第24回8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:涼風(りょうふう・すずかぜ)、踊(おどり・おどる)、夏の恋(不言題)

夏または秋の句(雑詠)または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)
は「涼風(りょうふう・すずかぜ)」または「踊」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、
「夏の恋」です。
8月15日(日)投句受付開始
8月22日(日)投句締切、選句開始
8月29日(日)選句締切、披講

投句: 旅遊、葉子、香世、涙笑、安康、碁仇、木菟、悠久子、富章、重陽、雲外
選句: 涙笑、安康、葉子、碁仇、香世、木菟、旅遊、重陽、悠久子、ひとし

披講

・13点句

雌蝉の鳴けぬ想いも蝉時雨  碁仇
<安康(天)>
すごい!のひとことです。耳には聞えないが確かに存在する高周波の蝉しぐれを聞いた思いです。

<葉子(人)>
好きということを伝えられないもどかしさ、悲しさが蝉にたくされてよく表現されている。でもどんどんアタックなさっては。

<香世(天)>
現代ではないでしょう。これが恋句であれば。
人間社会では、女が鳴いて(告白して)男が泣く。
でも、恋でない社会は、まだまだ女は、鳴けず泣いてます。

<木菟(天)>
 内気で、どうしても想いをうち明けられない女性は、雌蝉のようですね。それで
も雄蝉は結果を気にせずに、下手な鉄砲も数打ちゃ当たるとばかりに、求愛の叫び
を挙げ続けている、と解釈したのですが如何でしょうか。

<悠久子(人)>
鳴けぬどころか、活発な女性達でしょうに。
この句も「想い」を気にしながらなのですが、選句しました。作者はあの人かな。

<ひとし(地)>
「雌蝉の鳴けぬ想いも蝉時雨」
ううむ。
小生の偏見からすると、「蝉」の重複をやめて
「雌蝉の想いも鳴けぬ時雨かな」
としたい。これで「蝉時雨」ということがわかるし、
どこか本物の「時雨」の侘びしさの余情も出るのではないだろうか。


・11点句

向日葵は一本にして野を占めぬ  旅遊
<涙笑(天)>
1本でも雄大。

<碁仇(天)>
広い野原に一本だけ咲いた向日葵が目に浮かんできます。
向日葵の堂々とした感じを見事に句にしたと思いました。
ただ、もう少し推敲の余地はあるような気がします。

<香世(地)>
存在感ですね。日に向かい、筋をとうす男一匹。
かっこいい!
首を切られないように。

<重陽(天)>
毅然としたこの句には、強い主張を感じます。
「一本にして」に力を感じます。


・6点句

八月や梵鐘一つ昼白き  重陽
<旅遊(天)>
「昼白き」は絶妙。こんな光景を句にしたいと思っていたが、この表現は気がつきませんでした。

<ひとし(天)>
句に風格がある。「昼白き」がなんともよい。


・5点句

涼風や 卒寿の母の 胡麻豆腐  雲外
<葉子(天)>
胡麻豆腐などというものは、買って食べるもの、と思っていたが、老母の作られるものを食べられる幸せは得難い。それもかなりご高齢の母君であればなおありがたい。本当に涼風に吹かれる思いがする。

<碁仇(地)>
九十歳の母を思いやる気持ちが良くでています。
きっとその母は胡麻豆腐が好物なのでしょうね。
いい取り合わせだと思いました。


・4点句

夏風邪や無口な夫の卵焼き  香世
<葉子(地)>
近頃は厨に入ることをためらわぬ夫族が出てきたことは喜ばしい。どんな味の卵焼きであろうか。栄養をつけて早く風邪がなおればよいが。

<碁仇(人)>
自分は夏風邪を引いてしまい、寝込んでいる。
そこで、滅多に炊事などしたことがない夫が卵焼きを作った訳ですね。
出来が良かったかどうかは別にして、無口な夫の優しさが伝わってきます。
そこで作者は、思ったのでしょう。
「たまには風邪を引くのも良いかな?」

<重陽(人)>
何気ない情景描写であるが、ご夫婦に通う、いたわりと感謝の気持ちが、
ほのぼのと伝わってくる。


・3点句

白雲を懐にして虹がたち  葉子
<悠久子(天)>
「白雲を懐にして」がなんとも優しくて、しかも雄大で。
白から生じた七色もより美しいと感じます。

薄皮となりし想ひ出日焼跡  碁仇
<安康(人)>
薄皮がはげればまた新しいみずみずしい肌が現れる。
わかりますが、男の立場からは、さびしいですね。

<木菟(地)>
 「夏の恋」の副題があれば、この句も光彩を放って来ますね。

サルビアの紅なお赤き道の駅  旅遊
<木菟(人)>
 「道の駅」なるものを一度も訪ねたことがないのですが、きっとこんな風に、サ
ルビアの花が咲いていたりして、鄙びた風景なのでしょうね。

<重陽(地)>
田舎の真夏の物憂げな真昼。サルビア、紅、赤の重なりが成功している。


・2点句

青臭き 蛍のにほふ 手をとりて  雲外
<悠久子(地)>
「夏の恋」をテーマにした情景として一番好きでした。
普通は、五七五の間を空けた書き方は、頂かないことにしているにも拘わらず。

ゴキブリが 2疋もいたり ビルのした  富章
<安康(地)>
確かに、天は人を選ばず、生き物を選ばず、恋を許すのでしょう。
憎しみをこめてゴキブリを追うわが身の罪深さを思い知らされます。

待ちわびてしらじら明ける熱帯夜  木菟
<涙笑(地)>
んー。如何にも夏の。


・1点句

散歩道朝顔いまだ眠りおり  旅遊
<涙笑(人)>
さらっとしていていい。

涼風やコーヒーの香も流れ来て  悠久子
<ひとし(人)>
この感じが好きだ。珈琲が飲みたくなってくる。

すずかぜに眠れまだ見ぬ幼き児  悠久子
<香世(人)>
若妻でしょうか。
始めての妊娠。もう、胎動を感じる日々。
静かに、親子の会話が始まっている。