第199回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:八月、流燈、ロンドン五輪(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 八月
兼題U 流燈
兼題V ロンドン五輪(不言題)

投句: 白馬、芳生、松風子、鞠、ぽぽな、素蘭、春愁、翔河川、馬客、雛菊、英治、水、明子、治男、あや、丹仙
選句: 雛菊、芳生、英治、ぽぽな、鞠、翔河川、あや、春愁、水、白馬、素蘭、治男、馬客、明子、丹仙

披講

・14点句

流燈を流れに置きて手放せず  明子
<英治(天)>
よく分かる。

<ぽぽな(地)>
心の逡巡が旨く表現されている。

<鞠(天)>
流燈に託す亡きひとへの追慕こそ”手放せぬ”所以かもしれない。

<白馬(天)>
若くして逝った吾が子でしょうか?

<丹仙(天)>
流燈を流れに置く、その一瞬を捉えた句。精霊が生者に語りかけているようです。


・7点句

流燈の岸辺の人もまたながれ  翔河川
<ぽぽな(天)>
「岸辺の人もまたながれ」が、人間の定めのようなものを照らし印象的。

<あや(人)>
今生きている人も逝った人々と一体となってゆく流燈…

<治男(天)>
流燈会の状況が、佳く表現されている。
流燈に心惹かれながらも、共に歩み出している。 

ロックからサンバへ夢の育つ秋  鞠
<春愁(人)>
そうですね・・・四年後はサンバ、ボサノバが流行るか

<素蘭(天)>
            
Viva Victoria Vitoria! 

<馬客(天)>
うまい!の一言。


・5点句

精霊は水欲りにけり流燈会  素蘭
<翔河川(天)>


<丹仙(地)>
水欲りにけり、の句に戦争中に焼夷弾や原爆で亡くなられたかたの苦しみを想います。

テレビ消して八月の星見つめをり  雛菊
<芳生(地)>
八月は五輪、高校野球とテレビに接触する時間の多い月でした。敢えてテレビを消して星を見ていることに共感を覚えました。

<水(天)>
8月には、ヒロシマ、ナガサキ、敗戦など、忌のつく出来事がつづきました。その記憶は騒音文化にかき消されて、風化しつつあります。庭へ出て、はだしで土を踏みながら、当時のことをよく知っている星空と対話されたかもしれない。ナショナリズムが徘徊している、この八月に。


・4点句

散骨の叶ひし海へ燈流す  鞠
<芳生(天)>


<英治(人)>
そんなケースも増えているのだろう。

摩天楼ともれば流燈のさみしさ  ぽぽな
<鞠(人)>
摩天楼が宙に煌めけば煌めくほど、その下の川面を行く小さな流燈は寂しい。

<明子(天)>
句の中に流れる詩情に魅了されました。


・3点句

原子野の八月に佇つマリアかな  丹仙
<雛菊(天)>


里に寄るうから皆老い秋初月  芳生
<鞠(地)>
故郷は今や限界集落となり、旧盆に集う一族も老いが著しい。

<丹仙(人)>
うから皆老い、に実感がありました。

ため息と感動の宙星奔る  あや
<春愁(天)>
確かに4年に1回の国を挙げての感動。素晴らしい

八月の傷口閉じかけて開く  ぽぽな
<治男(人)>
 八月は二つの原爆忌、終戦日である。
 忘れようとしても、忘れられない精神が
 佳く出ている。

<明子(地)>
原爆忌のある八月。3・11の痛みが甦ってきます。
人間は何ということをしてしまったのだろうと。

八月やガラス器しまふタイミング  雛菊
<ぽぽな(人)>
日常の一コマを捉えた軽やかな発語感。夏に活躍したガラスの器ともそろそろさよなら、とは思いつつ、まだ暑い日は続くのです。

<素蘭(地)>
♪今はもう秋…

八月や婆凝視する兵士像  治男
<あや(天)>
戦争の記憶は消えることなく、気迫に満ちた悲しみとなって今も続く。

惑ひつつ流燈ひとつ戻り来る  芳生
<水(人)>
天災で、いまだに生死がはっきりしない方への思惑かな、と想像しています。

<白馬(地)>
この世にまだまだ未練がある。したかったことがいろいろある。


・2点句

浦上の崩れし御堂 蝉不鳴  丹仙
<水(地)>
「蝉不鳴」;黙祷していたんでしょうか

炎天のボール蹴るたび国轟く  ぽぽな
<治男(地)>
 観戦の人の心の動きでしょうか。
 各選手は、国の代表者として、プレ−している。

スカル漕ぐ一厘の差に名誉懸け  芳生
<春愁(地)>
一厘、一ミリ、百分の一秒の差の順位の重さ・・・

灯籠の行方わきまえ流れ去り  翔河川
<英治(地)>
何となく感じられる達成感。

如己堂の終戦記念日鐘止まず  丹仙
<あや(地)>
戦争の酷さ悲惨さを風化させてはならない。

踏切の警報已まぬ八月十五日  春愁
<馬客(地)>
あの音はなぜかイライラさせる、なぜか不安な気にさせる。
近づくのは列車ではなくザクザクという軍靴の群れかも。

マラソンが地球の裏の夏をゆく  英治
<雛菊(地)>


流燈の肩に相触れ相離る  春愁
<白馬(人)>
来る時も帰る時も一緒に。

<馬客(人)>
「袖触れ合うも多生の縁」、霊の世界にもそんなことが
在るのかもしれません。

流燈を川面に放つ人の顔  治男
<翔河川(地)>



・1点句

爽やかや鞍上に古稀過ぎし人  馬客
<明子(人)>
爽やかそのものでした。

八月に詰められしもの解き放つ  英治
<翔河川(人)>


八月や今も共寝の防空頭巾  鞠
<素蘭(人)>
  白頭翁の夢に母鳥

盆の客五輪の話くりかえし  水
<雛菊(人)>


流燈に声かけながら背を押しぬ  松風子
<芳生(人)>
心情が出ていると思いました。