第28回句会桃李定例句会(10月)披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:酒、子(供)、遊ぶ(遊び)不言題

秋の句(雑詠)または題詠
有言の題詠(その言葉を使う)
は「酒」または「子(供)」
不言の題詠(その言葉を使わずに、心を詠む)は、
「遊ぶ(遊び)」です。

10月15日(金)投句受付開始
10月22日(金)投句締切、選句開始
10月29日(金)選句締切、披講

投句: 旅遊、碁仇、暁星、香世、渓美、涙笑、葉子、重陽、木菟、悠久子、省吾、楽人、雲外、富章
選句: 葉子、雲外、旅遊、木菟、香世、涙笑、楽人、重陽、松、悠久子

披講

・11点句

濁り酒捨てし故郷のふと見えて  葉子
<旅遊(天)>
濁り酒だからこそ、このような思いがふと脳裏をよぎるのでしょう。
的確な表現だと思います。

<木菟(人)>
 濁り酒は秋の季語なのですね。それを知ってから、一そうこの句が好ましく思えました。

<香世(地)>
地酒ブームといえど、どぶろくは今も味わえるのでしょうか。
現在の地も満足であるが、時おり、なにかが故郷を思い出させる。

<楽人(地)>


<悠久子(天)>
「濁り酒」と「捨てし故郷」がいかにも秋の夜らしい、「ふと見えて」がまたなかなか。
一面、付き過ぎとも言えるのでしょうが、それもここまでピタリですと、『天』です。


・8点句

あけび熟れ内緒のことを聞きし夜  香世
<葉子(天)>
このあけびは目前にあるのだろうか。包みかくしかねて内緒話をしてしまう時が来たことが、「あけび熟れ」とうまく重なっている。

<雲外(天)>
アケビは熟れると淡い紫に色づき、やがていみ割れて果肉と種が
露わになる。内緒の話と呼応して、秋のふかまる夜の匂いも。
妹の恋情がらみの話を兄が聞いてやったのか。余韻馥郁。

<重陽(地)>
熟れたあけびと内緒事が呼応して不思議な響きがある。


・6点句

落暉いま峠の芒燃えたてり  旅遊
<雲外(地)>
西に傾く晩秋の陽射しを逆光にうけて、燃え立つように銀色に輝く情景。
それも空がひときわ高く感じられる峠の薄のほむらですか。
一幅の絵画ですね。

<木菟(天)>
 落暉いまと古めかしい言葉を使って描いた美しい景色、しびれます。

<楽人(人)>


だれ一人子は帰らずに盆がきて  葉子
<重陽(天)>
何気無い句に、世相と親の情をにじませた秀句。
この裏に賑わった一時も浮かんでくる。

<松(天)>
わたしゃ、こういう親になりたかった。


・5点句

秋刀魚焼く父の威厳は腹に在り  碁仇
<葉子(人)>
まめまめしく秋刀魚を焼いているお父さんだが、バカにしてはいけない。家長としての威厳はしっかりとそなえているのだ。もうもうたる煙の向こうの父の姿は頼もしい。

<香世(人)>
厨房に慣れないお父さんが、「俺にまかせろ。秋刀魚はなあ......」
なんて大きな声でしゃべりながら、焼いているのでしょうか。
さすがに、おとうさんは貫禄の太鼓腹。

<楽人(天)>
微笑ましいと言うか、何というか…。「腹に在り」は良いですね、ユーモラスで。

赤い羽根かんざしのごと髪刺す娘  香世
<木菟(地)>
 どんな髪型が似合うだろうかと、いろいろ思い浮かべてみても、イメージが浮かびませんでしたが、 すこしおきゃんな可愛い女の子は見えてきました。

<涙笑(天)>
鮮やかな赤が見えます。


・3点句

新酒一本いささか酔ひて持帰る  悠久子
<香世(天)>
きっと仲間とのいいお酒だったのでしょう。
家で待つ妻とも、この美味しい新酒を酌み交わしたいと
思った、のかな。


・2点句

欺かれ故あることと寝待月  重陽
<葉子(地)>
欺かれても故あることと自分を得心させる心の寂しさがよく出ている。

さわやかに父を越えゆく子の背丈  渓美
<悠久子(地)>
自然な、使われている言葉通りの爽やかな句だと思います。
私にもその情景は思い出せます。

夫あり子もあり女の秋しぐれ  木菟
<松(地)>
グランドオペラの恋物語でないから、見ているものは困る。

饒舌となりし姉妹のにごり酒  渓美
<涙笑(地)>
大きな声が聞こえてきそう。

霜降や座る人なき椅子二脚  葉子
<旅遊(地)>
原石鼎の「秋風や模様のちがう皿二つ」ふと思いだしました。「椅子二脚」にとら
われた感想でしょうか。しかし、状況を的確に捉えた良い句だと思います。


・1点句

紅き菊ちぎりて笑ふ二才の子  悠久子
<松(人)>
ホラー映画の一場面みたいだけど、本当は邪気がないんだ、多分。

新酒酌む諸味つぶやく蔵の内  楽人
<雲外(人)>
酒が醗酵するときって、本当に泡の弾ける音がするらしいですね。
蔵の中の壁にも天井にも酵母菌が棲みついているのだとか。
「新酒酌む」を「新酒掬く」としたら刀自になっちゃうのかしら。
今しもボ-ジョレ-・ヌ-ヴォの時期。「日本酒」はフランス語でも
”Sake'”です。

秋の空窓枠ほどの水彩画  省吾
<悠久子(人)>
病室の窓黄落の百号よ 辻田克巳

俳句を始めた頃、とても好きだった句を思い出しました。多分合っていると思います。

嫁きし子の部屋の広さや秋の雲  渓美
<重陽(人)>
句意はお見事。深閑として、秋空の雲ですね。
ただ、「嫁きし子」を「ゆきしこ」と読むのは無理では?

長い夜にふたりで交す無言酒  省吾
<涙笑(人)>
喧嘩でもしたのか。それともシミジミしているのか。