第238回桃李11月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:芭蕉忌、時雨、パリ同時テロ(不言題)

兼題T 芭蕉忌
兼題U 時雨
兼題V パリ同時テロ(不言題)

11月15日 (日) 投句開始
11月22日(日) 投句締切 翌日選句開始
11月29日(日) 選句締め切り 
11月30日(月) 披講    

投句: 松風子、素蘭、柊、楽千、白馬、素人、馬客、春愁、秋童子、翔河川、芳生、明子、あや、丹仙
選句: 楽千、素蘭、芳生、松風子、素人、白馬、翔河川、秋童子、馬客、あや、明子、丹仙

披講

・8点句

嵐峡の時雨を下る小舟かな  芳生
<松風子(地)>
一幅の水墨画をみるような景が描き出されました

<素人(人)>
雰囲気が出ていますね。

<翔河川(天)>


<明子(人)>
とてもクラシックな味わいのある句と思いました。

<丹仙(人)>
嵐山の景が如実に浮かびますね。


・6点句

義仲寺を出て琵琶湖へ翁の忌  柊
<馬客(天)>
ふと唇から漏れ出たような句。
その一句が、読む私に昔々の旅を忽然と思い出させた。
三井寺を訪ね、義仲寺に。詣でたあと湖畔のホテル
に一泊。思い出すな〜。

<丹仙(天)>
二つの地名、一方から他方へ旅する人の動きだけを詠んだ句。しかし、余計なものを一切省略した句が、芭蕉との結びつきによって、却って無限の余情を感じさせます。

社務所へと巫女走りゆく時雨かな  柊
<素蘭(天)>
北斎画的趣がありますね

<明子(天)>
モノクロの映像のなかで、巫女の袴の緋色が強く目に飛び込んできます。


・5点句

病妻に今朝の時雨の話など  馬客
<松風子(天)>
時雨をそえることで、しみじみとした情感が溢れ出します

<秋童子(地)>
今日は奥様の体調も落ち着いているのでしょう。ご夫婦のいいひとときです。


・4点句

時雨来て駅西口に灯が点る  楽千
<松風子(人)>
冷たい雨に濡れたあと、駅の灯りにほっとした感じがよく出ています

<秋童子(天)>
なぜか昭和30年代の駅前の風景が目に浮かびます。点るのも白熱電球の街灯です。

冬銀河無限の素数複素数  素蘭
<楽千(地)>
摩訶不思議なる天体を数理の素数複素数が解き明かす。終わりのないミステリーかも知れぬ。

<馬客(地)>
「銀河」も「数」も理解不能な矮小な私。
国境のない戦争は無限に続くのでしょうか。


・3点句

翁忌や伊賀の朝霧濃きことも  明子
<芳生(天)>
濃き朝霧が蕉翁を称えているようにも思えます。

枯野行く後ろ姿や桃青忌  松風子
<あや(天)>
風情があります

芭蕉忌の折り癖つきし旅の地図   芳生
<楽千(天)>
作者もまた無類の旅好き人間。地図の痛みが旅の多さを物語っている。

報復が報復を生むパリの冬  白馬
<素人(天)>
連鎖を断たねばなりません。

祀らるる小祠手合す翁の忌  あや
<素人(地)>
何を祈ったのでしょうか。

<翔河川(人)>



・2点句

痛ましき地球に上り冬の月  あや
<明子(地)>
どんな思いで月は地球を見下ろしているのだろう。

犬よりも主の走る時雨かな  秋童子
<芳生(地)>


枯葉散る阿鼻叫喚の只中に  松風子
<芳生(人)>


<あや(人)>
地獄絵のような

木枯らしの突如と荒みパリ燃ゆる  馬客
<翔河川(地)>


しぐるるや薄墨衣纏ふ街  素蘭
<丹仙(地)>
薄墨衣という言葉のイメージと響きが良い。

大使館の半旗を濡らす時雨かな  柊
<あや(地)>
重く痛ましい時雨

冬麗や報復拒む毅き夫  丹仙
<素蘭(地)>
ポンデザールに凍つる錠前


・1点句

凍て蝶やパリ慟哭の白昼夢  春愁
<馬客(人)>
ご遺族は心から、夢であってくれと願うことでしょう。

逆算の余生に拍車秋しぐれ  春愁
<楽千(人)>
六十越えればあとは逆算の人生、命の出し惜しみはご法度。

憎しみの連鎖を憎み冬を耐ふ  明子
<秋童子(人)>
武力の報復でまた憎しみが。歯がゆいことです。

芭蕉忌や何を言うても舌足らず  楽千
<素蘭(人)>
冬菫咲く峡の日だまり