第178回桃李11月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:冬の月、外套、ノーベル賞(不言題)

題詠または当季雑詠 

兼題1 冬の月
兼題2 外套
兼題3 (不言題)ノーベル賞

11月15日(月) 投句開始
11月22日(月) 投句締切・翌日選句開始
11月29日(月) 選句締め切り
11月30日(火) 披講

投句: 白馬、素蘭、松風子、芳生、康、水、鞠、愛子、雛菊、あや、ぽぽな、丹仙、英治、素人、春愁、明子
選句: 芳生、英治、松風子、あや、水、鞠、春愁、ぽぽな、愛子、康、明子、素蘭、素人、白馬、丹仙

披講

・18点句

無住寺となりし魚鼓の目冬の月  愛子
<芳生(天)>
魚鼓の目が冬月を見詰めているような。

<英治(地)>
朽ちた魚板を照らす月光。

<水(人)>
不況の余波かな。

<春愁(天)>
魚の目のかがやきにより寒さを感じる

<明子(天)>
冴え冴えとした月光が見せてくれた景色。

<白馬(天)>
魚鼓の目が効いていますね。

<丹仙(天)>
配合の妙、其角の冬の月の句のような凄絶な印象あり。


・12点句

ハイヒールの音は銀色冬の月  ぽぽな
<芳生(人)>
ハイヒールの音を銀色と断じたところがよいです。

<英治(天)>
メルヘンの香り。

<康(人)>


<素蘭(天)>
ハイヒールの音に悩殺されました

<素人(地)>
好きな句です。

<丹仙(地)>
「音は銀色」に、作者の感性の冴えを感じる。


・11点句

外套のならぶ背中やコップ酒  春愁
<あや(地)>
コップ酒を飲んでいる人々のつかの間、一人一人の人生や生活までが背中に滲んでいるような……

<水(天)>
酒屋での立飲み(角打ち);昭和30年代に、博多でなじんだ(実行)、なつかしい風景です。枡酒やコップ酒。
道路から見えるのは、外套の陳列。

<鞠(天)>
戦後まもなく社会人になりたての頃の通勤駅ガード下、勤め帰りに寄った屋台が懐かしい。

<素蘭(人)>
駆けつけ一杯、二杯、…
ご帰還はお早めに

<白馬(地)>
屋台の風景。嬉しいような淋しいような後姿。


・6点句

外套を着れば遥かな父そこに  芳生
<松風子(天)>
外套にまつわる思い出はいろいろあるが、なかでも父の匂いの残る外套はせつなくも懐かしいものの一つです。

<春愁(人)>
厚手の父のオーバーの手触り感

<ぽぽな(地)>
お父様の形見の外套と見ました。外套を着て鏡を見るとまるで父の様な自分が。


・5点句

外套を脱いでバレリーナとなりぬ  ぽぽな
<英治(人)>
スマートな体躯がつと現れる。

<あや(人)>
伸びやかに変身!というところが、とても素敵

<明子(地)>
舞台の袖でしょうか。闇から光への変化が劇的です。

<丹仙(人)>
詠み手は、外套を脱いだその人なのか、それともそういうバレリーナへの変身を目撃した人なのか、どちらともとれますが、どちらにとっても面白い。

職なくば外套のただ吊るさるる  英治
<芳生(地)>
寒々とした景が伝わってきます。

<松風子(人)>
外套を通して現役の頃がしのばれる句

<康(地)>



・4点句

国境を越えて木枯色を得る  ぽぽな
<鞠(地)>
不言題の作句の難しさを、木枯らしに託し得ている。

<春愁(地)>
国によって、国情によって評価は異なる

不確実なればこそ見る冬の月  丹仙
<愛子(地)>
心持が分かります

<素蘭(地)>
世俗の対極にあるかのような思弁ですが
太陽と地球と月の関係さながら
表層の変動に疲れて月を眺めているのかも…


・3点句

月山を白く照らして冬の月  素人
<愛子(天)>
冬の月と月山神社の景が浮かびます
冬の月の鋭い様相と月山の引き合わせが絶妙

少年の大志揺るぎぬ寒昴  愛子
<あや(天)>
大志、寒昴、といった壮大で荘厳の響きをもつ言葉たちが、ノーベル賞という偉大な賞と見事にマッチしていると思いました。

受賞者の酔ひ北欧の星冴ゆる  英治
<ぽぽな(天)>
「の」は「は」のほうが良いかなと思いましたが、ノーベル賞句の中で報告に終わらず、果てしない人の叡智への希望が感じられました。

人心を封じて寒し国の策  白馬
<素人(天)>
全くその通りだとおもいます。

冬の月遠い希望のようで好き  あや
<康(天)>



・2点句

外套の半券二枚問はぬまま  愛子
<水(地)>
半券は、若かりし頃の夫婦の思い出なのか、それとも不倫相手との二枚なのか、ドラマの展開をいろいろ想定して楽しめます。問はぬまま、が賢明。

通夜帰り後ろ髪引く冬の月  鞠
<松風子(地)>
冬の月は見る者によってさまざまに感じられる。後ろ髪を引く月というのもあるのだろう。冬の月が心の内に差し込む例証。


・1点句

国つ神流竄の島や冬の月  素蘭
<愛子(人)>
諸説ある中 今日はこの説に耳を傾けたい気分

託されし唐土の民意鷹渡る  春愁
<明子(人)>
人の思いを閉じ込めておくことは出来ないと強く思います。

冬ざれや平和賞蹴る独裁者  鞠
<素人(人)>
金さんほどじゃないのでしょうが独裁党ではありますね。

夜の海の波音ばかり冬の月  松風子
<ぽぽな(人)>
言葉の重なりはすこし気になりますが、この情景は大好きです。

龍馬もまた触媒なりし今朝の冬  康
<白馬(人)>
龍馬を触媒ととらえた。作者は理系でしょうね。

わが探し物の行方ぞ冬の月  英治
<鞠(人)>
自身の認知症を疑う程の捜し物を、毎夜冬の月に見られている。