第224回桃李9月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:秋冷、秋蝉、敬老の日(不言題)

兼題T 秋冷
兼題U 秋蝉
兼題V 敬老の日(不言題)

9月15日(月) 投句開始
9月22日(月) 投句締切 翌日選句開始
9月29日(月) 選句締め切り
9月30日(火) 披講

投句: 素蘭、芳生、秋童子、馬客、春愁、省吾、楽千、あや、翔河川、素人、明子、英治、治男、ぽぽな、丹仙
選句: 春愁、芳生、楽千、英治、あや、素蘭、翔河川、ぽぽな、省吾、治男、雛菊、秋童子、馬客、明子、丹仙

披講

・8点句

秋蝉や此岸は焔立つところ  素蘭
<あや(天)>
秋蝉の鳴く此岸に生きる我々よ・・・

<翔河川(地)>


<ぽぽな(地)>
「此岸は焔立つところ」の捉え良し。

<治男(人)>
秋蝉は何となく、侘びしさを感じます。
故人を偲ぶ、ほむろでしょう。

秋冷やモロッコ革の美装本  素蘭
<ぽぽな(天)>
ひんやりなめらかな皮の感触がつたわってきます。

<雛菊(天)>


<馬客(地)>
モロッコ革の表紙のひんやりとしなやかな手触りが
秋を感じさせる。


・7点句

大方のことはし尽くし秋の蝉   あや
<楽千(天)>
かくありたしとは思うが、何かやり残している。

<素蘭(天)>
されど埋み火なかなかに
なかなか消ゆる露の身の
露の世なればつくつくし
つくしこひしと風になる

<省吾(人)>
こうありたいもの。まだ時間はたっぷりあると思っているうちに体力がなくなっていることに気づき愕然とする。


・6点句

微笑みて席譲る娘よ酔芙蓉  秋童子
<芳生(人)>
花芙蓉のほうが良いような気がしますが。

<省吾(天)>
まだ若いつもりなのに若い女性から席を譲られ驚きと戸惑いで顔を赤らめる自分。また譲った彼女も心なしか頬を染めて微笑んでいる。いい感じです。

<丹仙(地)>
酔芙蓉が良いですね。娘さんの気立ての良さ、美しさを巧みに形象化しています。


・5点句

秋虹や母の元気を頼みとす  あや
<素蘭(地)>
御意

<丹仙(天)>
老老介護の身として共感。介護する方も万全というわけにいかず、介護される老母の元気さに安堵することはありますね。

夕空の端に秋蝉の声ひとつ  ぽぽな
<あや(地)>
秋蝉の置かれ方に、とても惹かれました

<秋童子(天)>
最後のひと鳴きでしょうか。夕空に余韻が残ります。


・4点句

秋冷の朝より空の深青し  楽千
<翔河川(人)>


<明子(天)>
ひんやりとした朝の空気と空の色がいきいきと感じられます。

手も口も味噌も八丁蜻蛉かな  素蘭
<春愁(人)>
面白い

<英治(天)>
面白い。

晩節を汚すなかれと秋の蝉  素人
<芳生(天)>
秋蝉の声に読み取った教え

<丹仙(人)>
自戒の句として頂戴しました。


・3点句

古酒新酒セピヤの父に供へけり  楽千
<省吾(地)>
下戸の父でしたが何かの時には食卓にお猪口と徳利がありました。その父の享年をはるかに超える歳となりました。

<明子(人)>
汲み交した記憶が蘇る一日ですね。

秋蝉やなお力ある鳴き納め  馬客
<春愁(天)>
余生の力

秋冷の富士泰然と雲に坐す  芳生
<春愁(地)>
風格ある富士の景

<雛菊(人)>


秋冷や仮設の床も傾きて  秋童子
<翔河川(天)>


秋冷や信濃に旅の昔あり  あや
<治男(天)>
信濃の旅の思い出でしょう。若さと良き事を
体験し、今も、昔の語りぐさなのでしょう。

夕かなかな探しあぐねし疎開あと  春愁
<馬客(天)>
昭和19年、縁故疎開した元疎開児童としては
天に採らざるを得ない句であります。


・2点句

敬老日フラダンスする女性達  治男
<雛菊(地)>


死者により生かされて居り秋の蝉  丹仙
<英治(人)>
合点だ。

<ぽぽな(人)>
命ある事の不思議と有り難さを感じる一瞬だったのですね。

秋冷のSLを背に待つ身かな  英治
<楽千(地)>
旅のSLか飾り物か。秋冷の中何を待つのか気にかかる。

秋冷や終活にむけ箇条書  素人
<芳生(地)>


爺婆を囲む円卓秋日和  素人
<治男(地)>
 敬老の日でしょうか。秋日和で
和やかな雰囲気が出ています。

納骨の日の空深く法師蝉  治男
<明子(地)>
胸に迫りくる蝉の声です。

日翳れば声失ひぬ秋の蝉  明子
<英治(地)>
身につまされる。

ひやひやのスコットランド石の城  春愁
<素蘭(人)>
秋のヤードに薔薇の花咲く

<秋童子(人)>
「わが命運は?」。 エディンバラの古城も、さぞひやひやしたことでしょう。

間に合ふか間に合はないか秋の蝉  楽千
<秋童子(地)>
面白いですね。まるで蝉たちが汗を飛ばして急いでいるような。


・1点句

秋蝉の路地より僧のスクーター  英治
<馬客(人)>
こりゃかなり時代が古いですね。最近のお坊さんは
あまり出歩きません。
ま、俳味があって結構。

介護てふ言葉身に沁む齢に入る  芳生
<あや(人)>
敬老の日を祝われる者としての心情でしょうか

何一つしたではなきに菊日和  馬客
<楽千(人)>
静かなる老境、これでよし。