第161回桃李6月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:青梅、桜桃、父の日(不言題)

兼題または当季雑詠

兼題T 青梅
兼題U 桜桃
兼題V 父の日(不言題)

6月15日(月) 投句開始
6月22日(月) 投句締切・翌日選句開始
6月29日(月) 選句締め切り
6月30日(火) 披講

投句: 松風子、素蘭、素人、芳生、剛、鞠、馬客、ぽぽな、柊、月雫、ミヌ、童奈、英治、治男、明子、愛子、春愁、丹仙
選句: 松風子、英治、柊、芳生、鞠、童奈、ぽぽな、春愁、素人、素蘭、ミヌ、馬客、愛子、明子、月雫、治男

披講

・10点句

鈴なりの青梅ぎゅっと反抗期  ぽぽな
<英治(天)>
ぎゅっと型にはまってくれる子ばかりではない。

<春愁(天)>
成人になりかけの青少年を、成熟しかけの青梅へ投影させた。
ぎゅっと鈴なりの青梅と、反抗期との取り合わせが何とも言えない。

<愛子(天)>
枝にぎっしりと並んだ青梅 整理落下を逃れた子らはきっと反抗心旺盛なのでしょう 頼もしい事

<明子(人)>
まるまると太った梅の実、押しあいへしあいしている子供たちに重なります。


・8点句

薄暑光父の写真のうす埃  春愁
<松風子(地)>
父の日にあらためて眺める写真にはうっすらと埃がかぶりそれに薄暑光があっている。感慨のある句です。

<芳生(天)>
普段気にはしているが、埃のままの父の写真。それは己のことかと身につまされた。

<馬客(天)>
常日頃、公私多忙のこととて、ついつい亡父の写真に向き合う事もなく
過ぎている。反省と改めての追慕の句でありましょう。

万年筆に残る書き癖額の花  明子
<柊(人)>


<童奈(天)>
形見の万年筆を使うたびに思い出される父親のこと。額の花も濡れているか。

<ミヌ(地)>


<馬客(地)>
特に金ペンには書き癖が強く残ります。
額紫陽花がお好きだったのでしょうね。


・7点句

夕焼や娘の注いでくれる酒  素人
<柊(天)>
父の日の父親の至福の時

<春愁(人)>
父娘の情、対話、父の日の特別なサービスではなく、しあわせの時間。

<月雫(天)>
美味しそうなお酒ですね


・5点句

口元は幼となりてさくらんぼ  愛子
<春愁(地)>
なるほど・・・幼っぽくなるのですね。

<ミヌ(天)>


寄書の最後に妻も梅雨の晴  丹仙
<ぽぽな(人)>
ご退職か、はたまたご退院か。おそらく寄せ書き自体も奥様の粋な計らいでしょう。そんなこと微塵もにおわせなかった姿に感謝の心ひとしお。米国では本人に内緒でお祝い(パーティ)を企画し、驚かせる事をSurprise (party)といい、盛んに行われます。

<素蘭(地)>
季語の選択がう・ふ・ふ

<愛子(地)>
お幸せなひと時 年齢を重ねた落ちついた父の日を思い浮かべました


・4点句

一筆を添へて実梅の数知れず  春愁
<英治(地)>
毎年のことだろうが・・・。

<柊(地)>


弟のひと粒多いさくらんぼ  素人
<鞠(地)>
 私は一人っ子なので、こんな情景に憧れます。

<月雫(地)>
我慢我慢です

食卓に灯を点すごとさくらんぼ  明子
<松風子(天)>
さくらんぼが、あたかもぽっとついた灯りのように思えたという句。希少価値のさくらんぼならではの感覚の句です

<松風子(人)>
送られてきたさくらんぼに、送り主の一筆が添えてある、という心温まる句です。

純白の紙が指切る桜桃忌  ぽぽな
<ミヌ(人)>


<明子(天)>
切れるはずのないものなのに、スパッと切れてしまった。予想していない分、動揺が大きい。太宰の小説の読後感に通ずるような気がします。

寺子屋を見終へて外は五月闇  剛
<素蘭(天)>
「せまじきものは宮仕へ」の名文句が衝く五月闇
この四段目は文楽とみたい

<馬客(人)>
「寺子屋」は、今回の不言題「父の日」に応える題材としては、ちょっと
違うかな〜、とは思いましたが、封建時代を生きる親の哀切さと五月闇が
まことにマッチしているので、当季詠として、佳句と思いました。


・3点句

桜桃や過保護なる子を野に放ち  松風子
<英治(人)>
もうそろそろ世の風にあてねば。

<童奈(地)>


消毒す斎宮跡の梅の実も  明子
<ぽぽな(天)>
高貴な斎宮様の住居跡にある海の実だって消毒しなければならないのですよ。歴史的風景を取り込む技が決まり、ぴりっと皮肉の効いた俳味ある一句。

妻の手を逃れてひとつ実梅かな  英治
<治男(天)>
 奥方が梅の選別か、梅を漬ける作業をしているのでしょう。
 一個だけこぼれているのを、作者が見つけてのであろう。
 梅の特性、状況が良く観察できている。

妻逝きてより桜桃を購わず  馬客
<鞠(天)>
 奥様在りし頃も、さくらんぼを購うのは、きっと奥様だったのでしょう。
そういえば、我が家でも、夫は桜桃を買ったことがありません。美味しい
可愛いと言って、いくらでも食べるのですが……。

投了や小雨の伝ふ梅青し  鞠
<童奈(人)>


<ぽぽな(地)>
「投了」という終わり方には微妙な心理が響いているでしょう。そこに雨の青梅が沁みてきます。

息子らも父となりけり心太  童奈
<素人(天)>
まだ父に余裕がありそうです。でも、これから徐々に子が父をおいぬいてゆくのでしょう。

ワトソンの二重螺旋や夏鏡  素蘭
<素人(人)>
不言題とは言え、父の日で二重螺旋を持ち出したことに驚きと感嘆です。
潔く一票を投じます。

<明子(地)>
DNAのなせる技でしょうか。鏡を覗き込む度にますます似てきたようです。


・2点句

青梅の浮きたる瓶を暗所へと  月雫
<治男(地)>
 梅酒か、梅シロップを作ったのでしょう。
 「 暗所 」へそっと移しながら、「浮きたる」
 青梅を見ながら、出来具合の期待が、読み取れる。

青梅の廃虚に零る夕べかな  松風子
<素人(地)>
静かな、そして、もの悲しい雰囲気が漂います。青梅の持つ一面でもあります。

ぐだぐだと生きるもまたよし桜桃忌  ミヌ
<芳生(地)>


実梅もぐ一天の碧手繰り寄せ  芳生
<月雫(人)>
手繰り寄せが良いですね

<治男(人)>
 「一天の碧手繰り寄せ」、紺碧の空から梅の枝を
 手繰り寄せ、梅を収穫している様子が、上手く
 表現できている。


・1点句

父はもうここにはいない昼寝覚  ぽぽな
<鞠(人)>
 朝の目覚めとは違って、昼寝覚には、どこか虚しさ寂しさが……。

弁当を開けて笑顔やさくらんぼ  柊
<素蘭(人)>
弁当の彩りに欲しい赤のアイテム
さくらんぼを見て思わずにっこり
さくらんぼも笑いかけているよう

両手挙ぐ嬰の拳やさくらんぼ  春愁
<芳生(人)>
成長する嬰の両手は珠玉のようなさくらんぼそのものです。

山よりも高しの教え日雷  馬客
<愛子(人)>
昔の父親の言葉は重みがありましたね