第156回桃李正月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:独楽、初湯、大統領(不言題)

兼題1 独楽
兼題2 初湯
兼題3 大統領(不言題)

1月15日(木) 投句開始
1月22日(木) 投句締切・翌日選句開始
1月29日(木) 選句締め切り
1月31日(土) 披講

投句: 素蘭、芳生、鞠、恵、英治、馬客、春愁、柊、素人、戯れ子、童奈、治男、明子、愛子、佳音、ぽぽな、丹仙
選句: 芳生、柊、ぽぽな、恵、童奈、素人、愛子、馬客、治男、佳音、戯れ子、明子、英治、素蘭、雛菊、丹仙

披講

・28点句

胎動を抱きしめながら初湯かな  鞠
<芳生(天)>
新しい生命と初湯。躍動感があります。

<柊(天)>
実感のある句だと思う。喜びも不安も感じられる。

<童奈(天)>
「胎動を抱きしめながら」に初湯らしさを感じました。

<愛子(天)>
「胎動を抱きしめながら」に惹かれました 新しき時代への期待と捉えました

<馬客(地)>
今年は特別な年になるのだ、と言う実感。

<治男(天)>
お腹に赤子いる。大事にしながら、お腹を抱えて、
初湯に入っている。立派な子供が生まれますように。
祈る気持ちが良く出ています。初湯が効いている。

<明子(天)>
よけいな言葉の要らない句ですね。希望を抱きしめての初湯、句を読む私たちも幸せを分けて頂いた気分になります。

<英治(天)>
男には詠めぬ句。「…抱きしめてゐる初湯かな」では。

<雛菊(地)>
丑年生まれの赤ちゃんになりますね。幸多かれと。
ほんわかしてゆったりしていい句。

<丹仙(天)>
新春の希望が、力強く表現された佳句ですね。


・13点句

定年の両腕浮かす初湯かな  英治
<恵(天)>
サラリーマンというより、技術者が主人公なのでは。長年仕事をして来た腕に感謝をこめたいたわりと誇りが感じられる。初湯は第二の人生の始まりをも示唆。

<馬客(天)>
「両腕浮かす」に、なんとも言えぬ開放感と若干の
寂しさ、が滲みでています。

<佳音(天)>
これまでおつかれさん、これからもよろしく、と。

<戯れ子(天)>
両腕を浮かす良くわかります。定年をしてその後の脱力感と安らぎ、実感のこもる句です。

<丹仙(人)>
定年の近づいた身としては、「両腕浮かす」という表現が面白い。


・6点句

初銭湯コーラの瓶のグラマラス  佳音
<ぽぽな(天)>
裸体のあふれる銭湯だけに、グラマラスが効いています。その目のつけどころと「肉感的」ではなくカタカナにしたセンスに三票。

<素蘭(天)>
コカ・コーラの瓶の姿形の醸し出す
サワヤカなお色気に天

べえごまを鋳込む老工初仕事  明子
<素人(天)>
伝統は、こんな人によって守られているのだという実感が伝わってきます。

<雛菊(天)>
老工というのですから生業としている人なのでしょう。
きりっとした仕事場が見える気がしました。


・4点句

校長が児らを指南の独楽回し  鞠
<童奈(地)>
そうですね。最近の子は独楽が回せません。

<治男(地)>
 現在の子供、中年は独楽回しを知らない。
年長の校長さんのお出ましである。
指南と如何にも校長らしさが出ている。
諧謔味がある。

初空へ翼成す児を肩車  愛子
<柊(地)>


<馬客(人)>
昔の子は「ぶ〜ん」と叫んでいたが、今の子は
なんとさけぶのでしょう。

<明子(人)>
とにもかくにも明るい気分になれたアメリカの人々がうらやましい!


・3点句

おつちやんの独楽が欲しいといはれけり  佳音
<戯れ子(地)>
昔は本気で子供と遊ぶ大人がいたような。

<雛菊(人)>
言われちゃいましたか。うれしいよね、おっちゃん。
よく回るのかしら、大きいのかな、あざやかな色の独楽かなと
想像あれこれ。

弟のぐずり出したる独楽廻し  童奈
<ぽぽな(人)>
光景が目に浮かびます。兄さんまたは姉さんに負けてばかりなのでしょう。

<明子(地)>
独楽遊びに入れない小さな男の子の気持ち、よくわかります。視点をちょっとはずして見えた光景です。

誰彼に告げたし冬の虹顕つと  明子
<芳生(人)>


<佳音(地)>
とてもよくわかります。


・2点句

女湯も初湯の客のあるらしき  馬客
<素人(地)>
静かな雰囲気の中に何かしら華やかな趣も漂っています。

傾く独楽されど地球は廻りをり  春愁
<恵(地)>
人間社会の些事を乗せて地球の回転は今この瞬間も続いている。
気宇の大きな句。

寒晴やホワイトハウス去る人も  佳音
<治男(人)>
 来るものあれば、去る者あり。色々問題はあったけれども、
 ブッシュ氏にもご苦労さんでしたと申したい。
 寒晴に救いがある。

<英治(人)>
大した実績も残せぬまま・・・。

くノ一のくは久の崩し国栖の笛  素蘭
<丹仙(地)>
なんでこれが、不言題の「大統領」を詠んだ句になるのか、ちょっと考えさせるところが面白い(笑)。国栖の舞の儀式が、米国の大統領の就任セレモニーと時期的に重なりました。「異人」が征服民族に同化し、国家の儀式で重要な役割を占めるようになった点は似ているかも知れませんね。しかし、「くノ一」とは誰のことでしょう? ともあれ、こういう言葉遊びと偶然性を楽しむ心が有ってこそ俳諧という気もします。

独楽まはる無限といふ静止  丹仙
<素蘭(地)>
独楽を地球に見立てのパラドックス
「回転する独楽は停止している」
「回転する地球は静止している」
よって件の解は〈freeze〉

子に送る荷物の中へ独楽三つ  治男
<ぽぽな(地)>
海外にお住まいのお子さん家族へでしょうか。

野末より色めく風や雪女  芳生
<英治(地)>
雰囲気がある。

初氷古鏡のごとき潦  柊
<芳生(地)>
中七が効いています。

路地裏に独楽に興ずる子らの声  素人
<愛子(地)>
幼き日の記憶にある一場面にワープしました


・1点句

期することつぎつぎ浮かぶ初湯かな  芳生
<愛子(人)>
初湯に浸りながらおもう事のひとつひとつを想像してみました

境内の一隅借りて独楽廻し  柊
<素人(人)>
昔は、お寺の境内が格好の独楽遊びの場所でもありました。

子らの輪に翁声張る喧嘩独楽  愛子
<柊(人)>


初湯してなかなか副詞みつからぬ  ぽぽな
<戯れ子(人)>
副詞という言葉だけで様々な想像が広がります。

冬深しオバマ劇場開幕す  童奈
<素蘭(人)>
角川俳句歳時記(第四版)によると
「冬深し」は
【しばれる】と【日脚伸ぶ】の間の季語で
妙に暗示的でした

湯豆腐やテレビに映る星条旗  戯れ子
<佳音(人)>
食い入るように眺めているのではなさそうなところが好きです。

惑星のどこかで独楽が立ち上がる  ぽぽな
<恵(人)>
ここまで気宇広大だと抽象的になるが、独楽は宇宙の動きを暗示しているようで、視点が爽快である。