第180回桃李正月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:福寿草、手毬、寒(不言題)

題詠または当季雑詠 

兼題T 福寿草
兼題U 手毬
兼題V 寒(不言題)

1月15日(土) 投句開始
1月22日(土) 投句締切・翌日選句開始
1月29日(土) 選句締め切り
1月31日(月) 披講

投句: 松風子、白馬、春愁、芳生、素蘭、馬客、鞠、英治、愛子、治男、柊、素馨、丹仙、あや
選句: 鞠、柊、芳生、英治、春愁、素馨、あや、素蘭、愛子、馬客、治男、白馬、丹仙

披講

・9点句

捨て臼の罅拡げては氷張る  芳生
<鞠(天)>
自家で餅を搗くことが殆ど無くなってしまった昨今、捨て臼の罅を日々拡げる氷の様が、なんとも寒々しい。

<あや(人)>
しみじみひたひたと迫る寒

<愛子(天)>
代々受けつがれてきた臼が放置されている光景だけでも寒々しい
放置された年月が罅の深さだろうか・・

<丹仙(地)>
「寒」の不言題、「写生」の句として秀逸です。


・8点句

少女らの夢語りあふ白き息  松風子
<芳生(天)>
青春の「夢語り合ふ」が白息と効果的に結びついています。

<素蘭(地)>
まだ白紙に近い十代の息吹がとても新鮮

<馬客(天)>
「寒」の出題に対しぬくもりのある回答。


・5点句

甲斐駒に日の射しそめし福寿草  芳生
<柊(人)>
甲斐駒の雄大な姿と福寿草の可憐な姿が対照的でよいと思いました、

<馬客(人)>
新年の句にふさわしい大きく神々しい一作。

<丹仙(天)>
五七五の短詩の中に、マクロコスモスとミクロコスモス、崇高なるものと美しきものの対比を鮮やかに表現した句と思いました。

車椅子下りて手毬をかがる夜  鞠
<英治(地)>
情感がある。

<白馬(天)>
老いたる祖母、孫のためにか。それとも若かりし昔を偲んでか。

筒井筒妻老いにけり手毬唄  馬客
<春愁(人)>


<素蘭(天)>
筒井筒の妻に喚起されるさまざまな幻想
共有財産としてある古典の恩寵に天

<愛子(人)>
深い情愛を感じます

手毬つく遥かな母を呼び寄せて  芳生
<柊(天)>
手鞠をつくことのほとんどない現在、思い出すのは毋の時代のこと、上手に詠まれたと思います。

<素馨(地)>
子どもの頃、母親から教わった毬つき。すでにあの世に行っている母親が、遠くから戻って来そうな気がする。そんな母と娘の絆が、感じられる句だと思います。


・4点句

かじかみて猫背の鴉ならびけり  英治
<素馨(天)>
実際にはこういう鴉がいるかどうか知りませんが、「猫背の鴉」という表現が、大変ユニークでユーモアがあると思いました。寒さがよく表れていると思います。

<白馬(人)>
鴉も猫背になるんだ。面白い発見。

心友の柩を目守り霜夜更く  鞠
<芳生(地)>
「守り」のなかに「見守る」の意味があるので、「目」はいらないのではないかと思いますが。

<愛子(地)>
歳を重ねてきて本当に大切なものを奪われる事は心凍りつくほどの恐怖にかられます


・3点句

あしたある事の幸せ福寿草  愛子
<素蘭(人)>
日常の生活態度の集積の賜物でしょう
お幸せに

<治男(地)>
 福寿草がよく効いている。
 高齢化すれば、毎日毎日に生きる歓びと、
 希望を持って生きたいものである。

北風にいよよ膨らむ鳩の胸  愛子
<治男(天)>
 実景をよく観察している。
 寒さにもめげず、希望に胸膨らませる
 人(作者)の様にも思える。

黄檗とは福禄の色福寿草  素蘭
<春愁(天)>


手毬持ち遊び相手の無い子供  白馬
<鞠(人)>
遊び相手が無いどころか、もう何年も手毬をつく子供を見かけていない。

<あや(地)>
大人は忘れかけてる子どもの世界があり……

腹這ひになりて撮りけり福寿草  丹仙
<鞠(地)>
寒中見舞用に福寿草を撮ろうと、福寿草の目線に合わせてカメラ・アングルを
どんどん低くしていったら、遂に腹這う羽目になった。

<素馨(人)>
趣味でカメラを愛好している作者なのでしょう。福寿草は地面に低く群生しているので、レンズを近づけると、こういう姿勢になるのでしょう。カメラと福寿草と、二つの物に集中して、冬の地面の冷たさも忘れてしまう。そんな感じがよく出ているとおもいます。

灯ともせば独りの部屋のなお凍てて  馬客
<英治(天)>
単身赴任の実感がこもっている。

福寿草出窓に光溢れけり  柊
<あや(天)>
“福”に満ちた空間の出現


・2点句

寒夕焼け航跡ひかり近よりぬ  治男
<白馬(地)>
景の大きさと下五の動きに感動。

着ぶくれてバス待つ憂さや朝まだき  素蘭
<春愁(地)>


上州の風はなつかし焼き饅頭  丹仙
<柊(地)>
厳しい気候と、郷里の思い出の食べ物、ともに懐かしいものです。

探梅や青空は眼に冷たくて  春愁
<馬客(地)>
北関東の1月の日々はまさにこの句のごとし。

ひふみよと夢始まりぬ手毬歌  丹仙
<芳生(人)>


<治男(人)>
 祖母が数え歌を歌いながら、おじゃみ、
 毬突きなどをよくしていた。子供心に楽しく
 大人になったら、など夢を見たものだ。


・1点句

ニューヨーク吹くや木枯顔を打ち  あや
<丹仙(人)>
句の音律が気に入りました。今年は、ニューヨークは大変な寒波が到来したようですね。日本も猛暑の夏に続いて、大雪です。

福寿草露地にぽつりと朝日待つ  白馬
<英治(人)>
情景が見える。