作り出す深い影が、十三夜ならではの静寂感を満たしています。

<素蘭(天)>
軒深き家に似合いの広縁あるいは濡れ縁
そこに枝豆や栗といった十三夜のお供え
すだく虫の音までも聞こえてくるようです


・12点句

引菓子の木型ならべる菊日和  毬栗
<鞠(地)>
秋は慶弔共に引菓子の需要の多い時季、菊日和に木型の乾く風景は懐かしい。

<童奈(天)>


<馬客(天)>
秋のご慶事に引き出物として打ち菓子は付き物です。
じつに穏やかないい句です。

<ぽぽな(人)>
黙々と仕事をする姿が見えます。

<明子(天)>
打菓子の木型はいろいろデザインの工夫がされていて、見ているだけでも楽しい。秋の乾いた空気のなかで仕事も気持よくはかどりそうだ。気持の良い句ですね。


・9点句

酒好きの嫁と舅と後の月  馬客
<鞠(天)>
舅と私は下戸同士で、月より団子の仲であったが、孫娘は彼女の義父と上戸同士、彼女は夫や姑をさしおいて、舅と二人だけで盛り上がっている。

<素人(人)>
これもまたうまく行く秘訣なのかもしれません。

<佳音(天)>


<明子(地)>
後の月の句としては暖かみを感じます。
今はもういない義父を思い出しました。

老ゆるとも心足りたる十三夜  愛子
<芳生(天)>
老いて心豊かに見る月。なかなかこうは行かないものです。

<治男(天)>
 今年も十三夜の月が見られて、生の喜びが感じられる。
 毎日を大切に、歩んでいる、希望がもてる句である。
 調のリズムも宜しい。

<柊(天)>



・8点句

膝くづす親しさにゐて茸汁   愛子
<芳生(地)>
山里の囲炉裏ばたを連想します。

<わたなべはるを(人)>
そこの様子、心持ちが的確に描かれています。

<毬栗(地)>
茸汁はこういう人と食べたい物ですね。

<佳音(地)>


<潮音(人)>
山賤の住むような小屋で囲炉裏を囲んでの茸汁をつい想像してしまいます。味も格別でしょうね。

[29]「十三夜笑ふ顔ある石の壁」[23]「十三夜動かぬ針のさす時刻」など「十三夜」の兼題では非常に雰囲気の良い句が多かったかと存じます。


・7点句

じいちゃんは茸博士だ子供会  ぽぽな
<わたなべはるを(天)>
 孫の得意な顔、じいちゃんの満足した顔、その情景が浮んできます。

<素人(天)>
微笑ましい。このように、爺ちゃんや婆ちゃんにも活躍の場を与えてあげることが大切なのです。

<雛菊(人)>



・6点句

一山の茸重なる湿りかな  月雫
<梵論(天)>


<馬客(地)>
ほんとに、どんな茸も、触れるとしっとりとした
湿り気を感じます。
その質感をとてもよく出されています。

<明子(人)>
湿り気の中に、土の匂い、山の匂いがしてきました。


・5点句

デコボコの大鍋滾るきのこ汁  雛菊
<雪女(天)>
この季節にだけ使われてきた古い大鍋。茸狩りの後皆で囲む。「滾る」がよい。おいしそう。

<悦子(地)>
そろそろ茸汁のおいしい季節ですね。私の住む町に流れる川原でもこんな光景が見られます。参加して食べたくなりました

看取り果てひと日見詰むる鉢の菊  芳生
<庚申堂(地)>
非常に上手な句だと感心しました。

<愛子(天)>



・4点句

みすゞかる信濃の茸ご飯かな  わたなべはるを
<佳音(人)>


<ぽぽな(天)>
愛する信濃で頂けることをありがたく思う気持ちが伝わってきます。枕詞がうまく生かされています。

墨東を隅隅歩く十三夜  芳生
<月雫(地)>
この句、現代というよりも昭和初期の、人がまだ闇と共存していた頃の懐かしい匂いがします。

<柊(地)>


十三夜動かぬ針のさす時刻  青榧
<悦子(天)>
中越地震から一年テレビのニュ−スでみた動かない時計が心に浮かびました。

<庚申堂(人)>
想像力を喚起させられます。

ベランダの高きと語る菊日和  英治
<雪女(地)>
いいお天気ですねー

<馬客(人)>
いかにも菊日和の日の人々の寸景が
巧みに詠まれています。

<愛子(人)>


いつしかに滝の真上や茸狩  芳生
<半可(人)>
滝の響きときのこの香り。山深い秋。

<英治(天)>
茸狩に夢中になっていた様子が…。


・3点句

摘みとりて菊の香のたつ野菊かな  明子
<潮音(天)>
本句に触発されて、思わず野菊を摘んで香をかいでしまったのはわたしだけでしょうか。
野菊のなかでも分布の広いノコンギクやヨメナよりも香り高いのはリュウノウギク・・・そんな詮索には意味がないのはもちろんです。まさに、本句の魅力に作者の手中に読者が弄ばれてしまっているような。
ひっそりと咲いている野菊。作者は、見ているだけではがまんできず、一輪を摘み取らずにはいられなかった。野菊の花に惹かれた作者の心の動きに共感します。

父さんと秘密の場所の茸採り  素人
<わたなべはるを(地)>
父と子の心の交流、信頼関係がこのようにしてできていくんですね。これも、今の父と子にはなかなか難しいのですね。

<鞠(人)>
父子と茸の幸せな秘密、いつまでも大切に……。

走り根に足を遅らせ茸山  柊
<月雫(天)>
茸の寄る木の大きさが見えるようです。足元確認して茸狩りをお楽しみください。

菊の黄をたんたんたんと落しけり  佳音
<悦子(人)>
たんたんたん 素適な表現ですね

<素蘭(地)>
熱湯に菊の花弁を落とし湯がくところ
「たんたんたん」のリズムがいいですね

引き留める掌の冷たさや後の月  庚申堂
<青榧(地)>


<治男(人)>
 月見でしょうか。引き留める掌が冷たい、手が冷たいのは
 心が温かいはずです。良き友に恵まれ、幸いですね。
 異性かも知れない。細かく表現できている。

平泳ぎのやう野菊の迫り出せり  雛菊
<庚申堂(天)>
「平泳ぎ」の言葉がうまいです。

十三夜笑ふ顔ある石の壁  佳音
<青榧(天)>
わたしも、いろいろなところに顔が見えるようになりました。

菊花展黒いリボンの作者札  素人
<雛菊(天)>



・2点句

菊白し夢語る目の果ての風  潮音
<治男(地)>
 大志があり、夢多き人で、目を輝かして話している様子。
 菊白しで純朴さ、初心の白紙にも通じる。どんな夢でしょう。
 風で少し揺らいでいるようにも取れる。

飛鳥路の竹筒に銭茸買ふ  潮音
<半可(地)>
旅の記憶の中で、心に残る点景。

脳外科の看板高く十三夜  治男
<素人(地)>
脳外科が実に響き合います。

根こそぎの小菊架けらる垣根かな  庚申堂
<愛子(地)>


菊の日の菊を起こしてやりにけり  わたなべはるを
<潮音(地)>
「菊を起こして」の表現は秀逸。朝露の重みか風で倒れていた菊花を実際に起こしてあげたのかもしれませんが、それよりも、重陽の朝、菊の手入れをすることによって、菊を「起こした」と解したく存じます。作者と菊の、まるで年来の友人のような関係にほのぼのといたします。

「[52]引菓子の木型ならべる菊日和」も、上五中七と季語が良く合っていて、幸せなくらいのどかな秋の一日の雰囲気が感じられました。

御園生の三角帽子一夜茸  素蘭
<童奈(地)>


十三夜黒き魚群は礁を去る  半可
<ぽぽな(地)>
渋い。

夕暮れて野菊明かりの谷戸の奥  雪女
<芳生(人)>
きれいな句。

<柊(人)>



・1点句

ポケットの銅貨ちやらちやら十三夜  毬栗
<素蘭(人)>
「ちやらちやら」と「十三夜」が
ほろ酔いから半分醒めた気分のほろ苦さを暗示しているようです

流れゆくものはながれて野菊かな  青榧
<英治(人)>
「野菊の如ききみ」がいつまでも心に…。

風に乗る菊の香かすか根津谷中  童奈
<青榧(人)>


姫の香の凛と漂ふ菊人形  柊
<毬栗(人)>
菊人形の美しさをよく表現されてると思います。

老犬を猫可愛いがり後の月  鞠
<雪女(人)>