第169回桃李2月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:冴返る、梅、冬季五輪(不言題)

兼題または当季雑詠

兼題 T 冴返る
兼題 U 梅
兼題 V 冬季五輪(不言題)

2月15日(月) 投句開始
2月22日(月) 投句締切・翌日選句開始
3月 1日(月) 選句締め切り
3月 2日(水) 披講

投句: 素人、春愁、馬客、松風子、鞠、素蘭、康、英治、芳生、治男、柊、明子、愛子、丹仙
選句: 春愁、英治、芳生、鞠、柊、素人、愛子、松風子、馬客、康、素蘭、丹仙

披講

・10点句

見上ぐれば昼の月あり梅真白  明子
<鞠(人)>
  白梅越しの青空を渡る、透けるような淡い昼の月。早春の閑かな風情が
 好ましい。

<素人(人)>
今がまさしくその時期です。上弦の月。

<松風子(天)>
昼の月と梅真白とが響きあっています

<康(天)>
白梅と、はるかな空の淡い月。浅春の,
墨絵のような景色です。

<素蘭(地)>
昼に見る月に「梅真白」の措辞が俳諧的です


・7点句

乾坤一擲氷上を石滑り  明子
<春愁(地)>
のるかそるか、ここが勝負だが・・・

<柊(地)>


<愛子(天)>
「乾坤一擲」に参りました これぞ「不言題句」と感心しました


・5点句

勤行に女声あり冴え返る  松風子
<英治(人)>
雰囲気がある。

<芳生(人)>


<馬客(天)>
僧達の野太い読誦のなかに女声が際立つ。
懸命の祈りと冷え切った堂内。見事な出来。

縄文の土偶の眼冴返る  柊
<英治(地)>
いかにも「冴返る」の感じ。

<芳生(天)>


小庵に独り内観冴返る  鞠
<春愁(天)>
心の内を省みれば・・・

<丹仙(地)>
内観とは、自己に立ち返ること。それが外なる世界の冴え返りと符合して、研ぎ澄まされた雰囲気を良く伝えています。


・4点句

尼寺の開け放たれて梅の花  愛子
<松風子(地)>
やわらかな梅の季節の感じがあらわれています

<康(地)>
小さな寺の部屋部屋に、微かにただよう梅の香,
凛とした空気を感じます。

腕に抱く仔犬のふぐり冴返る  春愁
<馬客(地)>
抱くなら胸の方が良かったかな、とも思いますが、なににもせよ
作者の優しさは充分に伝わってきます。

<康(人)>
仔犬の、いのちの、温かさ。

<丹仙(人)>
仔犬を抱く暖かさ、そのちいさきものを包む外気の冷たさをうまく対比しています。

ふふむ梅母系に享けし八重歯かな  春愁
<英治(天)>
梅の花と可愛い八重歯の取り合わせが良い。

<愛子(人)>



・3点句

産土神へお宮参りの梅日和  鞠
<柊(天)>


梅の華開けば世界起ちにけり  丹仙
<素蘭(天)>
学問の庭に綻ぶ好文木
華は紅梅

冴返る神倉や宴粛粛と  素蘭
<丹仙(天)>
冴え返る神倉で、これは熊野の神倉神社のお燈まつりでしょう。
勇壮な火祭りのおこなわれるまえの時間をとえあえたものか。
冴え返る山の冷気のなかで、神々の宴がこれからはじまるところ。

冴返る吾より若き人の逝き  明子
<鞠(天)>
  長寿はお目出度いことながら、長生きしている本人にとっては、長いと
 いう感慨はすくない。そして家族・友人・知己など縁ある人々、とりわけ 自分より年少者が共に長命でなければ、逆縁の憂き目をみるのが辛い。

スケートの紐の切れたる涙かな  英治
<素人(天)>
エピーソードを書きとめた句として残ります。
演技者としては注意不足を咎められるでしょうね。


・2点句

職去りて十年余りや鉢の梅  馬客
<愛子(地)>
緩やかに穏やかに過ごされている様子が伝わってきます

転筆の彫り深くして冴返る  愛子
<芳生(地)>


氷上にストーン意思のある如し  康
<素人(地)>
言うことを聞いてくれないなあの嘆きの声が聞こえるようでした。

迷ひ来て思ひもかけぬ梅見かな  松風子
<鞠(地)>
  里山の辺りを散策していると、突然満開の野梅に出会い目を見張ること がある。梅は櫻のような派手な自己主張は無いけれども、馥郁と香り開花 の期間も長く、心を浄めてくれる。


・1点句

逆光の梅花の雄蕊影つくる  治男
<馬客(人)>
雄大な句も好きですが、この様な繊細な観察句も素敵です。

賽銭の転がる音や冴返る  康
<春愁(人)>
仕合わせを願えど・・・

亡者今耳順の齢梅二月  素蘭
<松風子(人)>
今また梅の咲く季節になって、ふと思い出す故人の齢を数えるという感慨が出ています

薬師寺の長き回廊冴返る  芳生
<素蘭(人)>
おおしまシルクロードの終着点だった奈良の
薬師寺の回廊で季語の「冴返る」を体感した
そのワケにせんとくんの角二本がよくダブり………

スキー飛行ブッセの空のあなたまで  春愁
<柊(人)>