第292回桃李五月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:薔薇、麦秋、給付金(不言題)

兼題または当季雑詠

兼題T 薔薇
兼題U 麦秋
兼題V 給付金(不言題)

5月15日(金) 投句開始
5月22日(金) 投句締切 翌日選句開始
5月29日(金) 選句締切り  
5月31日(日) 披講 

投句: 風子、楽千、松風子、白馬、しゐ、春愁、鈴居、素蘭、英治、実生、翔河川、秋童子、素人、明子、丹仙
選句: 春愁、楽千、鈴居、しゐ、英治、実生、白馬、翔河川、秋童子、素蘭、素人、風子、松風子、明子、丹仙

披講

・11点句

麦秋の風に押されて郵便夫  楽千
<しゐ(人)>
麦の波の中を自転車をこいでいく郵便夫、、、昔観た外国の映画のシーンが重なります。

<翔河川(天)>
畦道を行く自転車

<素蘭(地)>
さながらゴッホの絵のような

<風子(地)>
麦秋の風は気持ちよさそう。なぜか西洋の郵便夫の飄々とした姿が物語性を持って想像される。

<明子(天)>
風の中、家々を巡る郵便夫。黄金色をベースにした
穏やかな風景画のようです。


・10点句

薔薇垣の夜目にも白き家を訪ふ  明子
<鈴居(地)>
コロナ時期に久し振りに帰る実家を勝手にイメージしてしまいました。

<しゐ(天)>
シダネルの絵を思い浮かべました。

<翔河川(地)>
白薔薇の家

<風子(人)>
白いバラが塀の上から蔓を伸ばしている。暗くなってしまったが、ああ、あの白い薔薇の家だと近づいてゆく。

<松風子(地)>
夜の闇に白薔薇垣をめぐらせた家がくっきりと見えてきます


・9点句

麦秋や天地うねらすゴッホの眼  素蘭
<春愁(天)>
ゴッホ画が目に浮かびます

<白馬(地)>
ゴッホの絵の感じが良く出ています。

<秋童子(人)>
あらゆるものがうねる。それがゴッホですね。

<丹仙(天)>
ゴッホの眼が作者の目と一致した瞬間を捉えた麦秋の叙景が印象的。


・8点句

薔薇一本天地明るくして哀し  楽千
<英治(天)>
コロナ禍の今にひびく。

<松風子(天)>
明の景色と心の内の暗との対比が効いています

<明子(地)>
一本の薔薇の持つ力。薔薇の本質でしょうか。


・5点句

沈む日のぼつてり赤し麦の秋  明子
<春愁(地)>
夕日が真っ赤に燃えて沈む「麦の日」は、美空ひばりの忌日。

<鈴居(人)>
こんなイメージあるかも

<英治(地)>
絵画的。

薔薇の窓幾千年の磁場ありて  丹仙
<楽千(人)>
この窓この磁場、まさにポエム。

<英治(人)>
面白い。

<素蘭(天)>
  聖母マリアを祀る教会

ラスコーの壁画に牛馬麦の秋  風子
<素人(天)>
旧石器時代の遺跡で壁画が見もの。今は非公開とか。
取り合わせに魅かれました。

<丹仙(地)>
ラスコーの壁画が蘇り、麦秋の今此処に悠久の時間を感じさせます。


・3点句

極秘なる暗証番号日盛に  松風子
<春愁(人)>
馴染めないマイナンバー、盛天に晒されて・・・

<しゐ(地)>
「極秘」と「日盛」の対照的な組み合わせから、作者の何とも言えない居心地の悪さが伝わります。

咲きたれど六日の菖蒲でありにけり  明子
<秋童子(天)>
日本政府の対応は遅れましたね。それに比べドイツのメルケル首相の打つ手の何と早く、的確だったこと。国民への呼びかけもさすがでした。

泣きながら家路に迷ふ麦の秋  松風子
<鈴居(天)>
邪気なくほっとします。

花束でひとつになれぬ薔薇の性  翔河川
<白馬(天)>
下5が良いですね。

閉店か生き残れるか五月闇  秋童子
<白馬(人)>
飲食店の苦しみがよく分かります。

<素人(地)>
やっと業務が再開できそうですが、前途は多難。この懸念、共感します。

麦秋や鎌を怖るる古代人  丹仙
<風子(天)>
麦秋と古代人は何となく響き合う。事実はどうであれ、鎌を怖がる〜も何となく分かる気がする。何だかよく分からないところが魅力。

やや黒を帯びた青空麦に秋  しゐ
<楽千(天)>
群青を越えた「やや黒を帯びた青空」にぐっと季節が深まった。

紅薔薇を綺麗なうちに逆さ吊り  風子
<実生(天)>
25年目の記念日に25本のばらの花を贈った。以来毎年1本ずつ増やして、花束を抱えて鎌倉駅に降りたら、近所の旦那にあら今日が退職ですかとも言われた。よく台所の脇に逆さずりされていた。


・2点句

音楽の泉の薔薇の散り逝けり  しゐ
<秋童子(地)>
4月に亡くなった皆川達夫さんのことですね。長崎の隠れキリシタンが伝承してきたオラショの研究者でもあり、その原曲の1つが400年以上も前のスペインのグレゴリオ聖歌だったことを突き止めたのは、皆川さんならではの奇跡でした。日曜の朝、ラジオから流れていたあのお声も聴けなくなり寂しい限りです。

小雀を追いかけしころ麦の秋  白馬
<実生(地)>
洗濯用の金だらいに棒で支え棒して、米をまいて雀とれるぞと父に。獲れた試しなかったけど、戦争中はカスミ網で良く雀を獲ったと。何もしない父しか記憶にないけど、この句で思い出してしまった。

難解な申請手続き汗拭ふ  楽千
<素人(人)>
全く官吏のやることには不満たらたら。

<明子(人)>
如何にお金を出したくないかが透けて見えます。。

麦秋の風やママちゃり母と子と  春愁
<楽千(地)>
母と子の世界が豊かに広がる。

ひでり星のど高鳴らす陶かはづ  春愁
<素蘭(人)>
カエルの歌が聞こえてきそう

<丹仙(人)>
これは、晩夏の句になるので、梅雨入前の当季の叙景を重んじる俳句としては、問題がありますが、想像力を重んじる俳諧連歌の付句としてみると実に面白い。


・1点句

西洋の花舗にバラ選る人となる  英治
<翔河川(人)>
おしゃれな花屋

ぬばたまの夢に近江の晒かな  素蘭
<松風子(人)>
夢にも見た近江晒のような給費金

初夏の神棚におく給付金  風子
<実生(人)>
神棚、あいにくないけど、仏壇かな。ジャンボ宝くじは良く仏壇においたけど、当たったためしない。今度は、大丈夫。でも、麻雀好きだった父が使っちゃうかも。