第182回桃李三月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:春の闇、受難節、震災(不言題)

題詠または当季雑詠 

兼題T 春の闇
兼題U 受難節
兼題V 大震災(不言題)

3月15日(火) 投句開始
3月22日(火) 投句締切・翌日選句開始
3月29日(火) 選句締め切り
3月31日(木) 披講

投句: 松風子、素蘭、鞠、白馬、芳生、馬客、英治、柊、丹仙、省吾、治男、素人、明子、春愁、あや
選句: 英治、芳生、松風子、素人、柊、鞠、白馬、馬客、あや、春愁、素蘭、治男、明子、丹仙

披講

・31点句

班雪瓦礫の下のランドセル  省吾
<芳生(天)>
実景を詠んだ重い句です。

<松風子(天)>
ランドセルが目に焼き付きます

<素人(天)>
実際にこんな場面もあったでしょうね。
無事避難できていることを祈ります。

<柊(天)>
雪の残る被災地で入学を前にした子供の悲しみがひしひしと伝わってきました。

<鞠(天)>
3月という入学や進級の季節に、瓦礫に埋まってしまった大切なランドセル。
持主の子等の無事をひたすら祈るのみ。

<白馬(天)>
あんなに楽しみにしていた新学期なのに。

<馬客(地)>
生々しすぎる、とも思いましたが此の句の現実を
しっかりと心に留めておかないといけない、と
おもいました。

<あや(天)>
胸が詰まります

<春愁(天)>


<素蘭(地)>
ランドセル、靴、玩具…
瓦礫の下の泥まみれの日常が何とも痛ましい

<丹仙(天)>
震災の不言題の中では、この写生句が、その現実の悲しみを沈黙のうちに示してくれました。


・6点句

形良き卵そろえて受難節  馬客
<英治(天)>
復活への願いが。

<松風子(地)>
二句一章の二物がよく照合しています

<あや(人)>
淡々として深きところへ

道折れて香り確かや春の闇  春愁
<英治(地)>
春の香りを喜ぶ心。

<松風子(人)>
春の闇の本意が生かされています

<治男(天)>
 折れ曲がり行けど、香りがしかと届く。
闇の中だけに香りが確りと表現されている。


・5点句

天災に人災重ね受難節  鞠
<白馬(人)>
人災もこれからが本当に大変になる。放射能物質による被害。

<春愁(地)>


<明子(地)>
受難節の語にある、やがて来る光を信じたいと・・・


・4点句

母いづこ父はいづこに春の闇  英治
<素人(地)>
おかあさーん と呼ぶ少女の横顔をTVが映していました。

<白馬(地)>
涙が零れる−−−。


・3点句

一郷の津波に消えて受難節  芳生
<治男(地)>
 この度は神様でも驚きであったろう。
地震の上に津波で一郷が消滅してしまった。
 被災者の方々のご心痛をお察し致します。

<丹仙(人)>
受難節は復活祭の前の40日間を指します。このたびの震災は、それ以上の日時がかかるでしょうが、無からの創造・復活を祈る次第です。

尾の生ふるもの蠢くや春の闇  松風子
<素蘭(天)>
尻尾が鵺のものならば
心はシュール春の闇

原子炉の罅深々と冬ざるる  芳生
<馬客(天)>
不安ながらも、その安全性に頼ってきた
我々の心にも大きく「罅」は入った。

千年に一度の重き春の雪  馬客
<明子(天)>
「せめて雪よ、降らないで」と願ったのは私だけではないと思います。

沈黙の春や眠れぬ闇のなか  丹仙
<柊(地)>
口には出せぬ被災者の方の苦しみが伝わってきます。

<明子(人)>
農薬の害を訴えた「沈黙の春」ですが、放射能についても全く同じ事態を招いてしまいました。

春の闇並み居る五百羅漢かな  治男
<英治(人)>
震災の犠牲者を連想させる。

<あや(地)>
まだ、閉館のままでしょうか……


・2点句

安否問ふ電話通ぜず春の闇  素人
<丹仙(地)>
携帯電話も通常の電話もかからない状態が続きました。実際に、薬缶に連絡が取れないときの不安が、春の闇という季語に新しい意味を付け加えました。

地震後の身にひしひしと春の闇  柊
<鞠(地)>
天災の大地震大津波に、原発事故・放射能漏れという人災が重なり、被災範囲は広がるばかり。節電停電の巷は春の闇が一入濃い。

白木蓮の光よ届け被災地に  柊
<芳生(地)>
被災地にあまねく春の光が届きますように。


・1点句

いづくより君が呼ぶこゑ春の闇  芳生
<春愁(人)>


雄叫びの怒濤と化する春の波  松風子
<治男(人)>
 勇ましき怒濤が、津波となってしまった。
 予期せぬ災害では済まされない気がする。
 

神も又はらわた痛む受難節  丹仙
<素蘭(人)>
まさに受難節
そういえば…
その左脇腹に瘢痕つけて生まれてきた長男「ひろし」
研修先となった某市民病院に赴任したら名前が「けいじ」
これを「ひろし」に戻すのにン年もかかりましたが
まさか医師免許を偽造?捏造?改竄?

終電車すぎて広がる春の闇  省吾
<鞠(人)>
節電のため商店街が早仕舞なので、今年は盛り場も、終電前から春の闇に沈んでいる。

地獄絵図みちのくの郷凍て返る  春愁
<柊(人)>
地獄のさまの中での寒さ大変だと思いました。

受難日や人無き村に明け鴉  松風子
<芳生(人)>


受話器より母のかなしみ聖土曜  英治
<素人(人)>
安否確認に無事を喜ぶ歓声、悲報に絶句する場面。悲喜こもごも。

天罰とふ言葉赦せず春寒し  明子
<馬客(人)>
変節漢に下れ春雷