第183回桃李4月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:復活祭、絆、放射能(不言題)

兼題T 復活祭
兼題U 絆
兼題V 放射能(不言題)

4月15日(金) 投句開始
4月22日(金) 投句締切・翌日選句開始
4月29日(金) 選句締め切り
4月30日(土) 披講

投句: 芳生、松風子、柊、白馬、鞠、素蘭、馬客、春愁、愛子、英治、素人、明子、あや、丹仙
選句: 芳生、柊、あや、白馬、素人、英治、松風子、鞠、春愁、馬客、愛子、明子、素蘭、丹仙

披講

・15点句

小径より歌満ちてきて復活祭  愛子
<芳生(地)>


<あや(天)>
復活祭を祝う心、生きていることを喜ぶ心が、春の空気のなかに放たれていく光景は素晴らしいです。

<英治(天)>
まさにその雰囲気だ。

<鞠(天)>
大人とこどもの合同礼拝で主の復活をお祝いしたばかり。「小径より」が佳い
ですね。

<素蘭(天)>
桃李もの言はざれども

<丹仙(人)>
長崎の田舎にある小さな聖堂を連想しました。村人が、小径から聖堂にむかって行列しつつ讃美歌を歌っている情景です。


・12点句

捨て牛の道に餓ゑゆく四月かな  丹仙
<白馬(天)>
人も牛も本当に可哀そう

<英治(地)>
まことに哀れな情景。

<松風子(天)>
映像に見る無惨な光景は胸がひめつけられます。同じ命だというのに。

<鞠(人)>
余震も放射能漏れも収まらぬまま、行方不明の方々は、未だ一万余名にのぼり
ます。飼主から離れた家畜やペットもまた、生死の境を彷徨うさまを想うと、
自分の非力が省みられてなりません。

<馬客(人)>
後年、何人の日本人が、この句の現実を覚えているでしょうか。

<素蘭(地)>
道路を徘徊する痩せ牛
インドじゃ普通(?)も、ここはFUKUSHIMA


・9点句

ふるさとの訛は絆花りんご  明子
<芳生(人)>


<柊(人)>
花りんごの季語の使い方が良いと思います。

<素人(天)>
その通りですね。みちのく訛りに共感を深めています。

<松風子(地)>
存在証明のような訛りは絆そのものでしょう。ふるさとの林檎の花とともに。

<愛子(地)>
如何に雄弁を振るおうと人の心を射止めることが出来ない事もままある
ふるさと訛が耳に入った途端親しみを感じるのは同郷という絆でしょうか


・8点句

大海嘯丸ごと春を呑み込めり  春愁
<芳生(天)>
「丸ごと春を呑み込む」という表現が秀抜です。被災の東日本には春はあまりに遠い。

<柊(地)>
津波の大きさがよく表現されていると思います。

<丹仙(天)>
「大海嘯」、「おおつなみ」と読ませていますが、「大津波」よりもたしかに大自然の脅威を呼び起こします。春を表す通常の季語を選ばず、「丸ごと春を呑み込めり」としたところ、一七字をもって巨大なる自然災害を的確に表現しました。


・6点句

同郷の絆嬉しや花筵  芳生
<あや(人)>
言葉要らずの絆。人の心はどんなに救われることでしょう。

<鞠(地)>
加齢と共に懐古的になるのか、昨年は旧制高女のクラス会を二回も開きました。

<愛子(天)>
ことに故郷を離れての同郷人の結束は固くお国訛が行きかう風景か・・
それとも花見の時期に合わせての帰郷かなど花下での車座の様子伝わってくる

フクシマとカタカナで書き田を打たず  明子
<素人(人)>
確かに。フクシマはあまねく世界に知れ渡りました。

<馬客(天)>
「広島」を「ヒロシマ」と書くとき、われわれ日本人は単なる地名とは
まったく違った重大な意義をそこに持たせます。
「福島」がまさに今、「フクシマ」として我々の前にあります。
作者の語感の鋭さに敬服します。

<丹仙(地)>
Fukushima は原発震災の地名として世界に名前を残すことになりました。地元の農家の人にとっては、そのような疎外されたフクシマではなく、漢字で書かれた「福島」こそが故郷です。


・5点句

春潮や気の遠くなる半減期  英治
<素人(地)>
これもまたその通り。特にプルトニュームは・・・

<春愁(天)>
春の憂いが見える


・4点句

遺されし桜一樹に寄る絆  愛子
<柊(天)>
色々な絆があると思いますが、桜は日本人の心に一番感ずるものと思いました。

<英治(人)>
こんな年でも桜は咲く。


・3点句

金婚や花下に絆を鮮しく  鞠
<明子(天)>
二人で歩んだ五十年はかけがえのない宝物です。新たな気持で踏み出す一歩、輝いています。

この絆守ると決意春の虹  素人
<白馬(地)>
ついに結婚の意志を固めた。共白髪まで。

<愛子(人)>
未来に向かう心意気に・・乾杯!


・2点句

春塵や人逐ひたてる四方山に  松風子
<あや(地)>
恐怖としか言いようがありません。

風評やおたまじゃくしに毛の生ゆる  春愁
<馬客(地)>
風評の怖さ、加えて被曝による畸形発生への恐れ。
俳味が、なんとか問題のシリアスさを中和させている。・

ふるさとは封鎖と決まる春の雷  素人
<明子(地)>
言葉がありません。雷の大きな一喝を!

松の芯同期の絆とこしなへ  柊
<春愁(地)>
変わらぬ固い絆・・・


・1点句

祭壇の百合の香に酔ふ復活祭  柊
<白馬(人)>
真摯なクリスチャン。

父の手を離れし凧を手捌きぬ  松風子
<素蘭(人)>
視線を一身に浴びながら…(加油!)

鎚音の空高らかに復活祭  松風子
<明子(人)>
希望を持ってと願うばかりです。

花冷えや血管走る造影剤  馬客
<春愁(人)>


コッペパンのみの給食復活祭  丹仙
<松風子(人)>
コッペパンと復活祭が響きあいます。