第206回桃李3月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:送る、つちふる(霾=黄砂)、 3/11(不言題)

題詠または当季雑詠

兼題T 送る
兼題U つちふる(霾=黄砂)
兼題V 3/11(不言題)

3月15日(金) 投句開始
3月22日(金) 投句締切 翌日選句開始
3月29日(金) 選句締め切り  
3月31日(日) 披講 

投句: 春愁、白馬、素人、素蘭、松風子、秋童子、芳生、馬客、翔河川、柊、あや、英治、治男、鞠、明子、雛菊、省吾、丹仙
選句: 雛菊、芳生、柊、あや、英治、春愁、秋童子、白馬、松風子、素蘭、治男、馬客、明子、素人、翔河川

披講

・10点句

蛇行せる坂東太郎霾れり  素人
<芳生(天)>
大景ですね。

<あや(天)>
黄砂が列島を覆ってゆく様子がスケール大きく描かれていて、人間には太刀打ちできない重く、力をもつ自然が迫ってくる。

<英治(天)>
大きな景。類句がありそうな気もするが。

<春愁(人)>



・9点句

旅立ちを見送る花となりにけり  明子
<芳生(人)>


<春愁(天)>


<松風子(天)>
花の季節に起こるさまざまな感慨のひとつが表れています

<素蘭(地)>
  山もと霞む敷島の道

鳥帰る見送る子らも村を発つ  素人
<柊(人)>


<英治(人)>
せつなさがひしひし。

<秋童子(地)>
鳥を見送った子らも、それぞれ巣立ちのときを迎えていて。

<松風子(地)>
年々歳々繰り広げられる光景か。深い感慨を呼びおこします

<治男(天)>
子等は卒業生だろう。帰る鳥と共に
故郷を発ち希望に燃えて、新天地に向かう
気持ちが、出ている。


・8点句

刻止まる時計ななめに涅槃西風  馬客
<柊(天)>
3.11を鮮明に描いている。

<明子(天)>
その時を示したままの時計、涅槃西風に思いがこもっています。

<素人(地)>
忌わしい記憶が蘇りますよね。


・5点句

暗涙か釈迦の半眼桜どき  春愁
<白馬(天)>
お釈迦様の想いや如何に。

<治男(地)>
 被災地の釈迦像でしょう。
今も未だ、大変なご苦労をしている
方々に釈迦に暗涙が気持ちを惹く
表現である。

つちふるや古代王都の石畳  松風子
<芳生(地)>
古代王都は殷でしょうか、周でしょうか。

<素蘭(天)>
楼蘭から 沙の便りのふるような…


・4点句

つちふるや回る地球の風物詩  素蘭
<柊(地)>
回る地球の風物詩が良い。

<春愁(地)>


漂流の果てのシアトル春の潮  英治
<雛菊(地)>


<秋童子(人)>
津波の大きな爪痕は、なんとはるか遠くまで。

<素蘭(人)>
太平洋ゴミベルト地帯と揶揄されながら
現役の大桟橋に最近では鳥居までとか…


・3点句

耕人も太子の里も霾れる  芳生
<翔河川(天)>
誰へだてなく

被災後の児の甘え癖よな曇り  鞠
<馬客(天)>
「甘え」と言うより、自然の猛威により植えつけられた
恐怖の記憶でありましょう。
「つちふる」も自然の持つ恐ろしさのひとつでしょう。

被災地を思う宣誓春選抜  治男
<素人(天)>
春の選抜では、やはり触れることになります。

風化させてはならぬその日前の日  白馬
<秋童子(天)>
その通りですね。どちらの日も、決して忘れてはならない日となりました。

霾ぐもりアンテナどれも都心向く  春愁
<雛菊(人)>


<馬客(地)>
人民が一元管理される世が近かずきつつあるか、と
言うような漠とした不安を呼び起こされました。


・2点句

三月の杜の静寂や送り人  素蘭
<あや(地)>
しめやかながら、静寂の美が漂う別れが印象的。

卒業式送る言葉を論語より  治男
<あや(人)>
卒業式を前にしてスピーチを考えているのでしょうか、「論語」に、卒業式を尊ふ心持ちがあらわれていて、また同時に苦心している様もうまく表現されてるように思いました。

<素人(人)>
気の利いた言葉は見つかりましたか。 

追悼は死者を癒さず春嵐  松風子
<英治(地)>
そんな気分が分かる。

つちふるや読みかけ置きし唐詩選  馬客
<白馬(地)>
今の中国は−−−。

連れ立ちてつちふる街に紺袴  英治
<翔河川(地)>
卒業式にも

霾晦古き映画を見るやうな  柊
<明子(地)>
すべてのものがセピア色でした。


・1点句

空襲も地震も生き延び花の日々  鞠
<松風子(人)>
長い歳月を生き延びてきた感慨がじんと伝わります

つちふるや国境を消す自然界  あや
<馬客(人)>
地図の上に定規と鉛筆で線を引き「国境」などと称する。
大自然はそんなもの知らん、とばかりの土煙。

日輪は白き円盤霾ぐもり  明子
<治男(人)>
 言われてみれば、その通りですね。
 発見、着眼が立派です。

浜今も瓦礫の底や地虫出づ  芳生
<白馬(人)>
人災に拘らず自然の営みは変らず。

春の波家の土台の数あまた  雛菊
<明子(人)>
いまだにこのままの景色が残っています。二年の年月はどこへ流れていったのでしょう。