第122回桃李2月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:雪解、受験、トリノ五輪(不言題)

冬または春の句 雑詠または題詠

兼題1 雪解
兼題2 受験
兼題3 トリノ五輪(不言題)

句会の日程は
 2月15日 (水)    投句受付開始
 2月22日 (水)24時 投句締切、翌日選句開始
 3月 1日 (水)24時 選句締切
 3月 3日 (金)    披講

投句: 風十、満太郎、潮音、松風子、素蘭、鞠、芳生、葉子、雛菊、馬客、悦子、半可、素人、佳音、青榧、康、童奈、英治、庚申堂、伊三、わたなべはるを、明子、文枝、治男、柊、愛子、雪女、月雫
選句: わたなべはるを、青榧、童奈、雪女、鞠、芳生、英治、悦子、満太郎、伊三、月雫、半可、松風子、潮音、雛菊、康、馬客、愛子、素蘭、佳音、治男、明子

披講

・13点句

鳶高く雪解の風を恣いまま  半可
<童奈(天)>


<雪女(地)>
私も鳶になりたい

<芳生(天)>
雪解風の中悠々と舞う鳶が見える。

<悦子(天)>
大きな景の描かれている素適な句だと思います

<満太郎(地)>
花鳥諷詠そのものの雄大さを感じた。

雪解や土は獣の匂ひして  雛菊
<英治(天)>
たしかに。現れた土にはそんな匂いが。

<伊三(天)>


<潮音(人)>
獣の出る土地の方の生活の実感あってこその句でしょう。雪解けの土の匂い、までは誰でもたどり着けるのですが、「獣の匂ひ」が流石です。奥深い森林に獣の残していった毛の塊までが目に浮かんでくる良い句ですね。

<馬客(天)>
冬眠より覚めて精気充満の生き物。
土もまた生き物。力漲る一句。

<明子(天)>
雪解とともに様々な命の気配が感じられるようになります。
獣の匂ひという表現は的確だと思いました。


・6点句

みちのくの水車の動く雪解かな  悦子
<松風子(天)>
季語と文章がうまく融合したいます

<佳音(天)>
コトリと音の聞こえそうな。

雪解の鉄橋渡る十二輌  佳音
<青榧(地)>


<悦子(地)>
音の聞こえてくる句で素適です

<明子(地)>
雪解川の激しい流れの音と、ごとんごとんと響く鉄橋を渡る列車の音。
まだ空は曇っているけれど季節が動き出したことを感じます。黒部川あたりの景色が浮かんできました。

動き出す村の復興雪解風  文枝
<わたなべはるを(地)>
季語「雪解風」が良いと思います。必ずしも明るい見通しばかりではないのがわかります。しかし、明るさはある。

<月雫(天)>
復興の言葉が雪解の意味合いを、より深くしてます。がんばってください

<愛子(人)>



・5点句

迫りくる子らの旅立ち雪解かな  明子
<満太郎(天)>
子供さんかも・・就職か何かで家を離れる者に対する愛着、しっかり勤めて
貰いたい親の念願を感ずる。

<松風子(地)>
雪解に含まれる思いが文章に照合しています

下校の子また雪解川覗きゐる  康
<月雫(地)>
何度覗いても同じなのだろうけど、なにか流れてないかなぁという子供の好奇心は止めようがないですね、雪解への期待感が好奇心というフィルターを通して読まれてるのだと感じました。

<治男(天)>
事実の活写ですが、心惹かれる句です。「下校の子」に対する愛情があります。子供の好奇心を深く見守る、作者の姿が見えてきます。
 さらっと表現しながら、詩情が湧いてきます。


・4点句

雪解田の土くろぐろと息吹くかな  潮音
<愛子(地)>


<素蘭(地)>
「くろぐろと」が力強く肥沃な印象
雪国の遅い春に寄せる大地の讃歌

落第の子が自転車を磨き上ぐ  康
<わたなべはるを(天)>
「が」という助詞が気になりますが、この少年の気持ちは良くわかります。取り合わせの妙。

<芳生(人)>
失意の中の少年の健気さが見えます。

墓原へ疎林抜けくる雪解風  愛子
<わたなべはるを(人)>
写生のしっかりした句です。

<鞠(地)>
 墓原・疎林ともの寂しい風景ながら、春を運ぶ雪解風が、沈みがちな心をも
揺り動かしてくれる。

<半可(人)>
幾年も幾年も同じように

きっちりと机の角に受験票  馬客
<雪女(人)>
がんばって〜

<雛菊(人)>


<佳音(人)>
緊張感が伝わってきます。

<明子(人)>
きっちりと、机のかどに、という言葉に受験生の緊張感が伝わってきます。

音かすか茂みの奥の雪解水    松風子
<満太郎(人)>
何処からとも無くチョロチョロ水の流れる音が聞こえてくる・・こんな経験
を持っている。自然体がよい。

<雛菊(天)>



・3点句

どうすんのさあどうしよう落第子  素蘭
<英治(人)>
面白い。

<潮音(地)>
本人たちにとっては笑い事ではないのでしょう。でも、おもわず破顔させられます。
わたしは、大学受験は不合格にならずにすみましたが、大学を卒業してからは落第の連続です。

「[53]また買うてしまふ消しゴム受験の子」「[25]受験子のけふも二膳の朝餉かな」の卓越した目のつけどころも印象的でした。[53]は、「そのようなこともやってしまいそうだな」と共感できますし、[25]は若い人の頼もしさへのあたたかいまなざしを感じます。

氷上を舞ふ美しき肩胛骨  雛菊
<雪女(天)>
肩甲骨が舞っているのが見えてきました。

うつくしく死ぬるは難し雪解光  潮音
<月雫(人)>
雪解の景色はあまりに美しいものではありませんね。そこに人生観を見られたのでしょう。

<康(地)>
That's life! と、かってスルツカヤさんは言ったとか・・。この句を読んで、なぜかスルツカヤさんの顔を思い浮かべてしまいました。記憶に残るすばらしい選手でしたね。

大試験未だ終らぬ夢見たり  童奈
<康(天)>
数十年前の、埋まらぬ答案用紙と窓外に揺れるユーカリの葉のざわめきが突然夢に出てきて、目が覚めたことがある。

押へみる内ポケットの受験票  わたなべはるを
<鞠(天)>
 人生の節目に、誰もが体験した仕草で、ありふれていながら実感がある。

雪解けて流さるるもの残るもの  月雫
<半可(天)>
斯くして季節は次に廻り、いつしか輪廻転生へ想いの至る

一村の雪解のひと日暮れ初むる  英治
<青榧(天)>


アルプスの雪唇に滑降す  康
<潮音(天)>
2000年9月47回「オリンピック」、02年2月71回「五輪」、04年8月103回「アテネ五輪」と、五輪の不言題は難問ですが、難題を見事に処理したこの句には驚きました。「雪唇に」が、まったく嫌味になっていないばかりか鮮やかに響き、爽快な印象を受けました。
ところで、今回の冬季五輪、ニュースをみるだけで知らなかったのですが、選手たちはアルプスの山嶺を滑っているんですね。

氷上に熱き思ひのほとばしる  柊
<素蘭(天)>
氷上の熱戦見事でした
美しきblue murderに天(I scream)!

露座仏の頬ゆるびたる雪解風  芳生
<愛子(天)>



・2点句

村人の深き眠りや雪解川  わたなべはるを
<英治(地)>
いかにもの雰囲気が出ている。

雪解川魚道に生命よみがえる  馬客
<芳生(地)>
魚道に魚影が見え始めた雪解川の様子。

駅まではいつもの自転車受験の子  雛菊
<治男(地)>
 「いつもの自転車」と言いながら、受験生も、見守っている作者も受験に対する緊張感が、暗に出ています。この先が色々想像できる句だと思います。

K点を超えイタリアの雪に落つ  英治
<佳音(地)>
「イタリアの雪」が好きです。

雪解けて庭の緑に続く蒼  伊三
<雛菊(地)>


受験子のけふも二膳の朝餉かな  佳音
<童奈(人)>


<康(人)>
いつもと変わらぬ様子にみえる受験の子の食欲、何も言わずそれを眺めている母(父?)の心情がさりげなく詠まれています。

雪解けや剃り跡青き作務衣の僧  素人
<半可(地)>
作務に勤しむ若い僧の頭に吹く風はまだ寒く

春の雲叶わぬ夢は夢のまま  素人
<童奈(地)>


喜びも怒りも混じり雪解川  柊
<伊三(地)>


百分の一秒の夢真夜の春  月雫
<青榧(人)>


<治男(人)>
「百分の一」で何センチ、前に出るか。それが競争の分かれ目になる、厳しさ。トリノの大会は、日本にとって厳しいものであっただけ、選手達も大変であった事が、現れた句です。

氷上のきらめき誰も寝てはならぬ  明子
<馬客(地)>
「不言題トリノ五輪」句中のピカ一。


・1点句

受験子の部屋から洩るるモツアルト  鞠
<松風子(人)>
受験子の気持ちがあらわれています

鉛筆の芯尖らせて受験の子  愛子
<馬客(人)>
受験子の不安な心は「また消しゴム」を買ったり、
受験票を何回も確かめたり、と土壇場まで休まる
ことが無い。
「尖った芯」にその心情を託したこの句に一票。

凜と立つ選手の面は雪化粧  葉子
<悦子(人)>


アルプスの星を軒端のスキー宿  芳生
<鞠(人)>
 目先の勝ち負けにこだわっていない、大きな景色に惹かれる。

吾輩は猫であるので落第す  潮音
<素蘭(人)>
「吾輩は落第す」の中七に猫サンド
鼻毛を抜きながら「ヨノナカバカナノヨ」と嘯く吾輩
分身たる猫のココロは「ナメンナヨ」………たぶん。

スケ-トの乙女舞いたり白椿  悦子
<伊三(人)>