第158回桃李3月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:紅梅、朧、春愁(不言題)

兼題または当季雑詠
兼題T 紅梅
兼題U 朧
兼題V 春愁(不言題)
3月15日(日) 投句開始
3月22日(日) 投句締切・翌日選句開始
3月29日(日) 選句締め切り
3月31日(火) 披講

投句: 芳生、悦子、春愁、柊、雛菊、素蘭、鞠、素人、丹仙、馬客、佳音、戯れ子、愛子、英治、治男、れん、月雫、明子
選句: 英治、柊、芳生、佳音、悦子、雛菊、れん、愛子、春愁、鞠、戯れ子、丹仙、明子、素蘭、馬客、素人、治男、月雫

披講

・12点句

江戸図会の街並やさし月朧  芳生
<柊(天)>


<悦子(天)>
朧の中に見る江戸の街並み時間を超えた心の旅を想像せていただきました

<雛菊(天)>


<月雫(天)>



・9点句

朧へと母の手ひいてをりにけり  月雫
<英治(地)>
行く先のはかなさ。姥捨て山にも通じる。

<丹仙(地)>
年をとるにつけて、すべては夢の如く朧になりますが、「母の手」にしつかりとした絆と現実感を感じます。

<素蘭(地)>
女教皇ヨハンナのような
青衣の女人のような
同行母堂
 

<素人(天)>
行く末の見へぬ世なればなほさらに老々介護不安募らす


・6点句

紅梅の紅に烟れる甲斐の国  芳生
<佳音(地)>
色鮮やかな句

<戯れ子(地)>
夕暮れ時でしょうか烟れるが美しい。

<明子(地)>
大きな景、そして懐かしい景。雪の残る山々の美しさも眼に浮かびます。

囚われの動かぬ淀み花筏  素人
<英治(天)>
「・・・流れもあへぬ紅葉なりけり」の景。

<れん(天)>



・5点句

紅梅の淡き影負ふ無縁塚  春愁
<英治(人)>
無縁坂がいかにもの感じ。

<柊(人)>


<芳生(天)>
淡き影が無縁塚と響き合っている。

春宵や小筥に終ふ思ひ事  愛子
<佳音(人)>
不言題なのに「愁」を使った句が多い中でつかわず春の愁ひだったので。

<丹仙(天)>
春愁の不言題、これが一番気に入りました。

<明子(人)>
取り出してはまたそっと胸にしまう。この季節になると湧いてくる思いです。

みな同じ影白梅も紅梅も  月雫
<雛菊(人)>


<春愁(天)>
紅梅も白梅も影は同じという、着眼点が抜群!

<戯れ子(人)>
そういえば同じ影です、気付かされました。

身のうちのすべて緩びて朧かな  明子
<れん(人)>


<春愁(人)>
暖かになると身も体もゆるゆる、気もおぼろ! 好きな句!

<素蘭(天)>
この気怠さは春愁に通うところ


・4点句

薬湯の匂ひたちたる朧かな  悦子
<明子(天)>
薬湯の匂いと水分を含んだ大気が、朧を皮膚感覚で感じさせてくれていると思います。

<月雫(人)>


紅梅のひと枝挿され見合の間  英治
<素人(人)>
もじもじと畳をなする白き指遠くに去りしころの思い出

<治男(天)>
「紅梅のひと枝」で、見合いの情熱と緊張感がある。
 見合いの結果は、一枝で、有無はなく成功一筋と
 読み取りました。

一幕見終へし銀座は朧にて  丹仙
<戯れ子(天)>
一幕を見終え帰り道まだ興奮や余韻が続いている、くしくも銀座に朧月。
朧が決まりました。

<馬客(人)>
言うまでも無く、歌舞伎座の一幕見。
芝居好きの熱気の一番籠る場所。
銀座まで歩いている内に見の内の火照りもさめる。

店を出て左右に別れる朧かな  馬客
<鞠(天)>
 店を出た途端に、さらっとさよならできるのは、後ろ髪を引かないほどの朧の濃さのせいでしょうか。

<治男(人)>
 男女二人であろうか、「朧」で二人の情感が出ている。


・3点句

あふみとはよしあるところ鐘朧  素蘭
<佳音(天)>
近江の湖水に鐘の音。朧の季語の似合う景色。

春愁やスーツケイスに残る疵  柊
<鞠(人)>
 春愁には旅愁に通う感傷があり……。

<馬客(地)>
去年のものか、遠い過去の旅でのものか、
ただぼんやりと目をやる。

濡文やくれなゐふかき梅一枝  素蘭
<愛子(天)>
濡文とくれなゐふかきに参りました
艶やかを上品に表現されていると思いました

春朧捨て舟に浜傾きて  春愁
<馬客(天)>
傾いているのは実は朽ち果てた舟なのだが・・・
もやっとした朧夜の雰囲気が如実に。

半生の拠点終刊弥生尽  鞠
<愛子(地)>
人生一回目の区切りでしょうか
十分に心足りての区切りかと思われますが
いざその時を迎えての気持が伝わりました

<素蘭(人)>
僭越ながら伊勢物語から一首
  
  散ればこそいとど桜はめでたけれ
   うき世になにか久しかるべき(詠み人知らず)


・2点句

円卓のくるくるまはる春愁  月雫
<悦子(地)>
季節感にとても合っていて面白い着想だと思いました

朧夜のモーツァルトに朧かな  戯れ子
<春愁(地)>
春うららの中でモーツァルトを聴く、α波がいっぱい!

風凪ぎてあがりし雨や島朧  春愁
<治男(地)>
 景が綺麗で、春の雰囲気が出ている。

甲冑のまなこ朧の向かうより  愛子
<柊(地)>


紅梅とおもふ月無き野道にて  佳音
<鞠(地)>
 白梅ならば夜目にも著く、香りもより濃いかと……。

紅梅の樹下に結べる靴の紐  柊
<れん(地)>


紅梅や雨含む雲動き出し  明子
<雛菊(地)>


紅梅やまどう心に晴れ兆す  治男
<芳生(地)>


文読めば故人ばかりや寒き春  芳生
<月雫(地)>


リラを恋ふ北国生まれの父なれば  明子
<素人(地)>
北国の遅き春をば待ち続けかつての青年今は白髪


・1点句

紅梅の咲くをためらう深き紅  馬客
<悦子(人)>
咲くをためらうが効いていると思います

紅梅や新派の女優ひよいと跳ぶ  戯れ子
<愛子(人)>
「あらっ、紅梅が咲き出したのね」と言う心の動きと
舞台の予期せぬ女優の動きに心が動いたのが同じように感じたのでしょうか
なにが如何してとは言えないが面白い句だと思いました

詩筵果て微吟の帰路の朧かな  鞠
<芳生(人)>


伯林の天使の泪染卵  素蘭
<丹仙(人)>
映画「ベルリン 天使の詩」に寄せた句として鑑賞しました。
これは、恋する天使が不死性を放棄して人間になるという物語。天使の見る世界はモノクローム。人となってみる世界は天然色。彩卵という復活祭の季語が良い。天使は不死ですが、却って「死ぬことのできる」人間を羨む存在なのかも知れませんね。