第125回桃李5月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:初夏、粽、更衣

夏の句 雑詠または題詠

兼題1 初夏 兼題2 粽 兼題3 更衣

句会の日程は

 5月15日 (月)    投句受付開始
 5月22日 (月)24時 投句締切、翌日選句開始
 5月29日 (月)24時 選句締切
 5月31日 (月)    披講

投句: 素人、毬栗、葉子、青榧、潮音、満太郎、芳生、伊三、松風子、鞠、半可、ぽぽな、わたなべはるを、素蘭、英治、連、佳音、柊、康、童奈、馬客、治男、明子、月雫、雛菊
選句: 素人、青榧、半可、雪女、芳生、英治、雛菊、鞠、佳音、童奈、潮音、伊三、連、わたなべはるを、ぽぽな、松風子、康、双六、月雫、治男、素蘭、馬客、明子、満太郎

披講

・13点句

更衣足首ほそき恋敵  雛菊
<雪女(地)>
関係ないけど、先週、館ひろしの信長がお濃の方の足首を「細いのう、昔とかわらぬ」などと言っておった。

<英治(人)>
面白い着眼。

<童奈(人)>
うーん、強敵。

<松風子(天)>
衣更で発見する恋敵の細き足首が秀逸

<月雫(地)>
薄物になってわかるボディライン。足首が細い恋敵などに負けてられない夏がやってきます。頑張れ!

<治男(地)>


<明子(地)>
更衣の句としてはちょっと視点がめずらしいと思いました。


・12点句

初夏の風あをあをと鞍馬寺  芳生
<半可(天)>
風の色が薫る

<童奈(天)>
きれいな句ですね。

<連(人)>
鞍馬寺に行ったことはありませんが「風あおあおと」が牛若丸、天狗等で抱くイメージにピッタリです

<康(天)>
鞍馬の初夏の風、清清しいです。

<馬客(地)>
今は昔、桜の時期でも紅葉の秋でもなく
この時期に「鞍馬」へ行きました。
このとうりでありました。楓の林を
風が吹き抜けて、まさに「風あおあお」でした。


・10点句

初夏のパレットに溶く空の色  馬客
<芳生(天)>
水色でしょうか、広い空が見えてきます。

<英治(地)>
さあ夏だの感じが。

<わたなべはるを(天)>
初夏の明るさ、解き放たれてゆく心の様を捉えてみごと。

<松風子(地)>
いかにも初夏の感じの出ている句


・8点句

八方の山の匂へる笹粽  芳生
<青榧(人)>


<佳音(天)>
どこの粽というわけではないのですが、この粽はどこの誰故郷のものでもある気がします。

<松風子(人)>
粽の笹の葉に山の緑の匂いが溶け込んでいる発見

<満太郎(天)>
地方の特産としての粽なら地方の空気、風味、色合、を強く匂わせると思います。

父似の目母似の頬が粽食ふ  康
<素人(人)>
孫を眺めている祖父母の視線でしょうか。

<鞠(人)>
長子を出産して、初めて赤ん坊と対面した時、余りにも夫の祖母に似ていて、遺伝の妙に感嘆したことを思い出した。

<佳音(地)>


<治男(天)>


<治男(人)>



・7点句

江ノ電のゆっくり走って夏始  満太郎
<半可(地)>
鎌倉にまた夏が

<連(天)>
江ノ電と言うと車体すれすれに干された洗濯物・紫陽花寺・海水浴場・鯵の干物と矢張り夏が似合います。

<康(地)>
こののんびり感、いいですね。

はつなつのみずのにほひのめざめかな  半可
<雪女(天)>
まだ半分まどろみの、現実とのあわいのここちよいめざめですね。しかも初夏。ひらがなでその気分がよくでていると思います。

<芳生(地)>
四囲に植田が迫る風景が見えてきます。

<素蘭(人)>
平仮名だけの甘い措辞がいいですね
ただ旧仮名の場合「みず」では「見ず」、「水」は「みづ」です

<満太郎(人)>
リズム。


・6点句

山沿ひは曇りがちなり笹粽  ぽぽな
<芳生(人)>
発見があります。

<素蘭(地)>
何でもないような句のようで郷愁を笹粽という季題に収斂させているお手柄

<明子(天)>
子供のころ、笹粽は忙しい時のかっこうの昼食であり、おやつでした。
縁側で足をぶらぶらさせながら粽を食べている。そばでふるぼけたラジオが天気予報を流している。山沿いは曇りがち・・・懐かしい景色が浮かびました。

手術日の決まりし妻や衣更  馬客
<鞠(地)>
手術前なればこその主婦の身仕舞いに心打たれる。

<わたなべはるを(人)>
季語「更衣」によって救われる感じ。
手術は無事済みます。


<素蘭(天)>
留守宅に残されるお方が困らぬよう夏物などどこに何があるか
またご自身の入院準備等等、病をおして働くお姿が浮かびます

笹ちまき結ひ目の堅き母なりき  半可
<雪女(人)>
笹ちまきをつくる手伝いは楽しみだった。しっかり巻けると気持ちがよかった。

<鞠(天)>
きっちりと粽を結う手元が目に浮かぶような、お母さんへの追慕が胸にしみる。

<潮音(地)>
粽の結び目という具体的なものをもってこられて成功。
母上のお顔までが見えるような優れた作品です。
粽は端午の節句と結びついて考えられるせいか、自身を子供の位置において親への思いを詠まれた佳作が多いですね。今回も「[67]母も祖母も在りし日のこと粽解く」の佳作。平成12年5月41回句会の「父もまた世に容れられず粽解く 葉子」はいまだに忘れられません。


・5点句

粽解く螺旋の山の深緑  佳音
<伊三(天)>


<双六(地)>
「螺旋の山」が好きです。

初夏の第三ボタンまではづす  ぽぽな
<佳音(人)>


<双六(天)>
ちょっとドキッとするほど胸を開けているのは、男性でしょうか女性でしょうか。なにか新しいことが始まりそうな気配がします。「初夏や」ではなくて「初夏の」であることで意味にふくらみが出るような気がします。

<明子(人)>
初夏の気分がよく伝わります。

ペンキ屋の大屋根の上粽食ぶ  治男
<雛菊(地)>
私も大屋根の上で粽食べたい。初夏の風に吹かれて。おいしいでしょうね。

<潮音(天)>
や〜ね〜。

ちまき手に紙の兜で武張りけり  松風子
<素人(天)>
ガキ大将というかやんちゃ坊主が目に浮かぶようです。
そして、暫し、懐旧の情に浸りました。

<童奈(地)>
孫か子か、かわいいしぐさが見えてきます。


・4点句

初夏と書く初夏の香の墨を磨り  潮音
<半可(人)>
鼻孔に涼しく

<雛菊(天)>
初夏の香の墨、いいなあ。若葉が見えてきます。

更衣空へと続く草の色  潮音
<伊三(人)>


<ぽぽな(天)>
衣更をしたときの開放感が伝わります。よい韻律もあります。


・3点句

海よりの風のありけり更衣  わたなべはるを
<英治(天)>
更衣の気分がよく表現されている。

衣更して呼鈴を待つてゐる  佳音
<青榧(地)>


<雛菊(人)>
鈴木真砂女さんのような女性かな。さらっと和服で凛とね。

初夏の水田に光る背鰭かな  松風子
<青榧(天)>


故郷は越後と言ひて笹粽  柊
<月雫(天)>
故郷を後にして幾年たたれたのでしょうか。勧められた笹粽にふと思い出す故郷の事、越後が生きてます。

更衣しておとなしき女学生  英治
<わたなべはるを(地)>
更衣の時の心の変化を捉えて妙。


<双六(人)>
夏衣になれば、溌剌と元気になりそうにも思えるのに、こう言われてみると
まだ身に添わない夏姿で妙に大人しくなっている子もいるような気になって
説得されてしまいました。

衣更へて風の輪郭よく見える  ぽぽな
<馬客(天)>
「よく身ゆる」かなとも思いますが、これで
よろしいのでしょうね。


・2点句

信号の青を横切る初夏の猫  青榧
<連(地)>
この猫は可愛い猫のか、怖い猫なのか
「長靴を履いた猫」と「猫は知っていた」の猫を同時に思い浮かべました。

掛違ふ釦の憂鬱更衣  月雫
<伊三(地)>


更衣すませて急ぐ百貨店  葉子
<満太郎(地)>
単純さが良いと思う。

お下がりを着る妹の衣更  松風子
<素人(地)>
人情の機微をついて上手いですね。
この気持ち、良く分かってしまうのです。わが家も娘ふたりでした。

木の鳥は一声を脱ぎ初夏の風  潮音
<ぽぽな(地)>
鳥の声を出すことを「脱ぐ」とされたところに詩があります。他の題「衣更」からインスピレーションを得られたのでしょうか。


・1点句

粽の葉もてあそびながら返事待つ  連
<康(人)>
粽のしわしわ感が、心のひだに、期待感に繋がる。

母も祖母も在りし日のこと粽解く  童奈
<馬客(人)>
「粽」にはなぜか兄、母、祖母といった
家族の面影が強く兆す。

父さんきてね肌着まるまる更衣  満太郎
<潮音(人)>
難解。一つの解釈として、単身赴任の父親が久しぶりに帰宅するのを待つ家族が肌着まで夏用のを揃えている、ともとれるが、無理か。

夏襟にうなじ幼き茶髪の子  半可
<月雫(人)>
茶髪で言うことは一丁前だけど、夏襟からのぞくうなじに大人の女の魅力が感じられなかったのでしょう。親としての安堵感も見えるようです。

健康と株の本置き更衣  治男
<ぽぽな(人)>
取り合わせが面白いと思いましたが、「置き」とされたことで報告調になっている気がして惜しいと思いました。たとえば「健康と株の本あり更衣」と視覚に焦点をあて中七で切れを入れたり、「株式と健康の本更衣」と思い切り名詞同士をぶつけてみても、主人公の心境、身辺が伺えて趣があるのではないかと思いました。