第120回桃李12月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:年忘、冬芽、千(キーワード)

冬の句 雑詠または題詠
兼題1 年忘
兼題2 冬芽
兼題3 千(キーワード)
句会の日程は
 12月15日 (木)    投句受付開始
 12月22日 (木)24時 投句締切、翌日選句開始
 12月29日 (木)24時 選句締切
 12月31日 (土)    披講

投句: わたなべはるを、素人、鞠、芳生、青榧、素蘭、雪女、松風子、丹仙、毬栗、双六、悦子、葉子、英治、治男、愛子、芽木、潮音、柊、童奈、伊三、梵論、馬客、明子、半可、佳音、月雫、庚申堂、雛菊、ぽぽな
選句: 芳生、梵論、英治、鞠、松風子、葉子、わたなべはるを、素人、雪女、青榧、毬栗、佳音、童奈、半可、悦子、双六、素蘭、庚申堂、潮音、雛菊、治男、馬客、愛子、伊三、月雫、ぽぽな、丹仙

披講

・18点句

草千里雪の千里となりにけり  月雫
<芳生(地)>
草千里には行ったことがありませんが、よく分かります。

<英治(天)>
阿蘇の雪景色を見たことはないが、いかにもの感じが。

<松風子(地)>
草千里が雪に変じた風景の広がりが見えます

<雪女(天)>
空間と時間の推移が口調のよさで快い。

<佳音(天)>


<童奈(天)>


<双六(地)>
文句なしに美しい。


・12点句

少年が石蹴る背中冬木の芽  明子
<葉子(天)>
ひとりで石を蹴っているこの少年は鬱屈しているらしい。だが彼の内にも小さな冬芽のように、やがて包皮を破って伸びる命がいきづいている。大丈夫だよ、君は。少年をみつめる大人の暖かな目。

<素人(地)>
背中に語らせています。

<半可(天)>
少年は屈折の背にある明日への小さな扉に気付くだろうか

<伊三(人)>


<月雫(天)>
少年の背中はきっと丸かったのでしょう
季語との付具合が絶妙です

幾千の冬芽を抱き森鎮む  双六
<松風子(天)>
春を待つ冬芽の見えぬ息吹が感じられます

<悦子(天)>
冬木の芽の季語が効いている秀句だと思います。

<伊三(地)>
春に備えた生命の集団

<ぽぽな(人)>
詩的です素敵です。

<丹仙(天)>
丈の高い句ですね。それと同時に、蘇生さんの千首達成を記念する「千」をさりげなく織り込んで頂きました。七千首を越えた和歌連作の過去を記念するだけでなく、「冬芽」によって、この試みのもつ将来への可能性もまた、自然な形で実感しました。


・10点句

新しき恋の予感や冬木の芽  童奈
<芳生(天)>
冬芽に恋の予感を見る。象徴的です。

<わたなべはるを(地)>
季語「冬木の芽」には、「新しき恋の予感」させる何かがある。

<双六(人)>
類想句があるとは思いますが、さわやかな若さに乾杯。

<治男(人)>
 若い人でしょうか。老人かも知れない。人は恋をすれば、若返るし
生き甲斐ともなるようだ。

<伊三(天)>
待ち遠しい春


・9点句

冬木の芽どこかに星の生るゝ音  佳音
<わたなべはるを(天)>
実際に「どこかに星の生るゝ音」わけではないが、季語「冬木の芽」と「どこかに星の生るゝ音」との取り合わせで、新しい季節の始まる予感、新しい時代の始まる予感を思わせて、一つの世界を形づくった。

<素人(人)>
繊細な音なのでしょう。

<半可(地)>
冬芽の密やかな膨らみの音が聞こえてくるように

<雛菊(天)>



・7点句

千六本女の意地も刻みけり  雛菊
<英治(人)>
無季句だが年用意に張り切る姿が。

<葉子(地)>
まったく女ばかりに面倒なことを押しつけて。でもこうなったらやってやろうじゃないの。ほら、私みたいにきれいに千六本を刻める女はそうはいないよ。大根を見事に刻みながら、女の自信をものぞかせている。

<半可(人)>
さぞかし歯ごたえの良き

<馬客(天)>
「おばーちゃま、あんまりご無理なさらないで
くださいね(暮れの忙しいのに怪我でもされたら
たまんないわ)」「ふん!」


・6点句

我らより若やぐ師なり年忘  丹仙
<鞠(天)>
 師弟共に長寿のお目出度い忘年会。明治人であった私の亡師も、昭和生れの私達
より、ずっと若々しい句を詠んでおられた。

<素蘭(人)>
好奇心旺盛で若々しく闊達な師
作者ご自身でもあるような…

<治男(地)>
 私もこの立場にありましたから、よく分かります。生徒、或いは卒業生より
若さを吸収している。歓びが出ている。


・5点句

四女には千冬と名付けクリスマス  鞠
<毬栗(天)>
4人の女の子賑やかでしょうね。
楽しいクリスマスが見えてきます。

<潮音(人)>
静かな夜に満ちていく作者の喜びを感じます。
わたしも親から立派な名前をいただいています。重荷に感じるときもありますが、ありがたく思っています。

久しぶりのキーワード題「千」を楽しませていただきました。わたしは、京都千本通りの歳末の風景をうまく詠めたら、と思ったのですが、うまくできませんでした。
千一夜物語を紡ぐ姫君のように、千日籠山行・千日回峰行の修行僧のように、営々と精進され、西鶴四千首為家千首歌にも匹敵する千首歌を達成された蘇生様、おめでとうございます。千成瓢箪は日をあびて輝き、大阪千日前の「かに道楽」の大蟹は道頓堀に飛び込んで祝福の舞を舞っております。

<雛菊(人)>


うるか舐め老爺ふたりの年忘れ  葉子
<毬栗(地)>
老爺ふたりでも何故か楽しげです。

<双六(天)>
しっとり炬燵に向かい合って、来し方でも語り合いますか。酒は辛口。

さてもまあ女ばかりよ年忘  双六
<松風子(人)>
たしかに実感します

<童奈(地)>


<馬客(人)>
「女ばかり」は忘年会だけではないですね、ほんとに
「さてもまあ」と言いたくなるウーマンパワ〜です。

<月雫(人)>
男衆はさっさと酔いつぶれたようですね


・4点句

汁の具は千切り大根たまご飯  双六
<素人(天)>
うまいものです。

<雪女(人)>
私の好みから言えば、たまご飯にしないで炊きたてそのままのほかほか飯の方がおいしそうだけど・・・

吾子いつか声尖りきて冬木の芽  愛子
<雪女(地)>
可愛かった子供もいつか反抗期、尖った固い冬芽のようだ。でもそのうち暖かくなれば葉が繁り花も咲き、成長する。もう少しの間じっと待つのよ。

<ぽぽな(地)>
親心の機微。

働く手無為の手揃ひ年忘  愛子
<梵論(天)>


<葉子(人)>
年をとってから会合に出ると、人生の縮図だなあと感じる。様々な境遇にあっても、兎に角昔なじみと年忘れするのは楽しくもあり、一抹の淋しさもある。それを手で表現しているところがよい。


・3点句

新築の工事現場や冬芽満つ  毬栗
<治男(天)>
新築に冬芽がよく効いている。新しい家に大きな希望がふくらんできます。

夜神楽や千年杉の萌黄色  悦子
<庚申堂(人)>
言葉にない「火」をイメージします。

<丹仙(地)>
「千年杉の萌黄色」によって、太古より連綿とし続く伝承の世界が、永遠に新しきものとして回帰する夜神楽の世界が自然な形で表現されています。

十二月剥がれてゆれる千社札    松風子
<鞠(地)>
 当節「千社札お断り」を掲げる社寺が多いけれど、あれは貼りっぱなしにせずに
札を納めた当事者が、後々まで責任を負うべきものであろうか。

<青榧(人)>


凛々と空を指したる冬芽かな  芽木
<素蘭(天)>
鱗片に包まれ凛とそそり立つ冬芽
美しいシルエットは逆光の賜物

今さらにひとの恋しき年忘れ  半可
<わたなべはるを(人)>
寂しいような、懐かしいような、恥ずかしいような、でも「今さらにひとの恋しき」こころもち。複雑なきもちを俳句に納めた手柄。

<悦子(地)>
年忘れの季語に気持ちの伝わる良い句だと思います

極月や千両箱も出る芝居  佳音
<毬栗(人)>
千両箱の使い方がお上手だと思います。

<馬客(地)>
極月と千両箱、巧い!

奥能登の怒涛幾千浪の華  童奈
<芳生(人)>
豪快な風景。

<雛菊(地)>


千代紙に包み年玉ならべけり  英治
<素蘭(地)>
懐かしい昭和の残像
日常がつつましかったからこそ格別の晴の日であった正月

<愛子(人)>


年忘ワインにゆると日々溶かす  雛菊
<庚申堂(天)>
暖かいへやで、ロッキングチェアにゆられながら窓越しに遠くの山を眺めつつ・・・など。余韻があります。

陽にゆるみ風にちぢみつ冬木の芽  英治
<愛子(天)>


冬木の芽そろばん塾の生徒減る  素人
<ぽぽな(天)>
淡々とした視線がよいです。

ものいはぬ人の手仕事冬木の芽  素蘭
<潮音(天)>
冬座敷の隅で壁に向かって、細かい手仕事をしている父を想い出してしまいました。

夕映や冬芽のかたちあらはなる   松風子
<青榧(天)>
たしかに、そうですね。


・2点句

化粧とは隠すことなり年忘  童奈
<月雫(地)>
化粧の何たるかを知りつつも 今日もひたすら隠しているんでしょうね

除夜の鐘千年杉のシルエット  素人
<愛子(地)>


冬木の芽雲放ちゐる駒ヶ嶽  芳生
<潮音(地)>
関東甲信越の山々を読んだ佳句は何人のも方が過去句会に発表されたが、それでも、この句。いいなあ。

どこかしら顔にみえたる冬芽かな  月雫
<佳音(地)>


ショールしかと千里百夜の恋の闇  馬客
<英治(地)>
不倫の道を突っ走る勢いが。

冬木の芽角で友待つ中学生  雛菊
<庚申堂(地)>
これから成長する中学生との対比がいいですね。同じような意味で、「30」番もすてがたかったです。

千年も万年も星冬木立  毬栗
<青榧(地)>
鶴亀ほどの寿命の星もあるかもと。


・1点句

抽斗の歪みを正す年忘  芽木
<丹仙(人)>
一年の労苦を忘れると共に、新しい歳を迎える用意をするというのが年忘れの元々の意味。忘年会の賑やかな席ではなく、そういう歳末の心を、「抽斗の歪みを正す」と、ものに託して詠んだところが良いですね。

年忘れ法螺のからまる男どち  雪女
<佳音(人)>


千円札きっちり折って年玉に  葉子
<童奈(人)>


病床に千羽鶴折る聖誕祭  わたなべはるを
<鞠(人)>
 病床にてクリスマスを迎え、せめて千羽鶴を折って他者への祈りを捧げる虔しい心を、どうぞ神様がお支えくださいますように。

千姫の化粧櫓や月冴ゆる  柊
<悦子(人)>
月冴ゆるが効いていると思います