第191回桃李12月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:月蝕、熊、絆(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 月蝕
兼題U 熊
兼題V 絆(不言題)

12月15日(木) 投句開始
12月22日(木) 投句締切・翌日選句開始
12月29日(木) 選句締め切り
12月31日(土) 披講

投句: 白馬、芳生、馬客、素蘭、春愁、柊、松風子、翔河川、鞠、ぽぽな、素人、英治、明子、丹仙、あや
選句: 春愁、芳生、鞠、松風子、英治、あや、柊、ぽぽな、馬客、素蘭、明子、丹仙

披講

・11点句

月蝕を見る着ぶくれの家族かな  ぽぽな
<芳生(天)>
一家で厚着をして皆既月食となる瞬間を待っている様子が分かります。

<鞠(天)>
家族揃って、今夜は「おやすみなさい」も無く、どんなに寒くても大宇宙ショーを見守り続けられる幸せを、震災後の今こそ深く感謝しています。

<明子(地)>
あの晩、近所の子供の弾んだ声がずっと聞こえていました。お父さんの声もしていたような・・

<丹仙(天)>
「着ぶくれの家族」が、冬の夜の月食を捉えて、頬笑ましい。

ぽつねんと山を見てゐる檻の熊  芳生
<春愁(天)>
好きで人里に出てきたわけでなし、檻の中哀し

<あや(天)>
熊の哀れさの極致のような・・・

<柊(天)>
檻に飼われる熊の哀れさに同感。

<丹仙(地)>
熊の寂しげな様子と一つになっている感じが良い。


・8点句

月蝕の闇深まり来冬田径  芳生
<松風子(人)>
月光の消えた、寒さが極まった景が見えてきます

<英治(人)>
情景が浮かぶ。

<柊(地)>


<素蘭(天)>
  酔眼凍てむ満天の星

<丹仙(人)>
月食の闇が、「冬田道」との配合によりリアリティを獲得しました。

ふるさとの山のかたちに熊眠る  ぽぽな
<松風子(天)>
おどかな自然と生き物(熊)の一体感を感じました

<あや(地)>
不憫さが胸に迫ります

<明子(天)>
きっとふるさとの豊かな春を夢見ていることでしょう。


・5点句

雑踏の中の母国語冴えわたる  ぽぽな
<春愁(地)>
銀座など中国語、韓語にジャックされ

<鞠(地)>
浅草の雑踏の中で、ふと目を瞑り、華語韓語その他の外国語しか聞こえてこないのに、「ここは日本かしら」と思ったことがあります。大震災後は幾分減りましたけれどーーー。

<柊(人)>



・3点句

熊穴に後ろ振り向きつつ入りぬ  松風子
<馬客(天)>
「熊」も、今年の日本の政治・経済・社会状況もろもろが心配で
おちおち冬眠にも入れないんですね。

月蝕の絶頂過ぎし冬の川  英治
<ぽぽな(天)>
「月蝕の絶頂」の措辞が秀逸。それまでの興奮とその後の荒涼との対比も鮮やかです。

恒例の漢字ひと文字年の暮  素人
<馬客(人)>
こりゃ技ありの一句。

<素蘭(地)>
恒例の今年の漢字は「絆」
コロンブスの卵的発想が good job!

年忘れ嘗て吾等は挺身隊  鞠
<芳生(人)>


<馬客(地)>
空爆や艦載機の機銃掃射を受け、逃げまどいつつも
お国のために身を挺して働いた乙女達、その「絆」は
真に強いことでしょう。

どんぐりに埋もれ眠るが熊の夢  翔河川
<英治(天)>
メルヘンの世界。


・2点句

生贄の熊や古潭に陽の墜つる  丹仙
<ぽぽな(地)>
アイヌの暮らしでしょうか。風土の匂いがします。

燗酒や通夜に居残る寮仲間  馬客
<春愁(人)>
青春期の絆は深く重い

<ぽぽな(人)>
亡き友人を偲ぶ話が尽きない様子が見えてきます。

霜の夜や月蝕むも人の業  馬客
<松風子(地)>
自然現象をあたかも人の業ととらえた視点がおもしろい

月天心貧しき顔で渡りけり  丹仙
<英治(地)>
「貧しき顔」がよい。

持ち重りせり故郷の冬林檎  明子
<芳生(地)>



・1点句

熊除けのベル下げて訪ふ母校かな  鞠
<素蘭(人)>
「東京ラブストーリー」の最終回のロケ地
久万中学校の後日譚のような…

妻子あらばやはり焼芋買ひ帰る  英治
<あや(人)>
人が生きてゆけるのは、身近なところのこうした相手を思う絆があるからでしょう。

三代の女囂し年用意  丹仙
<明子(人)>
受け継がれてゆくことの意味を改めて考えさせられます。

飲むほどに月蝕あるを年忘れ  松風子
<鞠(人)>
感想はー「さもありなん」です。