第187回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:佞武多(ねぶた)、中元、終戦日(不言題)

兼題T 佞武多(ねぶた)
兼題U 中元
兼題V 終戦日(不言題)

8月15日(月) 投句開始
8月22日(月) 投句締切・翌日選句開始
8月29日(月) 選句締め切り
8月31日(水) 披講

投句: 芳生、柊、あや、鞠、春愁、白馬、水、松風子、雛菊、素蘭、英治、素人、治男、明子、丹仙
選句: 松風子、鞠、英治、雛菊、水、芳生、柊、あや、白馬、春愁、素蘭、馬客、明子、丹仙

披講

・7点句

敵機消え安堵の空に赤とんぼ  芳生
<松風子(人)>
安堵の象徴でもある赤とんぼが効いています

<水(人)>
実感。 初秋でしたね。

<柊(人)>


<あや(人)>
実感の雰囲気が漂うようで

<白馬(天)>
すっきりした気分がよく出ています。  


・6点句

あの夏の吾等愛国挺身隊  鞠
<雛菊(地)>
母と同じ年代の作者でしょうか。青春のすべてをかけ勝利を信じて軍用機作ったりしていたのですね。終戦日をどんなふうに受け止めたでしょうか。
終戦日の感じ方を読者にゆだねていていい句だと思います。

<あや(地)>
明るい口調のなか、深〜〜い思いが込められて

<馬客(地)>
あの夏の日の頃、国民学校5年生には、友人の女学生のお姉さんは
凛々しく綺麗でした。

ニッポンのゴッホと叫ぶ佞武多かな  丹仙
<鞠(地)>
 知人が彫刻の棟方志功師の従妹なので、有名な「わだばゴッホになる」は忘れ
難い。

<雛菊(天)>
青森の人形ねぶたを「彫刻」、弘前の扇ねぷたを「絵画」と言った人がいます。人形ねぶたの存在感、踊りのにぎやかさは見るものを圧倒します。一方弘前の扇ねぶたは、扇のキャンバスに三国志などの武者絵。裏は師宣風の美人画で送り絵と言います。こちらは絵として楽しむのです。たたきつけるような太鼓と哀愁の祭笛にあわせてゆっくり絵を見せていきます。弘前出身の私は送り絵や祭り笛の音がだんだん小さくなっていき遠ざかっていく後ろ姿を見るのが好きでした。ゴッホの絵は絵画ですが彫刻のようです。ゴッホにねぶた見せたかったなあ。

<馬客(人)>
棟方志功の芸術の根底にあって、彼の情熱を支えていたのは
あの祭の熱気なのでしょうか。

灯が入り血潮みなぎる佞武多かな  雛菊
<芳生(天)>
灯がともされると爛々と光る佞武多の総身がよく表現されています。

<柊(天)>



・5点句

にぎにぎは江戸町言葉お中元  素蘭
<春愁(天)>
魚心に水心

<明子(地)>


盆礼や恩師のこゑの若かりき  芳生
<柊(地)>


<あや(天)>
しみじみととてもいい、です。


・4点句

かぼちゃ食う国民学校同窓会  水
<鞠(人)>
 敗戦前後の飢餓時代、米の代わりに食べた末生り南瓜の水っぽかったこと!

<馬客(天)>
現在の日本国民で「国民学校」児童であった人々は
何人居られるんでしょう。
その一人として、この句は外せません。

待っているわけではないが来ぬ中元  素人
<雛菊(人)>
はい。同感。配達の車停まった。うちか?と思ったらお隣。お中元なんて無駄、形式的よ、などとほざいて、でもうちにも一つくらい来てもいいじゃないと思う私であります。

<水(天)>
ずばり僕の心情。ハイカイ味のある、好きな五七五です。


・3点句

蒼過ぎる空の痛さや蝉しぐれ  春愁
<英治(地)>
終戦と言えば空の青さだ。

<丹仙(人)>
「空の痛さ」という表現の切実さに惹かれました。

お中元来るも送るも家族のみ  白馬
<鞠(天)>
 高齢化と共に、知己友人はもとより、親族すら物故者が殖え、盆暮れの贈り物のやりとりもめっきり減ってしまった。

かなかなや空気となりて民主主義  英治
<明子(天)>


雑音の混じる玉音百日紅  素人
<松風子(地)>
映像で見る終戦の日の光景がよみがえります

<素蘭(人)>
「堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ」の行しかよく聞き取れなかったとか…
それにつけても
「忠良ナル爾臣民」らから召し上げたモノはどうしたでせうね?

新聞ほどく中元は山の幸  雛菊
<素蘭(天)>
古事記に倣い(?)山幸に天

疎開地に父軍刀を携えて  白馬
<英治(人)>
父親の兵隊の位を友達が誇っていたっけ。

<春愁(地)>
半世紀が過ぎ去りました

月笑ふ佞武多跳人の腰のばね  芳生
<丹仙(天)>
佞武多跳人という文字自身が踊っているような効果がありますね。
過剰なまでの装飾を施した佞武多に相応しい句と思いました。

佞武多見る蝦夷の血筋綿々と  松風子
<白馬(地)>
荒々しさの中に人の情が。

<明子(人)>


八月のあつけらかんと正午かな  素蘭
<英治(天)>
特別な意味を持つ八月だったが。

母の故国八月の意味を子に教へ  あや
<春愁(人)>
言い伝えたいことは、キチンと継承しなくては

<丹仙(地)>
母の故国、が日本なのかあるいは韓国もしくは台湾なのか、それによって句の意味は変わりますが、変わらないのは戦争の記憶が風化すること。その風化に抗して、戦争の意味を次の世代にキチンと教えることでしょう。

みちのくの夜を灯してゆく佞武多  素人
<松風子(天)>
佞武多の明かりが奥深い夜を点す情景が、賑やかさのうちに寂しさを感じさせます。


・2点句

縄文の地賑はしき佞武多かな  素蘭
<芳生(地)>


中元や甲乙丙丁母評す  あや
<水(地)>
上中下ではなく、諧謔味の、甲乙丙丁がよい。 切り盛りのよい、大家族のお母様でしょうか。

ガガシコに跳ねる浴衣や五所川原  春愁
<素蘭(地)>
五所川原でヴァーチャル跳人してみました
ガガシコの振る舞い酒に ワタシ オネブタ
  


・1点句

津軽衆の目鼻だち持ちねぶた山車  明子
<芳生(人)>


茄子の馬一番若き父先頭  柊
<白馬(人)>
もう皆父の享年を越えて生きている。