第119回桃李11月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:散紅葉、時雨忌、七五三

冬の句 雑詠または題詠

兼題1 散紅葉
兼題2 時雨忌
兼題3 七五三

句会の日程は
11月15日 (火)    投句受付開始
11月22日 (火)24時 投句締切、翌日選句開始
11月29日 (火)24時 選句締切
11月30日 (水)    披講

投句: 英治、芳生、わたなべはるを、毬栗、白馬、佳音、青榧、鞠、松風子、梵論、太聖、ぽぽな、葉子、潮音、康、馬客、悦子、庚申堂、素蘭、童奈、双六、素人、愛子、明子、治男、雪女、柊、雛菊、半可、月雫、文枝、丹仙
選句: 梵論、太聖、松風子、葉子、青榧、わたなべはるを、雛菊、毬栗、雪女、鞠、童奈、芳生、英治、双六、素人、ぽぽな、やんま、月雫、半可、素蘭、文枝、愛子、庚申堂、佳音、潮音、治男、馬客、明子、悦子

披講

・10点句

鳥のこゑ魚のこゑ聴く時雨の忌  月雫
<葉子(地)>
蕉翁のように、感受性の鋭さをとぎすましていると、鳥の声も魚の声も聞こえてくるののだろう。羨むべき境地。

<双六(地)>
「鳥啼き魚の目は泪」を思い出して。

<素人(天)>
奥の細道を踏まえて洒落た句と思います。リフレインも効果的。

<明子(天)>
時雨忌の句、迷いましたが最終的にこの句をいただきました。
いちばん芭蕉さんが身近に感じられました。


・8点句

時雨忌を柱に凭りて暮るるのみ  雪女
<葉子(天)>
時雨忌なので、なんとかよい一句を得たいものと思っているが、なかなか出来ない。その様子がよく出ている。

<ぽぽな(地)>
草庵に隠棲する芭蕉の姿と句の主人公の姿が二重写しになる。

<素蘭(天)>
芭蕉翁の足跡のみならず、門人や蕪村など芭蕉翁を慕った人々にも思いをはせていらっしゃるのでしょう
時雨忌の一日の浄福


・7点句

夜参りの母子ふたりの七五三  英治
<太聖(天)>


<松風子(天)>
しっとりとした静けさのなかに親子の愛情が感じられます

<鞠(人)>
戦後60年、戦死者の遺族ならぬ父親不在の家庭が増える現実。

時雨忌の人まばらなる足湯かな  毬栗
<英治(天)>
落ち着いた臨場感。

<やんま(地)>


<佳音(地)>
しっとりと外を眺めるゆったりとした時間。

散る紅葉流るる紅葉積む紅葉  わたなべはるを
<童奈(地)>


<英治(地)>
リズムの良さ。

<素蘭(地)>
紅葉山、紅葉川、宴の後の華麗なる散

<治男(人)>
 紅葉三態。紅葉を三度繰り返し、リフレインのリズムがある。
その景がそれぞれに拡がり、また、一つの紅葉に帰っている感じがする。

手習ひはいろはにほへと散紅葉  素蘭
<童奈(天)>


<双六(天)>
紅葉のような小さな手を連想したり、「いろは紅葉」の真赤な葉を連想したり、膨らむ想像と美しい音をいただきました。

<佳音(人)>
言葉遊びの楽しさ。


・6点句

風の帯解き放たれて散紅葉   愛子
<太聖(地)>


<雛菊(人)>
風の帯が詩的。赤が舞う美しさ。

<庚申堂(天)>
格好いいです。

金太郎飴のやうな児七五三  月雫
<毬栗(地)>
金太郎飴はちょっとつきすぎの感ありですが、
元気な男の子が見えるようで楽しいですね。

<潮音(地)>
「金太郎のやうな」子ならならよくいますが、金太郎飴のような子ってどんな子だろう、と考えると面白いですね。

<明子(地)>
金太郎飴のような子ってどんな子だろう。
素朴なふっくらとしたほっぺたの子供の顔が浮んできて、
ついついこちらも笑顔になってきます。
元気に育って欲しいと心から思います。

曾祖父の胡座に余して七五三祝  愛子
<雛菊(天)>
なんともおめでたい。

<半可(天)>
長寿と少子の時代の四代揃う寛ぎの祝いごと

七五三母とその母従えて  馬客
<梵論(天)>


<雪女(天)>
まさに。


・5点句

時雨忌の千住に電車待ちにけり  わたなべはるを
<雪女(人)>
時雨忌、千住、電車、このなにげなさの中の適格さ。

<双六(人)>
電車を待つ駅が千住なのがいいですね。

<半可(人)>
ふとよぎる旅ごころ

<庚申堂(人)>
なにげなく。

<悦子(人)>


時雨忌や丘駆け上がる放れ駒  素人
<雛菊(地)>
時雨忌のしっとりした句の多い中で元気をもらう
すがすがしさ。

<佳音(天)>
奔放な動作の中のしなやかさが好きです。

石段に人の声あり散紅葉  明子
<ぽぽな(天)>
平明、簡素な表現により聴覚と視覚に訴え、既視感を起こさせる。

<悦子(地)>
人のにぎわいもあらわれて秋らしいく好きです

妹は異国の生まれ七五三  わたなべはるを
<毬栗(天)>
七五三の句としては異色だと思います。
妹さんを慈しむ気持ちがさりげなく読み取れます。

<文枝(地)>
異国でお生まれになった妹さんへの暖かい眼差しを感じます。

神妙にお辞儀ぺこりと七五三  素人
<わたなべはるを(地)>
緊張した気持ちを表して妙。

<悦子(天)>
愛くるしさが表現されて素適です

指貫は母の形見や紅葉散る  毬栗
<青榧(人)>


<月雫(人)>
綺麗にまとまった句ですね。

<文枝(天)>
感想を書くと、せっかくの素敵な句のイメージが崩れてしまいそうですので・・

街道へいつか足向く時雨の忌  芳生
<松風子(地)>
旅につながるイメージが季語に照応しています

<治男(天)>
 詩情のある句。街道は昔ながらの町へ通づる径でしょう。町、都市へ出るのが目的でなく、懐かしく思いのある径をさまよい歩くのが、楽しいのでしょう。
 季語が生きています。

紅葉散るフリーマーケットの膝に  雛菊
<青榧(天)>
売り物ではない紅葉が一番美しい光景が浮かんできます。

<庚申堂(地)>
フリマと省略しないところがよいですね。

清めればまた紅葉散る父母の墓  馬客
<芳生(天)>
紅葉散るなかをせっせと墓を清める風景が印象的。

<半可(地)>
父母への想いのたゆたい


・4点句

芭蕉忌や受けると決めし文学部  馬客
<鞠(天)>
「マロニエ咲く文科選びし乙女の日よ」と私も詠んだことが……。

<潮音(人)>
作者は若い方なのでしょうか、年長の方が往時を懐かしく感じて詠まれた句でしょうか。
この句を読んで、わたし自身が高校時代、進路を決めたときの気持ちを思い出してしまいました。青雲の志というようなご大層なものではありませんでしたし、大学に合格してからの日々も希望からは大きくかけはなれたものでしたが。
作者が、もし、若い方でしたら。どうぞ、いまの気持ちを何十年後までも大事になさってください。年長の方でしたら。若いときの気持ちをいつまでも忘れておられない素敵な人生を送ってこられたことと拝察いたします。


・3点句

時雨忌や仙山線の一人旅  悦子
<馬客(天)>
仙台を発ち作並を過ぎ面白山のトンネルを
抜ければ山寺の駅。
勿論旅人は下車したはずです。

時雨忌や堆肥の山の湯気あはし  青榧
<月雫(天)>
堆肥の山という組みあわせは、句聖もいわば堆肥に過ぎないのではないかという
シニカルな視点が妙に面白かったです

いっせいに鳩とびたちぬ七五三    松風子
<英治(人)>
気分の良い句で「天」にしたが、「いっせいに鳩の飛び立つ鬼瓦」がネット検索でひっかかる。類句が多いようだが「七五三」がよく効いている。

<月雫(地)>
鳩のざわめきをもって 七五三の境内の賑わいが伝わってくるようです

あぜ道や遠く晴着の七五三  童奈
<やんま(人)>


<治男(地)>
 田園の七五三風景。作者は遠くから眺め、懐かしく思いに耽っているようです。
自分の子供のことか、或いは自分自身の子供時代を思い浮かべているようである。

赤錆た鉄路日ごとに紅葉散る      松風子
<雪女(地)>
廃線をせめて彩る紅葉。

<明子(人)>
二度と使われることの無い線路に音も無く紅葉が降り積もってゆく。
静けさと寂しさがひしひしと伝わってきます。

時雨忌や地下貯水湖の大柱  雛菊
<愛子(天)>


先にゆく兄の振り向く七五三  康
<わたなべはるを(天)>
兄弟愛が感じられる句。
中七の「兄の振り向く」にその感情が込められ、
明快。

三代のスーツ揃ひて七五三  毬栗
<松風子(人)>
「三代の」がやや常套ですが、伝統的な七五三にあっています

<鞠(地)>
三代は祖父・父・男児か、日頃は核家族でも、七五三に集う幸せ。

客人は杖つく翁時雨の忌  素蘭
<やんま(天)>


時雨忌や睫毛冷たき宵の宿         松風子
<潮音(天)>
「時雨忌」で「睫毛冷たき」の付き方と季重ねは、効果をあげていると思う。なによりも、睫毛の先で冷気を感じ取った鋭敏な感覚に惹かれた。

時雨忌や句碑あまたある町に住み  明子
<毬栗(人)>
程よい情感が感じられます。

<芳生(地)>
こういう文学的香気のある町に住んでみたいものです。


・2点句

空深く雲急がざる翁の忌  半可
<わたなべはるを(人)>
芭蕉の生き方の象徴でもある。

<素人(人)>
旅に出たくなります。

大正の家族となれり七五三  丹仙
<愛子(地)>


時雨忌や麻痺の手紡ぐ相聞句  潮音
<馬客(地)>
叙情的な句としては「相聞歌」で
よかったのでは。

時雨忌や神田界隈古書巡り  童奈
<素人(地)>
時雨忌によくマッチしています。

散紅葉真鯉の背に積もりをり  治男
<青榧(地)>



・1点句

夢に得し一句忘じて芭蕉の忌  愛子
<葉子(人)>
よくある現象。夢から覚めると折角思いついた句なのに、もう忘れていて、残念な思いがする。

時雨忌の机上に俳家奇人談  康
<愛子(人)>


時雨忌や忍びの里を辿る旅  鞠
<太聖(人)>


時雨忌を歩き日光杉並木  双六
<文枝(人)>
悠悠自適の日々、芭蕉が歩いた、日光街道杉並木をのんびり歩いておられる作者の姿が浮かびます。私の住まいの近くにも、日光街道杉並木の古道が残っています。

七五三祝今年六十のお爺さん  白馬
<馬客(人)>
村に「渡し」が在った頃は「六十歳」は
正札つきの「おじいさん」だったのですね。
今では孫の晴れ姿をデジカメで撮りまくる
ダンデイなグランパ。

ひとりつ子やでなあの子は七五三  潮音
<素蘭(人)>
一人っ子に付きそう両親と両祖父母(或いはシックス・ポケット?)
最早ありふれた情景なのかも…

戊辰戦争隊士の墓や散紅葉  双六
<芳生(人)>
戊辰戦争が効いている。