第124回桃李4月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:花冷、亀鳴く、復活祭

春の句 雑詠または題詠

兼題1 「花冷」
兼題2 「亀鳴く」
兼題3 「復活祭」

句会の日程は

4月15日 (土)    投句受付開始
4月22日 (土)24時 投句締切、翌日選句開始
4月29日 (土)24時 選句締切
4月30日 (日)    披講

投句: 文枝、葉子、素人、満太郎、鞠、芳生、悦子、半可、毬栗、佳音、双六、松風子、潮音、英治、伊三、馬客、ぽぽな、康、童奈、わたなべはるを、芽木、治男、明子、愛子、月雫、流砂、柊、雛菊、素蘭
選句: 素人、半可、葉子、英治、毬栗、芳生、雛菊、童奈、双六、佳音、潮音、松風子、康、連、わたなべはるを、素蘭、馬客、文枝、ぽぽな、治男、月雫、愛子、明子

披講

・11点句

花冷えや母の匂ひの貝釦  ぽぽな
<佳音(天)>
冷たくてあたたかな貝釦がいいとおもいます。

<松風子(天)>
季節感がひっとりとあらわれています

<愛子(天)>


<明子(地)>
貝釦の懐かしい、ちょっとひんやりした感触が蘇ります。


・9点句

人を待つ胸ふかく吸ふ花の冷  明子
<英治(天)>
待ち人の来ぬ溜息。「花の冷」が効果的。

<潮音(天)>
言葉の省略の的確さ、切れるかと思わせて切らずに最後の切れへと流れる言葉、すべて見事見事。思いを寄せる相手を待つときに吸い込むのは花冷えの空気でなければならない。みずみずしい気持ちをかくも力強く詠む作者の実力はおそろしいほど。

<連(天)>
きっと楽しい報せを運んで来てくれる人への期待が伝わります。


・8点句

雀らに広き空あり復活祭  芽木
<芳生(地)>


<松風子(地)>
季語と文章が照合しています

<治男(天)>
 蘇るキリストにより、どんな小さな生き物にも、愛を与えられ、加護されるという意味でしょうか。「広き空あり」で神の大きさが現されています。

<明子(人)>
視線を雀に向けられたことに心惹かれました。
喜びはすべてのものに平等です。


・7点句

亀鳴くや芥箱から求人誌  雛菊
<葉子(天)>


<康(人)>


<明子(天)>
捨てられた求人誌からはいろいろな声が聞こえてきそう。
季語との微妙な響きあいがおもしろく感じられました。


・6点句

亀鳴くやひとつ見送る路線バス  佳音
<英治(地)>
春ののどかさが感じられる。

<毬栗(人)>
路線バスを待つ間に亀の鳴き声が聞こえてきそうです。

<ぽぽな(天)>
もうすこしこの風情のなかに身を置きたかったのでしょうか。

花冷やフジタの白を観に上野  素人
<半可(天)>
フジタ独特の透明な理知の冷え

<童奈(天)>
もう少し語順を変えたらとは思いますが、「花冷」と「フジタの白」との取り合わせは見事。


・5点句

花冷や座椅子こきこき背を正す  月雫
<英治(人)>
座椅子ではややもすると姿勢がだらしなく崩れる。

<佳音(地)>
なかなか思う傾きにならないのですね、ひとまず真っ直ぐ。

<馬客(地)>
今年はいつまでも風が冷たいです。
コタツに入って、私もよくこんなことを
しています、ただし我が家の座椅子は安物で
キシキシいいます。背骨や首がこきこき。

花冷の土手吹かれゆく新聞紙  童奈
<康(天)>
土手の桜並木、すこし風もあって冷える中ちらほらと散る花びらと、人間くさい新聞紙。取り合わせの妙。

<わたなべはるを(地)>
目に見える句で、明快だ。

亀鳴くや雨呼ぶ時は裏声で  潮音
<童奈(地)>
新発見です。

<馬客(天)>
近くの弁天様の池で鯉やカメさんパン屑などを
やっています。
池の中島に、首を突き出し、天に反らせてカメさんは
何をしているのか不思議でした。
確かに裏声でした。

男らの髯のみな良し復活祭  英治
<毬栗(天)>
堂々たる男達の姿が見えて心地よい句ですね。

<潮音(地)>
ヨーロッパの陽気な男たちの歓声が聞こえてくるような良い句だと思います。

わづらひて花冷の夜のうどんかな  英治
<半可(人)>
日常のしみじみした気配と仄かなぬくもりと

<連(地)>
何故か「夜鳴きそば」のそばを食べている様子が目に浮かびました。

<月雫(地)>
風邪をひかれたのでしょうか。うどんは消化も早く、体に良い食べ物ですよね。暖かくして栄養とってお元気になられますように。


・4点句

町をゆく明るき声よ復活祭  松風子
<わたなべはるを(天)>
「町をゆく明るき声よ」が良い。季語「復活祭」の雰囲気を存分に味わえる。

<馬客(人)>
待ちかねた春の気分。
信ずる神・仏はなんであれ、人は皆
春到来を喜ぶのです。

亀鳴くやまどろみに聞く母の声  松風子
<双六(天)>
「亀鳴く」という季題を聞いて、悲鳴をあげたのは私だけでしょうか。
この不思議な季語の曖昧さを、うまく言いえているように感じました。
まどろみの中で、母の声を聞いたような、はて、亀の声も聞いたような…

<わたなべはるを(人)>
中七座五が心捉える。


・3点句

地下街に花を買ひけり復活祭  わたなべはるを
<月雫(天)>
たまたま花を買った日が復活祭だったという句だと思いますが、日々の生活感が復活祭の意味合いを濃くしている気がします。

亀鳴けど非常階段確認せよ  ぽぽな
<素蘭(天)>
取り合わせが唐突なようで意味シン
いかなる風雅の最中にも警戒を怠るなとは
実に有難いカメ様のお導き…………なのか?

花冷の皆ふれてゆくシニョンかな  佳音
<雛菊(天)>
モジリアニの絵の女性のような。横顔の長い首。長い髪をゆるやかに後ろにまとめて。ポニーテールはジュニア。シニョンはもう少しお姉さんのイメージ。この人若い女性ね。お友達がわあかわいい髪止めも素敵ねとちょんちょんと触れていくのですね。花冷の季語がきれい。

どの窓も水の輝き復活祭  ぽぽな
<毬栗(地)>
中七がとても好きです。

<双六(人)>
復活祭のころ、陽の輝きが一段と増す喜びがとても素直に出ていて好感を持ちました。

フィレンツエの丘に鳴る鐘復活祭  素人
<文枝(天)>
フィレンツエは作者にとって思い出深い街であったに違いない。
「丘に鳴る鐘」で、復活祭を祝う人々の喜びが映像から流れるように伝わってきました。

復活祭アステアの脚長かりき  馬客
<半可(地)>
映画「イースターパレード」を観た時代の懐かしさ

<童奈(人)>
そんな時代もありました、という感じが「脚長かりき」に。

亀鳴くや憶えはじめの九々のこゑ  康
<素蘭(地)>
真贋の小田原評定に初々しい九九の声がとてもミスマッチ

<文枝(人)>
亀の鳴き声と、九九算との掛け合わせが面白い。

耳立てて花冷聞くやキリンの子  伊三
<素人(天)>
花冷えを音で捉えた感覚の魅力。しかもそれをキリンの子でさせたのが実に新鮮。

昨夜鳴きし亀か甲羅を干してゐる  柊
<芳生(天)>
発想が面白い。

亀鳴くや亀鳴かざるや雨匂ふ  双六
<雛菊(地)>
亀鳴くは難しい季語ですよね。花冷のように生活実感がありません。亀は春低くぼうと鳴く説。鳴かぬ説。これは見立ての面白さだよなど。私には扱い方が全く解りませんでした。取り合わせにしてもとってつけたようになってしまって。俳人の句など読んでみましたがわからない。わからないままに選句することお許しください。掲句の心情に惹かれました。

<素蘭(人)>
これは下五の「雨匂ふ」で戴きました


・2点句

トーストの耳食ひ残す復活祭  月雫
<葉子(人)>


<佳音(人)>
ついているようなはなれているような・・。

明日会ふまでのさよなら復活祭  雛菊
<康(地)>


花冷や副葬品の首飾り  柊
<芳生(人)>


<治男(人)>
 生前に愛用した首飾りでしょう。遺骸に添えて送る事は
残されて者の、大きな愛惜を現しています。

子どもらは肉食が好き復活祭  愛子
<ぽぽな(地)>
生命力と明るさがありますに満ちています。

亀鳴くやゴッホのぬり絵購ひぬ  芽木
<素人(地)>
ゴッホの塗り絵なるものがあるのかどうか分かりませんが、強烈な色彩で力強くやってみたいですね。私もきっと購います。

亀鳴くや古文書開く資料館  わたなべはるを
<愛子(地)>


亀鳴けり閉村式の楽に和し  芳生
<治男(地)>
 町村合併により、閉村式で、何の音楽でしょうか。
淋しさと、飛躍への期待が、鳴かない亀に、鳴けよと
呼びかけているようです。

狂いなく鳶の輪を描く復活祭  芳生
<連(人)>
どうして鳶はああいう飛びかたをするのでしょか、不思議な気持ちになりました

<ぽぽな(人)>
自然の営みと人間の営みの接点見える句です。

花冷ゆる空より百舌鳥の尖る声  半可
<葉子(地)>


花冷の磨きあげたる墓石かな  わたなべはるを
<文枝(地)>
花冷えと言えども、墓参りを欠かさない作者と故人の温かな人間関係が、
「磨き上げたる墓石」によく表れています。

花冷や足腰弱き国憂う  馬客
<双六(地)>
右往左往して哲学の見えない国のゆくえ、花冷えのうそ寒さが余計に身に沁みます。


・1点句

復活祭座布団ほどの玉子焼き  佳音
<雛菊(人)>
ダイナミックな玉子焼きだこと。誇張も気持ちよし。
私には復活祭の季語も難しいものでした。

花冷ゆる日や和三盆すこし購ふ  康
<潮音(人)>
だれか大切な方のために和菓子をおつくりになる心遣いが静かに響いて参ります。

亀鳴けりいにしへびとの眠る丘  明子
<松風子(人)>
いかにも季語にあった情景が見えます

ものの名を詠むてふ遊び花冷ゆる  素蘭
<愛子(人)>


川原行く仔犬の眸復活祭  毬栗
<素人(人)>
華やぎがあります。

亀鳴くや夜空は赤き腹見せて  潮音
<月雫(人)>
夜空の赤い腹ってなんでしょう?なんだかわからないからこそ、亀鳴くの不可思議な季語にぴったりだと思います。