第127回桃李7月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:蓮、虹、土用

夏の句 雑詠または題詠

兼題1 「蓮」 
兼題2 「虹」
兼題3 「土用」

句会の日程は
7月15日 (土)    投句受付開始
7月22日 (土)24時 投句締切、翌日選句開始
7月29日 (土)24時 選句締切
7月31日 (月)    披講

投句: 伊三、葉子、郭公太、芳生、鞠、素蘭、馬客、素人、松風子、佳音、潮音、れん、柊、ぽぽな、英治、わたなべはるを、治男、雪女、雛菊、双六、明子、半可、連、月雫、梅雪
選句: 郭公太、連、鞠、芳生、英治、雛菊、松風子、半可、柊、葉子、ぽぽな、伊三、佳音、れん、潮音、素人、素蘭、馬客、治男、双六、月雫、明子、雪女、梅雪

披講

・15点句

全力でゆく虹のこと話すため  ぽぽな
<雛菊(天)>
額に玉の汗。そう、子どもは走るのが大好き。
にじ出てたんだよ。にじだよ。ぼく見たんだ。すっごいきれい。色がまざってた。

<れん(地)>
すぐに消えてゆくものを話すためだからこそ全力がよりいるのだろう

<素蘭(人)>
ポジティブな初々しさが爽快
ただし気負いすぎると空回りしそう

<月雫(天)>
喜びを誰かと共有するための全力が気持ちいいです。
スピード感と勢いを感じる句です

<明子(天)>
早く皆に虹のこと教えてあげなくっちゃ・・・。
気持ちが良くわかります。

<雪女(天)>
昔、子供の頃、覚えあり。


・10点句

虹立つや地球の把手やはらかし  佳音
<連(地)>
スケールの大きさに驚きました

<ぽぽな(天)>
独特の発想が大成功です。

<伊三(天)>


<月雫(地)>
見立ての句は大抵小さくてなんだかなぁと思う句が多いのですが、
地球の把手とはすごいですね。スケール感の大きさにびっくりです。

この町に知る人なくて土用かな  雪女
<英治(天)>
真夏の午後の物憂さを感じる。

<佳音(人)>


<潮音(天)>
十七音のなかに「土用」の語がどっしりと座っています。
作者は新しい土地に転居されたのでしょうか。土用の炎昼で人気のない新しい町に、ふと疎外感を感じられたのかも知れません。別の解釈として、年齢を重ねるにつれ、知人が次々と鬼籍に入っていくために身のまわりに知人がいなくなってしまうという日々を詠まれたのかもしれません。夏の盛りの寂寥を見事に詠まれた佳作ですね。

<素人(地)>
人生は言ってみれば旅です。

<月雫(人)>
土用という烈しい日と知人のない寂しさとの取り合わせが面白いですね。
古い私小説のようです


・9点句

横丁のその横丁の土用かな  英治
<連(天)>
理由なく好きな句です

<雛菊(地)>
鰻の匂いが満ちている横町。火と煙が充満。
横町のたたみかけがうまい。奥まった狭い商店街の路地裏に暑い夏が来た。

<半可(地)>
何気ない小さな物語が見えてくるような。

<葉子(人)>


<馬客(人)>
間借り人として、下町に8年ほど住みました。
表通りを曲がって、もうひとつ路地に入って。
夏の夜風も紆余曲折してしか入って来ませんでした。

いくさ絶えぬ世を眠りきて蓮かな  英治
<素蘭(天)>
大賀蓮として名高い古代蓮のロマン
東京大学検見川農場の弥生時代の地層で発見された
三粒の種のうちの一粒だけが二千年の夢から覚めたのだとか…

<治男(天)>
 古代蓮であろうか。種子で眠っていたものかも知れないが、
戦をぬけて、平和を祈るように蓮の花が開いた。作者の心が
現れているようだ。

<梅雪(天)>
発句として頂戴したい句ですね。古代蓮を詠んだともとれるし、また、蓮池の世間を超越した感じを象徴的に表現したともとれます。


・8点句

大空に腹なでさせて土用猫  潮音
<英治(人)>
いかにもぐったりと言った景。

<葉子(天)>


<明子(人)>
よく猫の暑いのは土用の三日間だけといわれますが、実際の猫は暑いのは苦手、長々と伸びた姿が目に浮かびます。

<雪女(人)>
気持ちいい極地

<梅雪(地)>
猫という題は江戸時代より俳諧好みとなりました。漱石の「猫」もその系譜。何となく俳諧作者の分身という趣あり。


・7点句

振り向けば虹の真下の馬籠宿  芳生
<松風子(天)>
くっきりと状景が見えてきます

<葉子(地)>


<双六(地)>
風景がぴたりと決まって美しい

小さき窓開けて下宿の土用干  わたなべはるを
<鞠(天)>
 窓の小ささが、屋根裏部屋を想像させますが、梅雨も明けた今日は、風も陽光も充分に入り、部屋中がよく乾くことでしょう。

<芳生(人)>


<松風子(地)>
生活の一端がうかがえる句です

<治男(人)>
 若い方か、或いは単身赴任の人か。こじんまりした部屋に
土用干し。衣服や書物が処狭しと干されている。
郷愁を覚える句である。.


・6点句

虹消えて茶飲み話にもどりけり  松風子
<郭公太(天)>
穏やかな一時。虹が静けさを生んだよう。

<鞠(人)>
 人々がお喋りを止めてじっと見入るほど美しい虹でした。

<佳音(地)>



・5点句

むつつりと串打つ男土用入  素蘭
<素人(天)>
さばいて、小骨を抜いて、串を打ってと準備に手間がかかります。黙々とこなす職人。そして、備長炭で焼き上げる。夏の風物詩ですね。8月4日、もう一度土曜丑の日が今年はある。食うぞ!

<馬客(地)>
「土用」の季語に、どうしても付き過ぎてしまう
「うなぎ」・「蒲焼」を使わずに、この両方を
示し、職人の額の汗まで読み手に想起させてしまう
お手並みに参りました。

還暦や遠近レンズに虹二つ  連
<雛菊(人)>
おめでとうございます。虹二つがいいですねえ。
ミクロにみたり俯瞰してみたり。

<半可(天)>
なるほど。面白いなあ。

<梅雪(人)>
これは還暦を迎える人でないと共感できないかも知れませんが、近眼のひとが老眼になると、こういうことを切実に感じます。虹二つに俳味あり。


・4点句

虹出たと校内放送谺して  潮音
<伊三(人)>


<馬客(天)>
「虹」には素敵な句が多くて迷いました。
この句の持つ詩情に惹かれました。

山雲のい行き烈しき蓮かな  芳生
<英治(地)>
格調の高さがある。

<明子(地)>
雲の動きを蓮はずっと見ているのでしょうか。大きな景色を感じました。

十日前会いし人逝き蓮ひらく  治男
<郭公太(地)>
こういった経験、歳を重ねるごとに増えてきたように思います。

<鞠(地)>
 十日前ではないものの、私も一ヶ月ほど前、長電話を交わした級友に突然逝かれ茫然としています。


・3点句

大泣きの子をあやしゐる土用かな  芳生
<双六(天)>
じっとしていても暑い。それなのに汗と涙にまみれて泣き喚く子供。あやしているお母さんも汗まみれ。太陽も子供もお母さんも生命力が溢れている。

昼の蓮きつちり閉じてしまいけり  雛菊
<佳音(天)>


ポトス伸びるふうらふうらと土用かな  雛菊
<ぽぽな(地)>
「土用」と「伸びる」。わたくしもこのカップリングでしたので、まっすぐ心に来ました。

<潮音(人)>
しゃきっと伸びたみずみずしいポトスの緑。土用の形容として「ふうらふうらと」は秀逸。両者の対比も絶妙。熱気がかげろうのように足元からのぼってくる土用の白昼の一齣。

みずみずしい感覚といえば「蓮」の兼題の「[58]蓮見する体はすでに海であり」も魅力的な作品であった。

千年の夢一瞬に蓮の花  梅雪
<柊(人)>


<伊三(地)>


陰膳を据えてうなぎを頬ばれり  連
<柊(天)>
故人に対する思いと、作者のしたたかな逞しさが、気持ち良く伝わってきました。

この星の未来は暗し梅雨嵐  梅雪
<れん(天)>
大いなる大地に確といながら,この星と詠む視点のスケール。梅雨嵐は自然かはた、そうでないか。梅雨の災害ばかりと言い切れぬ、宇宙からの地球をみてる、未来は暗し、この句をみました


・2点句

虹立つや母のをりますところまで  月雫
<治男(地)>
 老齢の母のいる住居まで、この虹が伸びて、母の笑顔を見たいものである。孝養の気持ちが出ている。

虹追えば遠く筑波のありにけり  馬客
<雪女(地)>
虹の先に筑波の峰が。筑波に特別の思いがあるのでつい。

虹を見る生徒怒りし眼かな  わたなべはるを
<潮音(地)>
中学生や高校生には真剣に生きようとしているあまり怒っている表情に見える生徒がいますね。阿修羅像の表情もそうなのかもしれません。

「[47]虹立つや母のをりますところまで」の母上への思いにも心をうたれました。

蓮池に失せぬ古代の香りかな  葉子
<柊(地)>


先逝くよ蓮の台で待ってるよ  素人
<素蘭(地)>
「この極楽トンボめ!」
と思いながらもつい笑っちゃうヒト、意外といそう…

雨音に祇園囃子や炎暑待つ  伊三
<芳生(地)>



・1点句

くぐるべき虹に向かひて列車発つ  英治
<連(人)>
「銀河鉄道の夜」と「オーバーザレインボー」がダブりました。ただ、ただ。

荒梅雨の義歯置き忘れ永平寺  治男
<半可(人)>
理由はないが、気分はよく分る。

窓の虹胸病む姉妹目をこらし  葉子
<れん(人)>
現代も胸を病む姉妹がいる、窓の虹に目をこらす、表現わかる気する、窓の虹と重なると、健康のない,窓から視る、この状況もつらくさびしい。わかる。

遠きもの引き寄せてゐる紅蓮  柊
<松風子(人)>
こんなからみつく蓮の姿を見かけます

蓮の葉や弁天堂の夕明り  松風子
<双六(人)>
「夕明り」がやさしく良い。今回は風景の「決まっている」句ばかり二句選んでしまいました。

カタカナの野菜購ふ土用かな  佳音
<ぽぽな(人)>
タンパク質の多くなるこの時期、野菜も摂りたいですね。キャベツにピーマンブロッコリ、、想像するのが楽しい句でした。

遠雷や相模は土用の海となる  半可
<素人(人)>
気持ちの良い大きな光景です。