第19回句会桃李4月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:櫻、土、選挙(不言題)

春の句(雑詠)または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)は「櫻」または「土」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、
「選挙」です。

4月15日(木)投句受付開始
4月22日(木)投句締切、選句開始
4月29日(木)選句締切、披講

投句: 暁星、涙笑、松、木菟、香世、葉子、楽人、重陽、雲外、安寿、悠久子
選句: 涙笑、香世、重陽、木菟、葉子、安寿、楽人、雲外、悠久子

披講

・6点句

しばし手にのせて眺むる春の土  安寿
<涙笑(地)>
なかなか感慨深い句ですね。

<雲外(天)>


<悠久子(人)>
指先でほぐす土くれあたたかき

の句とどちらしようか迷いました。
じっと眺めているのが、私の気持に合うようで。

木蓮の今盛りなる廃家かな  重陽
<香世(天)>
木蓮の花は、華やかさのなかにもしっとりした落ち着きがあります。
世代の交代が上手くいかなかった廃家でしょうか。
はやく主が決まるといいですね。

<木菟(人)>
 過疎の村でしょうか。人が住まなくなった家のうらぶれた感じは、それ自体が、
ひとつの美しさと言うべきでしょう。

<安寿(地)>
 実際、こういう廃家が我が家の近所にもあります。盛りには
本当に派手に咲き、派手に散る木蓮の存在感が、廃家の庭で
いっそう強くなっています。

指先でほぐす土くれ暖かき  葉子
<重陽(人)>
何かしら安堵感をくれる。都会に長く住んで、忘れていたもの。

<安寿(天)>
 実は、私も春の土のあたたかさをどうにかして句にしたいもの
だとあえいだ挙げ句、結局できなかったのです。その解答の
一つを、ここに見せていただきました。

<楽人(人)>
園芸かなにかでしょうか、なんとなく実感がわきます。土の句は、あまりありませんでしたが、これが一番でしょう。

<雲外(人)>



・5点句

春雨に濡れて艶なる土の肌  楽人
<涙笑(天)>
どことなく艶っぽくてよいです。

<雲外(地)>


見上ぐれば九重八重に花螺旋  涙笑
<香世(地)>
たぶん樹齢何百年の名木でしょう。こんな木には、なにか気を感じますね。

<悠久子(天)>
まさに桜花爛漫を謳い上げて居られます。
ご自分も一緒に舞昇って行きそうな錯覚すら持たれたのでは。


・3点句

七っ八っ花びら寄りて浮きにけり  重陽
<木菟(天)>
 水たまりに落ちた花びらが、小さな波紋をつくる様子までが、静謐のなかに見え
て来て、しんとする美しさです。

ポスターを撫でて過ぎ行く春の風  松
<涙笑(人)>
撫でてが良かった。

<木菟(地)>
 今頃の季節どこにでも見かける景色ですが、これはこれで日本的などこか懐かし
い景色ではあります。

小雀よ尻振る猫の潜むなり  香世
<重陽(天)>
良く目にとまる情景。そらそら気をつけろーと。微笑みと緊張を巧く詠んだ句。

土に酔う我帰るべき所にて  松
<葉子(天)>
そろそろ先の見えてきた者には共感できる感情。

日本の 櫻つらぬき 東北道   雲外
<楽人(天)>
ダイナミックですね。素晴らしい。私も桜前線とともに北上してみたくなります。今はどの辺でしょう?


・2点句

沖縄に花見ることの忸怩たる  葉子
<重陽(地)>
沖縄に行く度に胸の奥に残るものを。花の季節には余計に響くように思う。

谷風も 櫻吹雪の 吉野かな  雲外
<葉子(地)>
今年は吉野の花見を企画していたのに、宿は2年先でなければ予約できない、とすげなく断られ、近場の花見に変更した者としては、こういう情景を目の当たりにしたかった!

声涸らし喚けどひとはのどかなる  木菟
<香世(人)>
たしかに、いくら大きい声で名前だけお願いされても聞いておりません。
街の雑音の一部として、流されて、のどかな時間は変わりなく過ぎていきます。

<安寿(人)>
 地方の高齢者の多い地域、いわゆる田舎では、かえって
投票率が90パーセントを超えることが多いものです。特に
みなが政治に関心が高いというわけでなく、娯楽の一つとして
投票に行くのだとか。そんなのどかな人々の中で、候補者と
支援者だけは懸命です。

なまず住む棚田に一本遅櫻   香世
<楽人(地)>
どこか鄙びた風景ですね。なまずは、実際に見えているわけではありませんが、のどかな雰囲気を醸し出していて、そこが好ましい。

演説に負けてならじと蛙ども  安寿
<悠久子(地)>
田圃の隣に住んだこともあり、そのうるさい事は知っています。
選挙演説の、これもうるさいこと。
その候補者は蛙に勝ったのでしょうか?


・1点句

蝙蝠のそぞろに巡る夕櫻  楽人
<葉子(人)>
桜と蝙蝠との思いがけない取り合わせ、なかなかです。