第167回桃李12月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:聖夜、冴ゆ、ボーナス(不言題)

兼題または当季雑詠

兼題T 聖夜
兼題U 冴ゆ
兼題V ボーナス(不言題)

12月15日(水) 投句開始
12月22日(水) 投句締切・翌日選句開始
12月29日(水) 選句締め切り
12月31日(金) 披講

投句: 松風子、素蘭、春愁、鞠、芳生、馬客、童奈、愛子、英治、治男、康、素人、丹仙
選句: 松風子、鞠、芳生、英治、春愁、童奈、愛子、素蘭、馬客、治男、康、丹仙

披講

・8点句

生も死も神のはからひ月冴ゆる  春愁
<松風子(天)>
季語とフレーズが照応しています

<芳生(地)>
通夜の席での感懐でしょうか。よくわかります。

<英治(人)>
納得だ。

<愛子(地)>


月冴えて萩の城下の鍵曲  芳生
<鞠(地)>
 城を守るために、高い土塀と行止りめく鍵曲りの路地を巡らせた城下町、
「かいまがり」という言葉を初めて知りました。

<春愁(人)>
月光は一隅をも、あまねく照らしてる。

<童奈(人)>


<馬客(人)>
歴史ある城下町の、城近くの景には共通の情趣がありましょう。

<丹仙(天)>
これは「鍵曲」が冴えていますね。城下町の有様を彷彿とさせます。

一太刀の山襞深く冴えにけり  愛子
<素蘭(天)>
まばゆい銀嶺のところどころに
大刀で抉りとったような山襞の暗がり
その懐に抱かれての暮らしも…

<馬客(天)>
一読豪快、作者自身も満身に月光を浴びている。

<丹仙(地)>
主人公は鞍馬山の天狗か、義経か、一太刀のアップから始まり、山襞深くまでズーム・アウトしていく映画の一シーンのようですね。なにか物語りのようなものを感じました。

マネキンの外を見てゐる聖夜かな  松風子
<英治(天)>
いかにも聖夜の風情。

<童奈(地)>


<康(天)>
聖夜の雑踏をながめているマネキンの孤独な瞳を想いうかべます。


・5点句

月に攀ぢよ樹は素裸の地に冴ゆる  丹仙
<愛子(天)>


<素蘭(地)>
シベリウスの交響曲が聞こえてくるようです

ハーモニカ音探りつつ聖夜の賦  馬客
<治男(天)>
 聖夜の音楽をハーモニカで、探り探り吹奏している
 楽しさが浮かぶ。ハーモニカで子供に返り、クリスマスの
 メロデイの懐かしさが表出ている。

<康(地)>
ハモニカで奏でるサイレントナイト・ホーリーナイト・・・小沢昭一的聖夜ですな。


・4点句

配達夫走る聖夜の灯に濡れて  康
<鞠(天)>
 宅配便の細やかなサービスは本当に便利ですが、核家族の昨今は昼間不在の家が多く、再度の配達は午後十時頃まで続き、配達員はご苦労なことと思います。「灯に濡れて」の措辞が胸にしみます。

<丹仙(人)>
現代の配達夫(宅急便でしょうか)がサンタクロースに見えてきました。

無医村に鐘の音の冴えわたるのみ  馬客
<英治(地)>
寂しさのきわみ。

<治男(地)>
 過疎地の寺の鐘の音でしょうか。高齢者、病弱者達には
 無情の音に聞こえるのでしょう。季語が良く効いている


・3点句

借方と貸方合はす年の暮  愛子
<童奈(天)>


地震に覚め未明の星の冴え冴えと  鞠
<芳生(天)>
実感があります。

貰ひしも貰はざりしも忘年会  英治
<春愁(天)>
たとえ格差の時代でも、これで年を納めねば・・・


・2点句

冴ゆる灯をつきぬけて来し宅急便  康
<馬客(地)>
私も朝の新聞配達をまって、この景を知っている。

兎角して無となりにけり歳の暮  丹仙
<春愁(地)>
無は無でも、虚無、無常ということ・・・

海牙密使事件百年鐘冴ゆる  素蘭
<鞠(人)>
 明治政府の朝鮮半島への干渉から、やがて日韓併合、更に満州へ中国本土
へと、際限なく戦禍を拡げていったその発端の事件でした。

<愛子(人)>


仏徒にも光たまはる聖夜かな  英治
<松風子(地)>
聖夜の温かさが伝わります


・1点句

寒風や懐薄き外回り  童奈
<素蘭(人)>
週三回バイクで集金と両替にきてくれる某信用金庫の外回りさん
寒風もボーナスに響くノルマも本当にきつそう

社会鍋いささか頒けるわが所得  馬客
<治男(人)>
 オウバーなところが、諧謔味があり面白い。
 社会鍋に協力する、心意気が尊い。

シャンパンの泡の行方やクリスマス  素人
<松風子(人)>
シャンパンの泡にも似たクリスマスの感じがあらわれています

聖夜更く留学生の手料理に  鞠
<康(人)>
留学生のお国自慢の味に話が弾みますね。

電飾の街のゆらぎも聖夜かな  春愁
<芳生(人)>
電飾のため、街が揺らいでいると捉えたのがよい。