第252回桃李1月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:年立つ、雪、退位(不言題)

兼題T 年立つ
兼題U 雪
兼題V 退位(不言題)

1月15日 (日) 投句開始
1月22日(日) 投句締切 翌日選句開始
1月29日(日) 選句締め切り 
1月31日(火) 披講  

投句: 楽千、素蘭、芳生、春愁、秋童子、鈴居、英治、白馬、素人、松風子、翔河川、馬客、丹仙
選句: 白馬、楽千、芳生、英治、素人、馬客、春愁、素蘭、秋童子、翔河川、松風子、鈴居、丹仙

披講

・18点句

妻一語吾も一語や雪の夜  楽千
<白馬(天)>
初雪だね。そうね。

<芳生(天)>
雪の夜の静寂がよく伝わってきます。

<馬客(天)>
「雪?」「雪」

<素蘭(人)>
「妻がゐて夜長を言へりさう思ふ」(森澄雄)を想起しましたが、
「一語」に「一語」の雲ゆきって、微妙、、、

<秋童子(天)>
静かな雪の夜です。「どさ」「ゆさ」のやりとりを思い出しました。 昔、朝日新聞の「新人国記」で紹介された津軽の人たちの雪道での挨拶です(「どこ行くの」「風呂さ」)。

<翔河川(天)>


<丹仙(地)>
雪の夜の二人の親密なる静けさが伝わります。


・7点句

抱き抱ふ焼きたてのパン雪催ひ  春愁
<英治(天)>
フランスパンか。

<素人(地)>
暖かい。 ほっとする。

<翔河川(地)>



・6点句

皇后の御心如何に初茜  馬客
<春愁(天)>
平民皇后のご苦労いかばかり

<鈴居(天)>
陛下の愛情深くあり

年立ちぬ憂き世の憂さの晴れぬまま  秋童子
<白馬(地)>
過去はどんなにつらくとも-----。

<芳生(地)>
「めでたい」とばかり言っていられない世です。

<松風子(人)>
年改まるといえども暦の上でのこと。世の中の憂さは消えることなく、引き継がれてゆく、という感慨句

<鈴居(人)>
重くあります。


・4点句

年立つや猫町ならば己時  素蘭
<翔河川(人)>


<丹仙(天)>
「猫町」に萩原朔太郎のナラティブを重ね、世界を己の表象としてみた先哲の構想力の戯れを感じました。夢のなかの猫は、おのずから「おのれ」となるでしょう。猫はシュレーディンガーの猫ならばいとおもしろし。朝永振一郎の「量子力学的世界像」を思い浮かべつつ、御かへし:「光子(みつこ)の窓を通る初夢」

雪の野を一両電車ゆく津軽  素人
<芳生(人)>


<英治(人)>
いかにもの句。

<秋童子(地)>
絵になる風景です。

葡萄牙譚詩の旅の年立ちぬ  丹仙
<春愁(地)>
バラードのの旅・・・どんな旅?

<素蘭(地)>
  ナザレの町に初鶏の聲


・3点句

寒月や象徴と呼ばるる一生  英治
<素蘭(天)>
まこと寒月、まさに観月。

就任の誓ひ空しき雪催ひ  丹仙
<素人(天)>
どうしようもないやっちゃ。

父逝きて暗き天より雪降りぬ  鈴居
<松風子(天)>
天に意思あるごとく雪がしんしんと降りつもる感じが出ています

ふるさとの雪の匂いよ降る音よ  秋童子
<素人(人)>
ふるさとは遠くにありて思うもの。

<松風子(地)>
かつて雪国に住んだことのある人にあっての、雪の感慨がよく出ています

雪被き黙いや深き蛇笏句碑  芳生
<楽千(天)>
この里に根付いた詩人の碑あり、山国の雪は深い。


・2点句

衣を正し畳のへりも年立ちぬ  翔河川
<鈴居(地)>
年改まる

贖罪の旅務め上げ冬日和  秋童子
<楽千(地)>
戦争のあった昭和も遠くなった。が贖罪の年代の余生が続く。

末吉を細き頼りに年立てる  松風子
<英治(地)>
こんなところだろう。

平成の御代を尽くして寒夕焼  楽千
<馬客(地)>
ゆっくりお休みください。

米国に嵐の予兆年立てり  素人
<白馬(人)>
米国発、世界恐慌か?

<春愁(人)>
その通りです


・1点句

こんこんの雪を初めて見るをさな  英治
<秋童子(人)>
どんな表情を見せてくれたのでしょう。

年立つやしづかに据る四方の山    芳生
<楽千(人)>
世の中の始動する前の一刻、山々も静まり眠るが如し。

もののふの八十の書物を試筆かな  素蘭
<丹仙(人)>
「退位」の不言題の中では、この句がユニークでした。「退位」をやんごとなきお方だけのことと考えずに、他人事ではなく、自分自身に重ねたらどうなるでしょうか。八十路にて肉体と精神の衰弱から義務が果たせぬという責任感から解放された後でこそ、今上陛下には、健康を回復され、あたらしきことにチャレンジする老人の自由を満喫して頂きたいものです。耄碌も創造性のはたらきの中にあります。

一向聴牌の人生宜し年新た   春愁
<馬客(人)>
イーシャンテン人生、それもまた良し。