第18回句会桃李(1999年3月)披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:梅、朧、嫉妬(不言題)

3月定例句会のご案内
春の句(雑詠)または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)は「梅」または「朧」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、
「嫉妬」です。

3月15日(月)投句受付開始
3月22日(月)投句締切、選句開始
3月29日(月)選句締切、披講

投句: 葉子、涙笑、木菟、香世、重陽、ひとし、雲外、悠久子
選句: 香世、葉子、雲外、涙笑、松、木菟、重陽、やんま

披講

・8点句

朧夜やこつこつ固き靴の音  葉子
<雲外(人)>
湿った艶めかしいような夜の気配に配するに、硬い足早な靴音のリズム。

夕餉の支度を整えて待つ愛妻のもとへ(?)

「妻抱かな…」を想起させますネ。

<木菟(地)>
朧夜といえば、靴音とは無縁な古来の日本情緒を連想しますが、現代はたしかに
こんなミステリ−仕立ての世界がより身近に感じられます。

<重陽(天)>
こんな夜は、靴音にふと自分の存在を強く感ずる瞬間がある。

<やんま(地)>
今日、辞表を叩き付けた漢(おとこ)がいる。
上野は花の朧のなかに染み込む様に消えていった。

ぽつぽつと誘い会うごと梅開く  香世
<葉子(地)>
花のつぼみの開花するさまを的確にとらえている。

<雲外(天)>
確かに咲き初める頃の梅はしおらしく控えめで、我先にと一斉に咲き誇る櫻とは

風情が異なりますネ。観察、発見、写生という俳人としての姿勢の確かさ。

お見事ですネ。

<松(天)>
お見事!写実に勝るものか他にあろうか。目の前で膨らみ、花開く桜をみておもう。かくして時は移ろい、人生はすぎていく。


・6点句

探梅の 声の過ぎゆく 茶店かな  雲外
<香世(天)>
山に咲く梅の美しさに堪能して、はしゃぐ声が聞こえる。
それを、やはり同じ思いをした作者が見ている。一服。

<涙笑(人)>
春です(^。^)y-゚゚゚

<重陽(地)>
情景が、人の賑わい、梅、茶店、小道まで、まざまざ浮かんでくる。


・5点句

薄墨の 夜の紅梅 月朧  雲外
<涙笑(地)>
光景がとても美しいです。(^,^)

<松(地)>
言葉だけの世界、これもまた良し。薄汚れたごくありふれた都会しかないもんね。

<木菟(人)>
 つきすぎている感じもしますが、これはこれで大変美しい光景だと思います。


・4点句

鎌倉やこぶし華やぐ小谷かな  重陽
<葉子(人)>
辛夷が咲き始めると、その上の空の青さが目にしみる。ふだんはひっそりとしている小谷に、白い花がさかりになり、俄に景色の表情が変わったさまがよく出ている。

<やんま(天)>
「辿り来て辛夷が里に身を納む」
鎌倉といへば、その人重陽なり。

朗らかに心に宿す炎かな  涙笑
<松(人)>
生きている証とは思えど、ほどほどにと友人としては思う。

<木菟(天)>
嫉妬という屈折した情感が、上五、下五のコントラストによく捉えられていると
思います。


・3点句

退職の宴果てけり夜の梅  ひとし
<雲外(地)>
後輩達に賑やかに祝われて、ひとり帰路につく。数十年の会社勤めも残すは数日。

夜の闇にひっそりと咲く梅が、そこはかとない寂寥を誘う。

実体験がないと詠めない句ですネ。

<やんま(人)>
なんと幸せな身の引きかただろう。
全て済んだ。後はただ春の風に乗って
梅の香が漂ひ運ばれてくるのみ。

書を置きて外に出でこよと梅さそひ  葉子
<香世(地)>
梅ももちろんですが、春暖かな日には、読書は落ちつきません。
体内のホルモンが呼ぶのでしょうか。

<重陽(人)>
春はこんな気分ですね。共感を覚えます。

梅が香やおんなと称びしことのあり  木菟
<葉子(天)>
年寄りにはちときついおことば。

ギャルのごと淑女ふるまう花のもと  木菟
<涙笑(天)>
よきかなよきかな(^。^)y-゚゚゚


・1点句

酔蝦を舌に載せたり春の夜  ひとし
<香世(人)>
酔蝦、って言葉あるのですか?
舌に載せたり、で、もうなにか美味しそう。
はしたないですが、思わず唾をのみこみました。