第175回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:蝉、帰省、終戦日(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題1 蝉
兼題2 帰省
兼題3 終戦日(不言題)

8月15日(日) 投句開始
8月22日(日) 投句締切・翌日選句開始
8月29日(日) 選句締め切り
8月31日(火) 披講

投句: 芳生、ぽぽな、鞠、素人、白馬、素蘭、柊、康、春愁、英治、馬客、愛子、丹仙
選句: 芳生、鞠、英治、柊、素蘭、愛子、春愁、康、馬客、丹仙

披講

・9点句

空蝉の風を見ているかたちかな  ぽぽな
<愛子(地)>
眼差しのその先にあるものは何だったのでしょうね
受け入れる気持ちと切なさを感じる句でした

<春愁(人)>
空と風の文字から来る、空虚感と広がりがある

<康(天)>
空蝉の眼はたしかに風を見ていますね。泥のかけらのついた眼を思います。
10の句も捨てがたいです。

<馬客(人)>
そうか、あれは風をみていたのか!。

<丹仙(地)>
鳴く蝉を読まず、「風を見ている」形をした空蝉を詠んだ俳諧のセンスと詩情に惹かれました。


・8点句

校庭はただ蝉の鳴く真昼かな  馬客
<鞠(人)>
  眠気の催す午後の授業、集中力を取り戻そうと視線をそらせてみても、 陽光をはね返す校庭は眩しく、ただ蝉声がしみ入るばかり……。

<英治(天)>
酷暑の学校の真昼間の景だ。

<柊(人)>


<素蘭(天)>
かの日の校庭を彷彿させる蝉の声
佳い句です


・6点句

大いなる山出迎ふる帰省かな  芳生
<柊(地)>
故郷に山や川を持っている事は幸せです。

<馬客(天)>
それが日本アルプスであろうが「丘」ほどの小山であろうが、
帰省子にとっては、「ありがたき」故郷の山なのです。

<丹仙(人)>
帰省子をつつむ大地の包容性を感じさせる句の悠然とした感触が良いですね。


・5点句

はらからに同じ抜け道盆帰省  愛子
<鞠(天)>
  離郷してあちこちに暮らす兄弟姉妹も、盆休みには続々と実家に帰り、 老親への孝養や墓参を果たす。余所者の知らない抜け道・近道を通れる  のは、やっぱりみんなこの土地育ちだから……。

<素蘭(地)>
往年のやんちゃ振りが…


・4点句

明日といふ日の有る不思議 蝉時雨  丹仙
<英治(地)>
敗戦の脱力感。

<馬客(地)>
敗戦の日「これで我々に明日の命がある」と痛切に感じた
当時の若人、21世紀の8月15日、後期高齢者は何を
感じているのか。

帰省子はしばらく空の匂いせり  ぽぽな
<春愁(地)>
飛行機で帰ったのかな、解釈が単純かな

<康(地)>
しばらく、はいろいろに解釈できます。そこがこの句の奥行きでしょうか?


・3点句

葦原の醜の醜手や捨団扇  素蘭
<丹仙(天)>
「終戦日」の不言題として面白い。「醜の御楯」で君を守る愛国歌を背景としつつ、「御楯」を「捨て団扇」と言い捨てた価値の転換が鮮烈です。

夾竹桃戦後年とは吾が馬齢  康
<愛子(天)>
炎暑の頃が一番花が盛んと聞く夾竹桃 
強い生命力で根を張り世の移り変わりを見続けているのでしょう

敗戦の回顧と飽食八月尽  鞠
<芳生(地)>
戦後65年、飽食の時代となりました。8月を捉えた句だと思います。

<愛子(人)>
戒めを感じる句でした

八月の父が静かに語りだす  ぽぽな
<柊(天)>
今になってやっと当時の事を話せるようになったのですね。

遥かなる疎開地「帰省」してみたき  馬客
<芳生(天)>
疎開地を第二の故郷とし、時に帰省する人もいます。

我が家にはラジオも無くて蝉しぐれ  馬客
<春愁(天)>
あの日は今年のようなカンカン照りの、蝉の多く啼いていた記憶があります


・2点句

帰省子の独身ばかり過疎の村  素蘭
<鞠(地)>
  過疎の故郷に残っている青年、とりわけ男性の嫁取りはなかなか難しい
 けれど、他国に暮らす帰省子もまた独り者が多い。


・1点句

浦上の聖母と黙す十五日  丹仙
<素蘭(人)>
ひとり・ひとりの・終戦日

唖蝉や脹るる思ひ秘めしまま  春愁
<康(人)>


天を向く蝉の骸を跨ぎ来し  柊
<芳生(人)>


山峡を割りて新道蝉時雨  愛子
<英治(人)>
ダム工事でも始まるのか。