第123回桃李3月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:柳、鳥帰る、石鹸玉

春の句  雑詠または題詠

兼題1  柳
兼題2  鳥帰る
兼題3  石鹸玉

句会の日程は

3月15日 (水)    投句受付開始
3月22日 (水)24時 投句締切、翌日選句開始
3月29日 (水)24時 選句締切
3月31日 (金)    披講

投句: 青榧、毬栗、満太郎、葉子、素人、連、康、鞠、悦子、芳生、馬客、素蘭、雪女、半可、潮音、わたなべはるを、佳音、童奈、英治、伊三、双六、治男、愛子、明子、月雫、雛菊、ぽぽな、丹仙
選句: 芳生、満太郎、連、雛菊、青榧、英治、童奈、双六、明子、鞠、毬栗、わたなべはるを、半可、雪女、伊三、悦子、葉子、ぽぽな、潮音、素蘭、治男、馬客、愛子、佳音、月雫、素人、康、丹仙

披講

・15点句

抱き上げてひと葉にぎらす柳かな  馬客
<満太郎(地)>
まだ歩けない赤ん坊に親はよくこんな事をする。実体験なしには出来ない句。

<連(地)>
柳と幼子の強い生命力が触れ合った春と言う季節の躍動を感じます。

<英治(天)>
いかにもの雰囲気だ。

<双六(天)>
優しい情景が浮かび上がって、ほのぼのとします。

<鞠(人)>
 春風に吹かれる柳の糸は、幼子の手にも届かんばかり。

<雪女(地)>


<丹仙(地)>
句の表の主題は柳の若葉であるが、内容的には、抱き上げられた幼児の存在が、柳の陰に隠れつつ実感されるという面白い句。


・14点句

蒼穹に路ある如く鳥帰る  治男
<芳生(地)>
「路あるごとく」がよい。

<満太郎(人)>
わかりやすい表現がよい。

<連(天)>
「蒼穹の路」が不思議な「渡りの本能」をよく表していると思います

<葉子(天)>


<素蘭(地)>
羽ばたきが聞こえるほどの低空から上空へ滑空してゆく帰雁の群を目撃したとき、渡り鳥たちにもハイウェーがあることを実感しました。
中七は「路ある如し」と切った方が良いと思います

<丹仙(天)>
「蒼穹に」の「に」という措辞では、普通は、「切れ」がないので発句にはなり難いのであるが、この句の場合は、「路ある如く」という直喩が効果的であって、漢詩文調の格調の高い句となっている。


・9点句

しやぼん玉息抜くことも覚へけり  雛菊
<童奈(人)>


<悦子(天)>
季語に作者のお気持ちが良く効いた秀句だと思います

<愛子(地)>


<佳音(人)>


<康(地)>
シャボン玉は空気の流れに逆らわない。表面張力は必死だけれど・・。


・8点句

返信の惑ひの余白鳥帰る  愛子
<半可(地)>
人の世の憂いと空高く帰り行くものと間の図らざる交感

<伊三(地)>


<葉子(人)>


<月雫(天)>
惑ひの余白は白眉ですね。書きたくても書けない一言というのは、誰にでも身近にあるでしょうね。

風を恋ひ風に好かるゝ柳かな  佳音
<雛菊(地)>
風と柳は仲良し。

<伊三(天)>


<悦子(地)>
ロマンチックで素適ですね

<素蘭(人)>
柳に風の風情を相思相愛の見立てで詠んだ軽みがいいですね
風力が10を超えたときの気分も聞いてみたいような…

席替えの一斉作業鳥雲に  童奈
<わたなべはるを(人)>
鳥帰る頃の職場の一場面と見た。その頃の雰囲気が切り取られ、成功した句。

<ぽぽな(天)>
小中学校の席替え、懐かしいですね。あの喧噪が甦ります。「一斉作業」とドライな捉えが一層切れを磨いています。人と自然の営みの対比の上手い例。

25「さざなみのひろがるばかり鳥帰る」の静謐さも魅力的でした。

<治男(人)>
 席替えは学校か、職場か鳥が帰る頃の新年度に備え
大忙しである。季語がつかず離れずで佳句である。

<馬客(天)>
教室内の喧騒、窓外の静寂、
教諭の胸中の想い、この句は
広く深い。

職を退くゆふべ銀座の柳かな  英治
<青榧(地)>
私もそろそろです。途中下車すれば、今はいつでも行ける銀座ですが。

<毬栗(天)>


<半可(天)>
去来する交々の感懐を、敢えて暮れなずむ繁華街の淡い華やぎに
目を転じた心情に共感


・7点句

よちよちと子が追ひかけるしゃぼん玉  鞠
<満太郎(天)>
可愛い幼子のヨチヨチ歩く姿を彷彿させる。自然体が素晴らしい。

<愛子(天)>


<素人(人)>
情景が眼に浮かぶようです。危なっかしさに可愛さが募ります。

石鹸玉ゆっくり話す女の子  童奈
<わたなべはるを(天)>
省略の利かせ、季語の斡旋で成功した句。俳句の余白の美しさを思う。

<雪女(天)>


<ぽぽな(人)>
シャボン玉と女の子の様子、通いあいますね。


・6点句

しゃぼん玉こはれるやうに告白す  ぽぽな
<双六(地)>
しゃぼん玉も心も壊れやすいものだ。しゃぼん玉がパチンと砕けるように決断をして告白する。

<明子(地)>
心の震えが伝わってきます・

<素人(地)>
告白のインパクトの問題です。駄目になることを覚悟しておこうというのですね。

勝ち負けは男にまかせ石鹸玉  雪女
<童奈(天)>


<佳音(天)>


新内や堀に灯のゆれ柳ゆれ  童奈
<雛菊(天)>
ああ、なんと雅。古都の夕べでしょうか。ゆれのかな書きも
いいですね。新内やの切れが良い句です。

<素蘭(天)>
紅灯の巷、新内を語る美声に聞き惚れて…
あだな年増や粋な旦那衆を彷彿させる大江戸絵巻


・5点句

しゃぼん玉小さく吹く子淋しい子  葉子
<鞠(地)>
 しゃぼん玉にも、そんな違いがあったとは……。

<康(天)>
優しい性格の女の子が目に浮かびます。それを見守る作者の目も優しい。

ニュートンの佇む窓辺しやぼん玉  素蘭
<治男(天)>
しゃぼん玉とニュートンとの取り合わせが旨い。
しゃぼん玉は軽くて、ふわふわ飛ぶが、いずれ、壊れて或いはそのまま
地上に落ちる。引力の法則。中7も何となく身近で面白い。

<佳音(地)>


季寄せ置くホームの本屋鳥雲に  佳音
<潮音(天)>
今回は文句なくこの句。
まず、着目点がいいですね。季語「鳥雲に」も良く合っています。
駅のホームの売店で時刻表や雑誌だけではなく文庫本まで置くようになったのはいつからでしょうか。気がついたらそうなっていた、というのがわたしの実感なのですが。そのような意味で、この句は、わたしたちが生きている二十一世紀初期の日本の日常風景を活写しています。作者は旅行中でしょうか、通勤の途中でしょうか。どちらでも、ふと「季寄せ」に目が行った作者の心情に非常に共感できますし、作者を画中に置いた点描が目に浮かびます。この句にそれだけ力があるからでしょう。

<馬客(地)>
「ホームの本屋」にヤラレタ〜。


・4点句

曇る日の低きを飛びて石鹸玉  潮音
<英治(地)>
シャボン玉日和が確かにある。

<月雫(地)>
湿度の多い日は、この句のとおりしゃぼん玉は高く飛びません。よく見て読まれてる句だと感じます。

小さき子の息の大きな石鹸玉  青榧
<芳生(天)>
子供の一途な様子がよく表現されていると思います。

<丹仙(人)>
「息の大きな」が良い。小さき子を見つめている作者の優しい眼差しもまた印象的であった。

子返りの母の眸が追ふ石鹸玉  愛子
<鞠(天)>
 二度童衆(にどわらし)とはいうものの、子供と認知症の老人とは全く異なる
存在なのが切ない。

<馬客(人)>
ちょっと悲しいが、穏やかなひと時、を
確実に捕らえている。

芽柳の枝の先へと雫かな  月雫
<明子(人)>
美しい景色です。雨が止んでさしてきた光にきらめく雫や、優しい黄緑色の柳の芽がうかんできます。

<わたなべはるを(地)>
写生の利いた句。朝日や清澄な空気も見えるような写生句。

<半可(人)>
小さいながら確かな春の滴り


・3点句

鳥帰るふるさとの風伝ひつつ  青榧
<明子(天)>
鮭は生まれた川の水の匂いを覚えていて故郷に帰ってくると聞きました。
鳥たちは風の匂いをたどっているのでしょう。無事帰れますように・・・

耕作の尻向ける空鳥帰る  雛菊
<青榧(天)>


子を想う雨情の歌や石鹸玉  治男
<素人(天)>
あのメロディーは懐かしい。ノスタルジックとでも言うのでしょうか。

だうしてもハートにならずしやぼんだま  佳音
<毬栗(地)>


<月雫(人)>
ハート型のしゃぼん玉に夢がありますね。少々、乙女ちっく過ぎる気もしますが。

さざなみのひろがるばかり鳥帰る  明子
<芳生(人)>
なんとなく詩情が感じられる。

<英治(人)>
別離の趣がよく描写されている。

<雪女(人)>



・2点句

ハイヒール銀座柳に響く音  素人
<治男(地)>
 ハイヒールと銀座の柳の現代と古風さが対比されている。
それを繋ぐ「響く音」が効果的である。

子が母を母が夫呼び鳥帰る  英治
<伊三(人)>


<康(人)>
小家族のほほえましい光景。この家族のように、帰る鳥の行く手に、幸あれ。

人溜まりくる楽屋口鳥帰る  ぽぽな
<潮音(地)>
演劇なのか音楽の演奏なのか、大舞台をつとめた後の緊張感がふと緩んだ作者が空を見上げられたのでしょうか。さっと風のとおったあとのような気分が感じられます。

石鹸玉水面の裏へ消えにけり  潮音
<ぽぽな(地)>
「水面の裏へ消えた」という断言がいいです。

退院の手続き待つや鳥雲に  馬客
<童奈(地)>


糸柳模糊の青みのゆらぐ影  半可
<葉子(地)>


鳥帰る尾根を囲ひに峡の空  双六
<潮音(人)>
盆地だと「鳥帰る」がいっそう実感されますね。

<愛子(人)>



・1点句

鳥帰る上人像のその上を  わたなべはるを
<悦子(人)>
気持ちの伝わる素適な句です

しゃぼん玉追ふその瞳追ふてをり  双六
<雛菊(人)>
をさなごをよく観察されていると思いました。おちびちゃんの瞳にしゃぼん玉が映っています。

帰省子の四泊五日鳥帰る  康
<青榧(人)>


鳥帰る空へ光の矢羽かな  月雫
<連(人)>
「ひかりの矢羽」から長く、辛い渡りへの力強い希望が伝わります。

単身の赴任三年鳥帰る  伊三
<双六(人)>
鳥は季節が巡れば帰って行くのに三年目を迎えた単身生活はいつ終わるとも知れない。そんな気持ちが良く出ています。

身にまとふ資格とてなし石鹸玉  英治
<毬栗(人)>