第280回桃李5月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:麦、繭、祭

兼題または当季雑詠

兼題T 麦
兼題U 繭
兼題V 祭

5月19日(日) 投句開始
5月26日(日) 投句締切 翌日選句開始
6月 2日(日) 選句締切り  
6月 3日(月) 披講    

投句: 英治、秋童子、春愁、しゐ、素蘭、楽千、松風子、素人、明子、実生、鈴居、翔河川、丹仙
選句: しゐ、実生、秋童子、英治、翔河川、素人、鈴居、素蘭、明子、松風子、春愁、丹仙

披講

・7点句

座布団に真田の家紋祭り笛  春愁
<英治(天)>
情景が浮かぶ。

<明子(人)>


<松風子(天)>
時代を引きついでゆく伝統ある祭りの様子が見えて来ます

たたら踏むリズム揃ひし祭足袋  松風子
<秋童子(天)>
見事な足さばき。いつもの担ぎ手たちが揃ったのでしょう。

<翔河川(人)>
きれいな渡御は

<鈴居(人)>
勇ましそう。

<春愁(地)>
勢い余って


・6点句

麦秋やセピヤの母に片笑窪  楽千
<実生(天)>
思わず見てしまった母の遺影。片えくぼはなかったけど。

<素人(人)>
色褪せた写真と麦秋。

<春愁(人)>
妣の遺影は何時までも変わらず

<丹仙(人)>
セピアの母の微笑みは在りし日のまま、過去が今に蘇る小津安二郎の映画のようですね。


・5点句

天と地を2色に分けて麦の秋  秋童子
<翔河川(地)>
青と黄に

<鈴居(天)>
くっきりとした映像が潔い。

独り居をよしと言ふべし繭の部屋  しゐ
<鈴居(地)>
ひきこもり?

<素蘭(天)>
 白猫眠る日盛の家

町老いて祭太鼓を打つひとり  英治
<秋童子(地)>
ひとり、この町も祭も、絶やしてなるものかと。

<春愁(天)>
昭和の団地も世代交代

山繭や田舎にひとり暮らす母  素人
<実生(人)>
山繭、緑色かな。山繭見つけたよ。と書かれたハガキが届いて。

<翔河川(天)>
母の手のような

<松風子(人)>
山繭と母の姿が照応しています


・4点句

麦秋や国境にある歩哨小屋  素人
<しゐ(地)>
いつかどこかでこんな絵を見たように思う。佐藤忠良のスケッチだったろうか……。

<明子(地)>


麦ゆれて死は重きもの軽いもの  翔河川
<英治(人)>
考えさせられる。

<丹仙(天)>
「重きもの」から転調した「軽いもの」のもつ自然さに惹かれました。


・3点句

繭玉や詩の幼虫の深眠り  楽千
<明子(天)>


繭の糸繰れば聖なる胎の實や  丹仙
<しゐ(天)>
そのひそかな息づかいに、思わず手を合わせて祈りたいような気持ちになる。

ゆく声の太宰を語る麦畑  英治
<素人(天)>
意外性が思わぬ一句を生み出しました。


・2点句

朝触れの太鼓子が打つ陰祭  明子
<素蘭(地)>
本祭が楽しみですね。

金の鳥ビルの谷行く祭りの日  翔河川
<丹仙(地)>
古代と近代が雑居、現代日本の映像が如実に浮かびます。

今生の最後の稔り麦の秋  松風子
<英治(地)>
余命を告知された身か。

端棒の肩にめり込む神輿かな  秋童子
<松風子(地)>
神輿の躍動感が出ています

祭笛遠く聞こえて微熱かな  楽千
<実生(地)>
微熱出して、伏せている時にしか聞こえない祭ばやし。羨ましかった。とっても。

繭となりしんと静まるかいこべや  松風子
<素人(地)>
かさこそと桑食む音がふと気づくと途絶えているのです。


・1点句

銀幕のスター伝説麦は穂に  春愁
<素蘭(人)>
ほぼ伝説で知る伝説の銀幕スターながら未だイメージは鮮烈

まゆふつた なにかうごいた こわかつた  秋童子
<しゐ(人)>
何気なく手にしたものから伝わる思いがけない気配に、とっさにそれを放り出してしまうような、正直で罪のない恐怖。

むせやすき喉持つ齢麦香煎  しゐ
<秋童子(人)>
ご同輩。身につまされて1票。