第211回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:盆、花火、原爆忌(不言題)

兼題T 盆
兼題U 花火
兼題V 原爆忌(不言題)
8月15日(木) 投句開始
8月22日(木) 投句締切 翌日選句開始
8月29日(木) 選句締め切り  
8月31日(土) 披講 

投句: 松風子、春愁、鞠、白馬、素蘭、雛菊、柊、ぽぽな、水、秋童子、芳生、馬客、治男、明子、素人、あや、丹仙
選句: 鞠、芳生、あや、柊、水、白馬、松風子、治男、春愁、素蘭、英治、馬客、雛菊、秋童子、ぽぽな、明子、丹仙

披講

・11点句

手に掬ふ水八月は祈り月  明子
<素蘭(天)>
絵になりすぎる構図ですが
静謐さに天 

<英治(地)>
しっとりとした実感。

<雛菊(天)>
燃えさかる爆弾。あの地の熱を水を掬うことにより新たに芽生える
静謐な思い。作者は過去の鎮魂と未来の平和を祈っているのだろう。

<秋童子(天)>
命の水。掬う両手は合掌する形にも似て。


・10点句

病室の窓に無音の遠花火  素人
<鞠(地)>
遠花火から病室の窓へ、静かに届く美しいプレゼント!

<松風子(天)>
今は病の床にあるが、遠花火を眺めながら、遠き日の花火を思い出している感慨があらわれています。

<春愁(地)>
早く社会復帰の想い・・・

<ぽぽな(天)>
その人の心情を思わせる句。


・9点句

石灼けて陽炎となる人の影  松風子
<芳生(地)>


<柊(天)>
原爆の凄まじさが詠まれている。

<白馬(天)>
あの一瞬が眼に焼け付いて

<春愁(人)>
暑い日の朝でした・・・


・8点句

ふるさとの盆唄なれば澱みなく  明子
<あや(天)>
情景や心情など、いろいろと考えさせられる句かと。

<治男(地)>
 幼いときから、歌い馴染んでいた盆歌。
年を取っても、故郷の雰囲気にかえり、
歌っている姿がよく分かります。

<馬客(天)>
いい句ですね。体に染み込んでいるんですよね。

山の端に没日ためらふ送り盆  芳生
<春愁(天)>
み霊送る・・・雰囲気が好きでした

<秋童子(地)>
いまだこの世を去りがたく。

<丹仙(天)>
盆という題詠にふさわしい、格調高き句。


・7点句

大花火盲導犬の目が動く  治男
<あや(人)>
楽しむ人々、でも盲導犬にとってはいつにも増して大変なお仕事場所です。

<水(天)>
目の不自由な主人に、花火を中継しようと懸命になっている盲導犬の、いじらしい光景かと理解しています。

<雛菊(人)>
刺激に対して動じない分別を身につけている盲導犬。花火のドーンドーンと上がる。犬の目がかすかに動いたという。なんといういじらしさ。

<明子(地)>


盆踊り手振りで加はる車椅子  春愁
<鞠(天)>
盆踊りの決め手は手振りです。車椅子からでも充分に美しい。

<白馬(地)>
誰でも踊り出したくなるのです。

<馬客(地)>
踊りの輪の皆が笑顔で「はいってはいって」と誘って
いるんですね。


・5点句

負うた児の動悸背に聞く花火かな  馬客
<鞠(人)>
背ナの幼子にとって、こんな大空一杯の打ち上げ花火は初体験なのでしょう。

<治男(天)>
若い親子でしょう。花火の音と美しさに驚き、
背の児は胸ときめかし、見ているのでしょう。
その親も児と花火に感激しているようですね。

<秋童子(人)>
背の児も花火に胸ときめかせ。

盆花や声を出さずに声を聞く  白馬
<英治(天)>
声なき先祖に囲まれて。

<丹仙(地)>
声を出さずに声を聞く、沈黙こそ死者との語らいにとって必要です。


・3点句

くらやみの濤に消え行く揚花火  柊
<芳生(天)>
海上の花火でしょうか。美しい光景です。

食べるものひたすら作り盆終へぬ  雛菊
<素蘭(人)>
お疲れ様としか…

<馬客(人)>
長男の嫁である我が女房は「この句が天」と言って
ききません。

<明子(人)>


長崎がNAGASAKIとなる残暑かな  素蘭
<水(地)>
原爆投下から60余年を経て、平素はのどかな観光の「長崎」ですが、夏になると、全世界から人々が集まり、平和を祈る「NAGASAKI]になる。

<ぽぽな(人)>
国内では「ナガサキ」とした場合、被爆地長崎を意味することは定着しているようだ。NAGASAKIと大文字下場合、国際的にその意になるか、というところ。

長崎の山口仙二逝きし夏  秋童子
<明子(天)>



・2点句

揚花火山湖しずかに更けゆけり  芳生
<柊(地)>
その静かな佇まいが良い。

終曲はショパンときめる遠花火  春愁
<素蘭(地)>
「革命」?

手花火に孫より祖父母はしゃぎおり  秋童子
<あや(地)>
なるほど・・・

花火はなびハナビとなりて雨に消ゆ  丹仙
<水(人)>
打ち上げ花火の散りゆく連鎖を、三種の文字で表現したのが面白い。雨を配したのもよい。

<白馬(人)>
打上げられた花火がだんだん消えてゆく様を字で表した。また、雨でお流れになった花火大会かも。

水欲しとうめきの声や夏の果  素人
<松風子(地)>
凄惨な原爆のありさまが「夏の果て」の季語で浮かびあがりました。

夢のなか歩みゆくごと遠花火  明子
<ぽぽな(地)>
「歩みゆくごと」が良い。

湧水に仕掛け花火は富士の山  白馬
<雛菊(地)>
景が大きいな。花火と富士山。


・1点句

うましめんかな読む人の首の汗  雛菊
<英治(人)>
臨場感。

谺して都市に消えゆく花火かな  ぽぽな
<松風子(人)>
町中の花火特有の景が、どこか寂しさをもって描かれています

終戦日聖母の欠けし貌仰ぐ  丹仙
<柊(人)>
長崎の原爆が鮮明。

長崎へわざわざ疎開敗戦忌  鞠
<治男(人)>
 何の予見もなく、長崎へ疎開してきて、
被爆したのでしょうか。人生何が起こるか
分かりません。

新盆の迎え火囲む妻、子、孫  秋童子
<丹仙(人)>
妻、子、孫という読点の効果を巧みに使いましたね。

盆棚に水兵帽の若き父  松風子
<芳生(人)>
原爆に焼かれた人が影と化す。恐ろしいことです。