第121回桃李正月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:去年、初春、七草

冬・新年の句 雑詠または題詠
兼題 1 「去年」
兼題 2 「初春」
兼題 3 「七草」

句会の日程は

 1月15日 (日)    投句受付開始
 1月22日 (日)24時 投句締切、翌日選句開始
 1月29日 (日)24時 選句締切
 1月31日 (火)    披講

投句: 双六、悦子、毬栗、素蘭、芳生、松風子、海月、青榧、鞠、葉子、潮音、梵論、童奈、英治、柊、月雫、馬客、佳音、ぽぽな、半可、庚申堂、文枝、愛子、治男、雪女、素人、わたなべはるを、明子、芽木、雛菊、風十、丹仙
選句: 梵論、松風子、芳生、潮音、毬栗、青榧、鞠、佳音、半可、童奈、雪女、ぽぽな、素人、文枝、わたなべはるを、素蘭、英治、馬客、治男、悦子、雛菊、芽木、庚申堂、愛子、明子、月雫、風十

披講

・16点句

百歳の太き走り根四方の春  愛子
<芳生(人)>
老樹の走り根と初春、絵のようです。

<佳音(地)>


<半可(天)>
初春のめでたさもさることながら、明日に向かっての力の
拠りどころが見えるような気分に

<わたなべはるを(地)>
初春の目出度さに「百歳の太き走り根」との組み合わせで成功した句

<悦子(天)>
百歳の太き走り根の表現が素晴らしいと思いました

<芽木(地)>


<明子(天)>
時の流れを感じさせる四方に根を張った大木。一年の初めだからより強くその思いが迫ってくるようです。


・13点句

独りには独りの生活七日粥  愛子
<松風子(天)>
季語と文章が照応しています

<半可(人)>
個人的感懐として聞いても、老若独居社会化の日常を想像しても、共感を覚えるところ

<素蘭(天)>
凛として肩肘張るでもない生活に歳事のメリハリ
静謐な日常のあらまほしきかな

<馬客(天)>
達観した暮らしぶり、自ら作る七草粥はその余裕の表れとも。

<芽木(人)>
「独りだってちゃんと食べてるぞ」と昔からのならわしをさりげなく守る。
同じ言葉を繰り返すときどちらかを「ひらかな」にしたら効果的と思うのですが・・・いかがなものでしょうか?

<明子(地)>
独り暮らしはついついメリハリのない生活になりがちですが、そんなふうにはしないぞという作者の強い覚悟のようなものが伝わってきます。


・8点句

七草や小さき雪平椀ひとつ  葉子
<佳音(人)>


<ぽぽな(地)>
楚々としてよいです。

<文枝(天)>
一人暮らしでしょうか。しかし、その中にも旬を味わ心の豊かさと、折り目正しい生き方を垣間見ます。雪平椀がいいですね。

<風十(地)>
 雪平で、独りごちごち煮物する。
 さて、まだ早いか、もういいかと、覗き込む。
 雪平を入れたことで、七草粥を作っている光景もみえました。
 それがこの句の魅力だと想います。

生かされて五年目の計今朝の春  文枝
<青榧(天)>
大病を患ったのでしょうか。十年、二十年目もきっとありますように。

<鞠(天)>
 大患後の経過は五年をめどにされる場合が多い。この期間をめでたく完了して、初春を迎えれば、新たな人生設計も現実化するであろう。

<悦子(地)>
命の大切さが実感できる良い句だと思います

初春や揃う六個の箸袋  雛菊
<梵論(天)>


<童奈(天)>
これから元日の朝の食卓に揃う家族の様子が「箸袋」という言葉によく表されています。

<文枝(地)>
元日の朝。六個の箸袋から祝いの膳を前にした、家中の喜びと緊張が伝わって来ます。


・7点句

去年今年越に降りつむ雪の音  雪女
<芳生(天)>
年を越えて降り積む越の雪。「音」が効いています。

<佳音(天)>


<庚申堂(人)>
本当に大変そうです。

半襟に若さ残して去年今年  愛子
<毬栗(天)>
ちらっと覗く半襟に残す若さがとても好きです。

<雪女(人)>
なにはともあれせめて半襟。

<芽木(天)>



・6点句

初春の安房の勝浦金目鯛  悦子
<雪女(天)>
なにはともあれまずはめでたく。

<英治(天)>
おみくじで大吉をひいた気分。


・5点句

みちのくに育ち七草粥知らず  明子
<潮音(地)>
東北地方に住んだことのないわたしには虚をつかれる視点であり、それだけに新鮮さを感じました。雪ということばをお使いにならずに雪深い陸奥の新春を見事に描いておられると思います。

<素人(天)>
そうなんですよね。ないものねだりとも言えるのです。みちのくでは。


・4点句

去年発ちて今戻りたり厠より  童奈
<素人(人)>
まあ、そういわれればそうなんですが。 発想に一票を献じます。

<素蘭(地)>
年越しは埴山姫と水罔女とゆき隠れのユーモアを戴きました
「戻りたり」は「戻りけり」のほうがしっくりしませんか?

<明子(人)>
足掛け二年の・・・ですね。

七種や女の会話かみ合わず  童奈
<素蘭(人)>
てんでんばらばら勝手にしゃべくり散らして全くもう!
(あ、身に覚えが…)

<英治(人)>
ほんまでんな。

<馬客(地)>
ははぁ、そんなもんですかねェ。

やまひ得し妻の初春初なみだ  英治
<雛菊(人)>
笑顔で迎える新春ばかりではないのですね。辛いですね。奥様お大事に。
そしてお二人の時間を大切に。暖かくしてお過ごし下さいますよう。

<庚申堂(天)>
映画の1シーンみたいです。

去年の坂下りて今年の坂に入る  ぽぽな
<英治(地)>
まさに「つらぬく棒」ならぬ人生の坂。

<治男(地)>
去年は下り坂で、今年は上り坂のようですね。
今年は、向上心を持って、希望がもてそうですね。


・3点句

七草のひとつ足らずはいはざりき  佳音
<わたなべはるを(天)>
これも目出度さのうち。七草をすべて集めるのは難しい。ひとつ足らなくてもありがたいものはありがたい。何気なく流したところが俳諧味があって良い。

七草や点滴のみのけふの暮  英治
<青榧(地)>


<童奈(人)>
本来であれば家族団欒の中、ふうふうと粥をすすっているはずなのに・・・。

七日粥庭の菜の芽もひと摘み  半可
<月雫(天)>
庭の小さな菜園は作者が世話なさってるんでしょうね

寝覚めれば去年のぬくもり残りけり  馬客
<鞠(人)>
 去年のうちに寝入り、ふと目覚めればもはや今年。起きるにしのびないほど心地良いぬくもりにくるまれて……。

<文枝(人)>
いつもながら、離れがたい寝床であるが、今朝は格別。

<愛子(人)>


雨あがる春のはじめの瑞泉寺   松風子
<潮音(天)>
「瑞泉寺」という寺名が「新春」にこんなにあっているとは。

初春の影膳に朱の盃を  双六
<風十(天)>
 大事な人、伴侶がお亡くなりになられたのでしょう。
 「あの世のお前にも初春気分を」
 供えられた朱盃の色が、いやに大きく脳裏に浮かびました。

初春の空に舞ふ鳶梯子乗り  童奈
<ぽぽな(天)>
う〜ん、爽快です。

初春やねこのあくびの大きこと  海月
<雪女(地)>
なにはともあれまずは大きく。

<馬客(人)>
猫は何時でも大欠伸しますが、「初春や」と
言われると、ふーん だからかぁと納得しました。

鳶舞へり初春の富士低くして  芳生
<愛子(天)>


七草のななつのいのちいただいて  芽木
<治男(天)>
着想が面白い。七草をいとおしみながら、自分の命に替えている様子。

気まづさは七草粥の湯気に溶け  双六
<松風子(人)>
「七草粥」の効能ということでしょう。

<毬栗(地)>
リズムが良いですね。

七草の名前と古里の名前  ぽぽな
<雛菊(天)>
作者は七草を味わい、故郷の山、川、幼なじみを思い出した
のだろう。この句は無駄がない言葉の中にたくさんの思い
がつまっている。

銀色の砂糖をこぼす今朝の春  潮音
<ぽぽな(人)>
「こぼせり」や「こぼすや」にしない、等身大で行く意思を感じます。

<庚申堂(地)>
スマートな句ですね。


・2点句

七草の三種を探す母の庭  鞠
<梵論(地)>


去年といふ糸のまつはる今年かな   松風子
<芳生(地)>
抽象的だが実感があります。

終ひ湯に悔ひ流しけり去年今年  双六
<愛子(地)>


七草を摘むや堤の日に塗れ  わたなべはるを
<毬栗(人)>
暖かい土手の日差しに包まれている七草摘み、良いですね。

<わたなべはるを(人)>
情景がしっかり捉えられていてよい。七草も人間も日に塗れ、生命感溢れている。

あらかねの培ふなづな打ちにけり  素蘭
<半可(地)>
枕詞を掛詞に使った正月の上品な遊びごころに敬意を

去年今年薄日のなかの群雀  青榧
<雛菊(地)>
明け方の美しさ。群雀のめでたさ。
去年今年が利いていると思う。

七草の心許なし指を折る  馬客
<月雫(地)>
七草は全種思い出されましたか?

去年の雪今年の庭に積もりけり  月雫
<童奈(地)>
時は途切れることなく、雪は積っては溶けてを繰り返します。

古年のずんぐりまろき徳利かな  佳音
<素人(地)>
この句の醸し出すなんとなく満ち足りた風情に魅かれます。

七草に妻の故郷のラベルあり  青榧
<鞠(地)>
 年末年始のご馳走に飽きた頃の七草粥は、胃にやさしく懐かしい、日本の味そのもの。ましてその七草が「妻の故郷」産とは嬉しい。

留学の子にする電話去年今年  わたなべはるを
<松風子(地)>
年が改まったとはいえ、心配ごとはつきず、というところでしょう。「去年今年」が生きています。


・1点句

初春や先師の句集ひもときて  わたなべはるを
<風十(人)>
  そうそう、年の初めは、今年こそ皆の心に残る名句をと意気込んで、
  先人の名句に習おうと句集をひもといてしまう。
  小生も一茶の句集をながめました。

七草の刻まれ粥のみどりかな  月雫
<悦子(人)>
粥の白と七草の緑が綺麗に見えます

初春の犬懐から顔を出し  雛菊
<月雫(人)>
戌年ならではの句ですね。 
甘やかされた小型犬のとぼけた表情が見えます

初春や鐘撞終へて時の声  月雫
<治男(人)>
鬨の声のようですね。去年から今年へ代わる、瞬間が出ています。

七草なずな祖母の歌聞こえけり  悦子
<潮音(人)>
七草囃子を口ずさみながら七草を切る祖母上。どの世代までそのような風習があったかわたしは存じませんが、たとえば京都の旧家を連想いたします。

初春や厨で子らの寝覚め待つ  柊
<青榧(人)>