第23回7月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:遠雷、海月(水母・くらげ)、やせ我慢(不言題)

夏の句(雑詠)または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)
は「遠雷」または「海月(水母・くらげ)」
(これは雲外さんのご提案です)
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、
「やせ我慢」です。

7月15日(木)投句受付開始
7月22日(木)投句締切、選句開始
7月29日(木)選句締切、披講

投句: 優子、朝美、有季、由起、保乃、池之端、葉子、かおる、暁星、香世、重陽、木菟、悠久子、明日風、碁仇、安康、楽人、涙笑
選句: 暁星、重陽、葉子、木菟、涙笑、香世、碁仇、楽人、池之端、悠久子、安康、明日風、浜

披講

・9点句

かりそめの逢瀬遠雷鳴り止まず  木菟
<楽人(天)>
道ならぬ恋だからだろうか、神の怒りの如き雷が鳴り止まぬのは。

<悠久子(天)>
微かな雷鳴、ささやかな恋?
どんなストーリーなのかは知りませんが、叙情性を頂きます。

<安康(天)>
今ふうにいえば、「ふたまた」の恋でしょうか?
遠雷、胸のときめき、むらだつ雲にも似て不安と期待が交錯し、沸き立つ様子が眼に浮かびます。
遠雷轟。怦怦心里、与君逢。
(訳:遠雷や、心どきどき、君と逢う)


・6点句

夏風邪のくらげとなりて漂ひぬ  かおる
<木菟(地)>
 風邪も滅多に引かなくなって、たまに引くと、体中の疲れがいっぺんに
出てきてしまう。うつらうつらと、たまの休息を楽しむ境地です。

<香世(人)>
くらげ、となると、どうしてもフワフワ。
頭フワフワもあり。
家人もやさしくしてくれれば、(かな?)風邪もまた良し。

<池之端(天)>
くらげというと海に浮いている姿を詠む句が多いけれど、夏風邪と結びつける
なんて新鮮ですね。新鮮なだけでなく、感じもでているし、、、。ただ、最後
の「漂いぬ」というのが惜しいなあ。「くらげ」を使っている限り何か他の
言葉を使ってみてはどうか¥¥¥。御本人が実際風邪をひいておられるなら
おだいじに、、。

汗一斗電気代節約之結果  暁星
<池之端(人)>
いい句じゃないですか。この漢字群にも気合いが伝わってきます。
暑さのうえに、さらなる我慢ですね。いっそ冷房売っちゃったらどうです?
わたしの部屋には冷房がないぞ!でもスイッチをいれるの我慢する必要も
ないんです。

<安康(地)>
奇抜です。漢字だけの句作り、「やけくそ」感が好きです。
汗一斗。倹約電費、買卑酒。
(訳:汗一斗、電気代節約、ビール買う)
(「卑」正しくは「口」偏がつきます。)

<浜(天)>



・5点句

独り身のこの軽きこと熱帯夜  碁仇
<木菟(人)>
 初めから独り身ではこうは実感できないですね。単身赴任か、たまの
留守番か、大の字に寝てのびのびしている姿が、浮かんできます。

<香世(地)>
独り身でない不自由さを感じるこのごろ。
でも、独り見には独り見ならではのつらさもあるようで。
はい、隣の芝は青いです。

<楽人(地)>
熱帯夜という語の響きは現代的ですが、この句には古典に通じる趣があると思います。
不言題では、これが一番でしょう。

一枚のくらげは浜で乾いたり  池之端
<涙笑(地)>
残骸に哀愁が漂ってます。

<香世(天)>
くらげ、でなんとか句を作りたかったのですが、漂う、のイメージから広がりませんでした。
だから、この着想に感心いたしました。新鮮です。
乾いたくらげは、雲丹であえたら美味しいですね。ビールもうまい。

祖母の忌の祖母の業なる蠅叩  碁仇
<葉子(天)>
祖母の忌にふと目にとまった蠅叩き。なんでも無駄にしないで利用し、役にたつものを作っていた昔気質の祖母を懐かしむ気持ちがよく出ている。

<悠久子(地)>
こういうシーンでお祖母さまを偲ぶというのが、なんとも。
鮮やかに浮んで来るその人の動きなんですね。

つらくても向日葵みたいになれるかな  保乃
<重陽(人)>
思いが伝わる。
「なれるよ!」頑張ろうよと声をかけたくなる。

<涙笑(天)>
前向きな感じがいいです。

<碁仇(人)>
作者の素直さを採った。俳句らしくはないが、一行詩としてみれば○。
下手に俳句らしくすると、理屈っぽくなりそうだ。


・4点句

遠雷を父の小言のごとく聞き  葉子
<木菟(天)>
 遠雷の音と、聞き飽きた父の小言、その類似は言い得て妙ですね。

<涙笑(人)>
経験あります。(^^;;;

波うごき我もうごきて海月かな  涙笑
<池之端(地)>
なんかいい。
解釈を本人にききたいです。

<明日風(地)>
自分の意志とは無関係に漂うことは、時にとても気持ちが良いです。

美しき毛虫ゆるゆる渡りをり  香世
<重陽(天)>
毛虫は嫌いなんですが、そのままで、実に好感のもてる句。

<安康(人)>
虫めずる姫君の句なのでしょうか。
わたしは、あのカラフルないも虫の「ぶよぶよ」感がたまらなく嫌なのですが、生きていくものへのわけへだてのない視点、恐れ入ります。
毛毛虫。揺腰漫歩、化粧濃。
(訳:毛虫さん、腰振る散歩、化粧濃く)


・3点句

海月なし漂ふ国をいかにせむ  葉子
<暁星(天)>
大不況だからねぇ。政治家連にはそろそろ何とかしてもらいたい!

夏焼けてじゅんと海入る大夕日  香世
<重陽(地)>
「焼けて」を不言にしたい句ですが・・。
「じゅんと」で、情景が伝わり、面白い。 

<明日風(人)>
「じゅんと海入る」という、見立ての面白さでとりました。

遠雷を枕に聞いて目覚めたり  涙笑
<明日風(天)>
さて、枕を使うほどの「本格的な」昼寝だったのでしょうか。
それとも病気療養中だったのでしょうか。
前者なら良いのになぁ・・などと気になる句であると思います。

遠雷や幼馴染みで夫婦なり  香世
<碁仇(天)>
遠雷と幼馴染みの夫婦の取り合わせがよい。迷わず天とした。
「遠雷や幼馴染みの夫婦(みょうと)なり」とした方がすっきりするが、
「幼馴染みで夫婦なり」と少しぎくしゃくした感じの方が良いように思える。
また、「ふうふ」と読ませたのも正解のような気がする。


・2点句

風纏い 夏芝の主 中堅手  明日風
<暁星(地)>
夏の甲子園もまもなく開幕。
今年は21世紀のプロ野球に通用する器が何人現れるでしょう?

遠雷に追われて海に風来る  安康
<葉子(地)>
眼前に広がる海の青さは涼しげだが、そよとの風もなく暑い。やがて遠雷が聞こえ、待望の風が吹いて来てほっとする。「遠雷に追われて」という表現がとてもいい。

銀河落ち海に砕けてくらげ浮く  安康
<碁仇(地)>
発想の良さと景色の大きさで採った。銀河は秋の季語、くらげは夏の季語、くらげに焦点があるので夏の句とわかる。但し動詞が3つあるのが気になった。


・1点句

大垣根刈り残したる残花かな  重陽
<葉子(人)>
お向かいさんには植木やが入って垣根がすっかり綺麗に刈り込まれた。そのなかにちらほら花が残っているのは、うっかりなのか、それともわざとなのか、興味のあるところ。我が家の植木やは相変わらず来ない。また電話せねば。

飛行機がいやでバカンス夏籠り  木菟
<暁星(人)>
先日全日空機がハイジャックされ機長が殺害されました。
墜落事故もあるし……僕も飛行機が恐くてたまりません(T_T)

抱きしめむ海月のごとき柔肌を  木菟
<悠久子(人)>
くらげみたいな?
溶けちゃうんじゃないですか?
何故か「夕顔」を思いましたので。

「毒薬」といふ香水の封を切り(ぷわぞんとルビをふりたい)  葉子
<楽人(人)>
男を殺すには刃物は要らぬ、ですね。