第181回桃李2月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:梅、春の雪、昭和(不言題)

題詠または当季雑詠 

兼題T 梅
兼題U 春の雪
兼題V 昭和(不言題)

2月15日(火) 投句開始
2月22日(火) 投句締切・翌日選句開始
3月 1日(火) 選句締め切り
3月 3日(木) 披講

投句: 白馬、柊、素蘭、芳生、鞠、松風子、英治、素馨、省吾、素人、治男、馬客、愛子、明子、あや、春愁、丹仙
選句: 柊、芳生、素人、英治、白馬、鞠、松風子、治男、春愁、馬客、素蘭、あや、省吾、素馨、愛子、明子、丹仙

披講

・17点句

梅の香を衣桁に解くや旅三日  愛子
<柊(地)>
梅は何処でも長い期間咲いているので、旅行中そのかおりをまとっていたのでしょう。衣桁が見られるのは今では日本旅館でしょうか。

<芳生(天)>
梅の香の沁み込んだ衣。梅見の旅だったのでしょうか。

<鞠(地)>
探梅行の旅情あふれる雅な夜想曲。

<春愁(地)>
そこはかとなき香りを残して

<馬客(天)>
上品な色っぽさ、こういう句、好きです。

<あや(地)>
ただただ浸ってしまいます、この梅の香の世界〜〜

<丹仙(天)>
探梅の旅、三日目の句。私は現在、そういう優雅な状況ではないので、「羨望」の一票を投じました。


・12点句

麦踏むや疎開の村に独り老ゆ  馬客
<芳生(地)>


<素人(人)>
疎開を持ち出したのが巧い。

<白馬(地)>
疎開してから住み着いて農業を。独りが淋しい。

<鞠(人)>
故郷の寒村は、終戦時、疎開や引揚げの人々で賑わった。60余年後の今は此処も過疎高齢化が進むばかり。

<省吾(天)>
疎開は実感としてはありません。でも、故郷でひとり麦踏をする母親のありし日の姿がよみがえって胸が詰まる思いでした。

<愛子(天)>
戦後60余年疎開と言う言葉に反応する年齢の人々も限られてきた
疎開がご縁でその地に根を下ろされ今はお独りになられたのでしょうか
麦踏むと言う季語に呼応する感慨深い句でした


・9点句

子ら待ちし薬行李の紙風船  愛子
<柊(人)>
富山の薬売は動くドラッグストアーでしょうか,懐かしいです。

<素蘭(地)>
三丁目の夕日的ノスタルジアながら懐かしい

<あや(天)>
母から聞いたことのあるような、それとも・・・? 
なんとものどかで温か、今は昔、良き時代の一風景。

<素馨(天)>
富山から決まった時期に来る薬屋さん、懐かしいです。
子どもにはおまけを持ってきてくれました。紙風船をその場で膨らましたことを思い出します。


・8点句

戸一枚あけて眺むる春の雪  松風子
<柊(天)>
戸を一枚開けてと言うフレーズに実感が有りました。

<英治(天)>
春の暖かさを感じさせる。

<省吾(人)>
春の雪の印象からは想像できない大雪を、寒いのに起き抜けのままで眺めている情景が浮かびます。

<明子(人)>
今年の雪は本当に春の雪とは思えぬ降りようでした。どこか唖然として景色を見ているように感じます。

ひもじさに酸葉噛みし日遥かなる  芳生
<素人(天)>
早期昭和世代として共感する句です。
ひもじさをちゃんと記憶しています。すかんぽも甘いと感じました。

<素蘭(天)>
虎杖や茅花の記憶も遠くなりました

<丹仙(地)>
疎開先、あるいは引き揚げの「ひもじさ」でしょうか。昭和の不言題に相応しい句と思いました。


・6点句

春寒し銭湯帰りの下駄の音  省吾
<芳生(人)>
銭湯、下駄の音。消えてゆく昭和の景です。

<春愁(天)>
神田川の唄が聞こえる

<明子(地)>
団塊の世代、「神田川」の世界が身近でした。

裕次郎ひばりの唄や百千鳥  松風子
<素人(地)>
このふたりはなんといっても昭和のシンボルといえましょう。

<治男(天)>
 楽しみの少ない時代、唄い聴きした
歌謡曲、全盛の頃である。百千鳥が
よく効き、固有名詞の働きが大である。

<あや(人)>
歌は世につれ、世は……
昭和歌謡史の2大巨星。


・4点句

公園に子供ぽつぽつ梅静か  白馬
<馬客(人)>
子供がポツポツとしか居ない公園、静かですが、梅だって
淋しがっているでしょう。

<明子(天)>
ぽつぽつと子供、ぽつぽつと梅の花。この季節の雰囲気が出ています。

春雪の山に聳ゆるパゴダの塔  治男
<松風子(天)>
目に見えるような鮮やかさが表現されています

<愛子(人)>


胸の火を消さぬ重たさ春の雪  素馨
<英治(地)>
本当は早く消えて欲しいのに。

<省吾(地)>
胸の火は怒りでしょうか、嫉妬でしょうか、恋でしょうか、それとも、許されぬ愛でしょうか。何故か気にかかる句です。


・3点句

梅東風の湯島天神女坂  柊
<白馬(人)>
語呂の良さで。

<松風子(地)>
漢字の羅列がみごとに成功しているようです

舌の上にひとひら受けて春の雪  馬客
<白馬(天)>
確かに口を開けて受けたくなります。

スクラムも議事堂前も朧なり  素馨
<春愁(人)>
あの頃は一体何だったのか

<馬客(地)>
此の頃の若者達の不安と情熱は、今の若者達には無い如くです。
今の日本・将来の日本、大丈夫だろうか!。

春いまだ来たらずイムジン河を聴く  丹仙
<鞠(天)>
かつて東西分断時の西独に駐在、その10年後にソウルへ赴任した。板門店を訪ねて間近な北朝鮮を臨んだ思い出が今も生々しい。


・2点句

梅の花わずかに開けるガラス窓  省吾
<素馨(地)>
まだ寒さの残っている時期に咲く梅の花。ガラス窓を一枚だけ開けて、花を見、香りを愉しむ気持ちが良く出ている。

少しだけ寄り道したや春の雪  省吾
<治男(地)>
 雪の珍しい土地柄であろう。南国では
雪を見ると嬉しくなる。その気持ちが、
よく出ている句である。

廃れ井や鉄漿溝のねこやなぎ  春愁
<愛子(地)>
まさに昭和風景遺産ですね


・1点句

昭子和子多き旧友建国日  鞠
<治男(人)>
 昭和の語を取り、名付けが流布した。
季語が生きた句であり、誹諧を感ずる。

梅が香やかたはらになほ顕つ女房  英治
<素蘭(人)>
蕪村の句を借りれば「ちよとほれた」とか?

春の雪トレーに今日はカプチーノ  英治
<素馨(人)>
春の雪の淡さと、カプチーノとの濃い味との取り合わせが良いと思いました。

ふふむ梅母系に享けし八重歯かな  春愁
<英治(人)>
実感がある。

霊異記の版図広げむ余寒かな  素蘭
<丹仙(人)>
「昭和」の不言題の句では、最も難解な句ですが、妙に印象に残りました。以下は、それこそ「霊異」的な勝手な読みです。
「版図」という言葉から、私が連想するのは、大日本帝国の興亡。昭和の二〇年までは、日本全体が物の怪に憑かれたような時代でした。平和な戦後に、かつての帝国の版図を広げると、寒々とした思いがいたします。

60年安保青竹ヘルメット  白馬
<松風子(人)>
昭和を生きた者のひとりとして悔恨と懐かしさとで共感しました