第243回桃李四月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:朝、夜、啄木忌(不言題)

兼題T 朝
兼題U 夜
兼題V 啄木忌(不言題)

4月15日 (金) 投句開始
4月22日(金) 投句締切 翌日選句開始
4月29日(金) 選句締め切り 
4月30日(土) 披講    

投句: 芳生、素蘭、楽千、松風子、柊、愛子、英治、馬客、翔河川、白馬、明子、丹仙、秋童子、春愁
選句: 芳生、楽千、白馬、秋童子、英治、素蘭、松風子、柊、翔河川、馬客、明子、丹仙

披講

・9点句

吾も知る母の軽さや春の虹  白馬
<芳生(天)>
「たはむれに母を背負ひてそのあまり・・・」の歌を上手に詠み込んでいます。「春の虹」が効いています。

<秋童子(天)>
わが母も、最晩年はあまりに軽くなっていて、驚きました。

<素蘭(天)>
我が母も段々…


・6点句

静けさや八十八夜の犬の耳  白馬
<楽千(人)>
しんと静まり返った中に何かが息吹く気配。犬の耳がそれを捕らえる。

<柊(地)>


<丹仙(天)>
犬が家の中に居て愛犬家の作者に抱かれているのか、それとも家の外に居て眠っている情景なのかで、句の意味ががらりとかわってしまう。前者だと、主題は、犬の耳(犬の感情のシンボルか)を気にしている愛犬家の孤独なしかし優しい心を感じます。後者だと、芭蕉の「古池や」の句のごとく、作者は犬そのものになって、八十八夜の大自然の鼓動を聞いている。単独の俳句よりも俳諧連歌のなかで出てくると、こういう多義性が活きてきますので、私の好きなタイプの句です。

若草に大の字に寝て歌人の忌  芳生
<英治(天)>
テーマがよく反映されている。

<明子(天)>
啄木忌という不言題に一番適っていると思います。

花の宵アンクルトリスひょっこりと  春愁
<楽千(地)>
ほろ酔いこそ極楽、トリスおじちゃんの千鳥足が爛漫の夜桜を巡る。

<翔河川(地)>


<馬客(地)>
あのオジサン、好きなんですよ。


・5点句

春愁や肉叢薄きたなごごろ  明子
<白馬(天)>
啄木の心象がよくでています。

<松風子(地)>
手にあらわれる労苦の様が、啄木忌にふさわしい

また一つもの芽擡げて昨夜の雨  芳生
<翔河川(天)>


<明子(地)>
芽起こしの雨ですね。


・4点句

「怖いけん」車中で夜明かし肥後朧  秋童子
<素蘭(地)>
環太平洋地震帯の日本、明日は…

<丹仙(地)>
句だけでは大地震のことは解りませんが、4月句会の「今」を背景におけば、味わい深い句です。「こわいけん」は車中の人の言葉ですが、それは揺れ動く大地を包む自然への応答でもあるでしょう。

避難所の床花冷えの夜続く  馬客
<楽千(天)>
環境最悪で眠れない。常であればこの寒さも花冷えと言うものを。

<秋童子(人)>
まだまだ長丁場。心配です。


・3点句

朧夜の三年坂にさしかかる  柊
<馬客(天)>
こわや・こわやの。

朽ち果てし悲しき玩具春の波  松風子
<柊(天)>


千金の奢りにけふの朝寝かな  素蘭
<白馬(人)>
春眠の値千金。12時過ぎ迄-----。

<馬客(人)>
二度寝の、あの蕩けるような春の朝の恍惚感。

<明子(人)>
オーバーな表現が楽しい。

春の夜や小櫛挿す汝は美しき  丹仙
<松風子(天)>
情緒纏綿とした春の夜の気分が横溢しています


・2点句

朝寝することも楽しみ旅鞄  明子
<素蘭(人)>
まことに…

<丹仙(人)>
春の旅の雰囲気を自然体で詠んでいるところを頂きました。

たんねんに茶渋を拭ふ朝曇    芳生
<英治(地)>
落ち着きがある。

どうしても朝寝はできぬ妻と居る  馬客
<秋童子(地)>
これもなんだか大変そうですね(笑い)。

夜を徹し桑の芽守る火を焚けり  明子
<芳生(地)>
「霜くすべ」ですね。

ふるさとの形状記憶夜店の灯  春愁
<白馬(地)>
上五と下五を繋ぐ中七が絶妙。


・1点句

天地の縢りを隠す朝霞  愛子
<松風子(人)>
天地の「縢りを隠す」の表現に感服しました

一握の砂さらさらと春の刻  丹仙
<英治(人)>
春宵一刻の雰囲気。

不来方や虚空彩る石鹸玉  素蘭
<翔河川(人)>


じっと掌を視ている人の日の永し  馬客
<柊(人)>


早世の歌人を悼み桜散る  柊
<芳生(人)>