第155回桃李12月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:社会鍋、冬林檎、寒稽古

兼題または当季雑詠

兼題T 社会鍋
兼題U 冬林檎 (惠さん出題)
兼題V 寒稽古 (春愁さん出題) 

12月15日(月) 投句開始
12月22日(月) 投句締切・翌日選句開始
12月29日(月) 選句締め切り
12月31日(水) 披講

投句: 芳生、素蘭、素人、鞠、恵、童奈、戯れ子、馬客、明子、佳音、ぽぽな、春愁、月雫、丹仙
選句: 佳音、童奈、芳生、素人、恵、鞠、ぽぽな、明子、戯れ子、馬客、丹仙、素蘭、月雫、英治、春愁

披講

・10点句

少年はジーンズで拭く冬林檎  素人
<鞠(人)>
 きっと少年自身が直に樹からもいだ林檎なのでしょう。

<明子(人)>
林檎の甘酸っぱさを感じます。

<馬客(天)>
少年の初々しさ、屈託の無さをさらりと詠んで抜群。

<素蘭(地)>
少年 ジーンズ 林檎
言葉の配合は抜群ですが
俳句ですから形に工夫が欲しい
例えば「ジーンズで林檎拭ふや冬少年」と
切字を使い冬を動かしてみてはいかがでしょう?

<月雫(天)>
少年の清々しさが見えます


・7点句

寒稽古窓が一枚開いてゐる  戯れ子
<ぽぽな(天)>
外からの景とも中からの景ともとれます。端正でいいです。

<素蘭(人)>
想像を逞しくさせてくれます

<春愁(天)>
開いた窓・・・が、寒稽古の厳しさをさらに強調できた

声出して自分励ます寒稽古  童奈
<芳生(人)>
厳寒のなか、声を出して己を励ます様子がよい。

<鞠(天)>
 武道が女学校の正課であった戦中の薙刀の寒稽古を思い出します。寒気を跳ね返す裂帛の気合が、今でも耳底に残っています。

<明子(天)>
声を出さずにはいられない厳しさ。これぞ寒稽古です。

喇叭吹く兵士老いたり社会鍋  素人
<芳生(地)>
社会鍋に携わる人の様子がよく出ています。

<月雫(地)>
子孫に引き継がれてゆく風習なのでしょうか?

<英治(天)>
西洋の童話の一場面のよう。


・5点句

飛びさうな異国の紙幣社会鍋  佳音
<童奈(地)>


<ぽぽな(人)>
この飛びそうな紙に右往左往すること。紙幣の価値、人間の性を思わされます。

<明子(地)>
救世軍と言う言葉には異国の気配がありますね。

はんなりとお気ばりやつしや寒稽古  素蘭
<丹仙(天)>
はんなりとした有様は京の舞妓さん、「お気ばりやつしや」は舞妓さんが、寒稽古をしている学生達に語りかけている構図でしょう。絵になる場面ですね。

<春愁(地)>
京ことばのやわらかさと、寒稽古の厳しさの対比が句に新鮮さを出した

ルージュ濃き女子下士官や社会鍋  馬客
<素人(地)>
女子下士官なればこそでしょうかね。老兵では躊躇しますね。寄付する側も。

<素蘭(天)>
兼題ながら
[40]:喇叭吹く兵士老いたり社会鍋
四十路のマッチングに天


・4点句

寒稽古ひと際高き声ひとつ  ぽぽな
<佳音(天)>
気合の入った声か。

<素人(人)>
小気味良く一本が決まったところですね。

父子三代一つ母校の寒稽古  鞠
<佳音(地)>
武道場のある母校でしょうか。

<馬客(人)>
我が家の現在は、まさにこの句のままです。
57年後輩の三代目は、弓道部の猛錬成中であります。

<英治(人)>
感慨もひとしおだろう。


・3点句

岩に置く緋色の眼鏡寒稽古  佳音
<童奈(天)>
「緋色」がきいている。

社会鍋好奇の眼もて見られをり  童奈
<恵(天)>
正直な観察に共鳴を。

冬晴や不意打ちのごと富士見えて  明子
<芳生(天)>
富士山から大分離れた地点でしょうか。「不意打ち」が効いています。

冬林檎笑ふ子らの歯美しき  童奈
<素人(天)>
丸ごとかじるには真っ白な丈夫な歯にかぎります。


・2点句

安達太良を仰ぐふるさと冬林檎  明子
<鞠(地)>
 高村光太郎の「智恵子抄」を誦み返しました。 

ありありて歌の零点社会鍋    素蘭
<丹仙(地)>
「歌の零点」という言葉に弾かれました。「ありありて」は「挙げ句の果てに」という漢字ですが、存在と無の対比が面白い。すべてが無に帰したところが歌が原点というこころか。

折り返すワンマン電車冬林檎  佳音
<ぽぽな(地)>
乗客の手には冬林檎。

齧りつく夢セザンヌの冬林檎  春愁
<英治(地)>
何か良い感じ。

寒ざらひ鏡に跳ねるトゥシューズ  春愁
<馬客(地)>
バレーは西欧の芸能ながら、日本人となればやはり
寒稽古にはげむのです、元気に。

子の手から父の献金社会鍋  鞠
<戯れ子(地)>
子の少し晴れがましいような顔が見えてほほえましい。

社会鍋声が自転車置場まで  戯れ子
<恵(地)>
臨場感に一票。


・1点句

明日は此の身に吹く風や社会鍋  丹仙
<戯れ子(人)>
今、百年に一度と言われている不況の世の中を良く捉えている。

己が息措いてゆきたる寒稽古  月雫
<佳音(人)>
白い息が雲のようです。

肩にある手の大きさよ冬ぬくし  明子
<童奈(人)>


さりげなく小銭投げ入る社会鍋  芳生
<春愁(人)>
さりげなく・・・社会鍋の本質をつかんだ

戦中の疎開先から冬林檎  鞠
<恵(人)>
今では想像もつかない戦中戦後の飢えの歴史の語り継ぎは重要です。

泣きじゃくる子に手持たせて冬りんご  馬客
<月雫(人)>
泣き止みましたか?

無重力の世界の重さ冬林檎  恵
<丹仙(人)>
無重力の「重さ」は、存在の限りなき軽さの象徴か。林檎は、ニュートン以来、重力の支配する「宇宙の象徴として、空間のひずみや、虫食いのような「穴」のイメージもある。その意味で、観念世界の広がりを感じさせてくれたので一票を投じた次第。