第295回桃李8月定例句会披講

選句方法:天地人方式(各3、2、1点)
兼題:広島、長崎、終戦(不言題)

兼題T 広島
兼題U 長崎
兼題V 終戦(不言題)

8月15日(土) 投句開始
8月22日(土) 投句締切 翌日選句開始
8月29日(土) 選句締切り  
8月31日(月) 披講  

投句: 楽千、万歩、しゐ、秋童子、素蘭、水、春愁、実生、英治、寿美子、翔河川、素人、鈴居、風子、丹仙
選句: 風子、楽千、実生、寿美子、秋童子、春愁、英治、しゐ、鈴居、素蘭、素人、水、翔河川、万歩、丹仙

披講

・12点句

マリア像俯きしまま雨の百合  春愁
<実生(地)>
ユリは俯きかげんに花をつける。長崎は坂が多いけどマリア像は姿勢良くすくと立っておられる。ゆりはいつも慎ましい。

<英治(天)>
胸を打つ。

<素人(人)>
教訓が生かされていません。項垂れるのみです。

<水(天)>


<丹仙(天)>
8月15日は聖母被昇天の祝日。しかし長崎で被爆したマリアの像は、悲しみの聖母として俯いたまま雨に打たれています。


・11点句

蝉の聲六日九日十五日  丹仙
<実生(天)>
6日、アブラゼミそしてヒグラシ、9日ミンミンゼミ、15日ツクツクボウシ。温暖化でもヒグラシの鳴く声が聴こえると耳を澄まし、夏だと意識。広島・長崎・敗戦そして日航機事故、心の中に灯籠ともそうか。

<寿美子(天)>
名詞ばかり並べて言外の無念が切実です

<しゐ(地)>
8月に入って一層激しくなる蝉の声は、そう叫んでいたのですね。

<素人(天)>
6,9,15には特別な響きを持ちます。


・9点句

子の眉のその父に似て敗戦忌  しゐ
<風子(人)>
戦死した父親にそっくりな子も、七十五歳〜八十歳になるのだ。

<英治(地)>
ノーモア。

<翔河川(天)>
生のつながり

<万歩(人)>
戦死した父の残した遺児の顔に父の面影が

<丹仙(地)>
戦死した父ににた子供の成長によって、戦争から平和へと移行した時の流れを感じさせます。

無言館の黒き扉や秋の蝉  寿美子
<秋童子(人)>
扉を一歩入れば、そこは鎮魂の空間。若き画学生たちの遺作が、静かに訴えます。

<春愁(天)>
見る側に多くを語りかける無言・・・秋の蝉との取り合わせ。

<素蘭(天)>
  色無き風に歌ふララバイ

<水(地)>



・7点句

語られぬ幾多のその日長崎忌  しゐ
<秋童子(地)>
思い出すのもつらい。75年たっても、あの凄惨な光景は口にできないのですよね。

<鈴居(天)>


<素蘭(地)>
  ちちろ虫鳴くグラウンド・ゼロ


・6点句

語り部のまた一人減る広島忌  素人
<楽千(地)>
戦後体験者もだんだん消えてゆく。

<実生(人)>
戦争体験を思い出すだけでも8月嫌いと母が。もう短に語り部もいなくなった。

<万歩(天)>
年とともに風化してゆく原爆忌の象徴ともいうべき語り部の消失が痛ましい


・4点句

いまも わすれきらんとです 長崎忌  秋童子
<寿美子(地)>
長崎へ行ったことはありません
それでも中七が魅力的です

<翔河川(地)>
切れない切ない

空蝉の眼のひかる長崎忌  寿美子
<風子(地)>
幾多の犠牲者の無念を背負って、空蝉の眼が光ったように見えた。

<鈴居(地)>
蝉の目に映る光は背筋が凍る


・3点句

生きているまだ生きている敗戦日  英治
<風子(天)>
8月15日が来るたびに、生きていることに複雑な気持が纏い付く。生き残ったことを素直に喜べない自分がいる。

終りなき心のいたみ終戦日  水
<秋童子(天)>
被害者としての痛み、そして加害者でもある痛み。あの戦争の心の痛みは消えることがありません。

長崎忌瓦礫の中のマリア像  万歩
<楽千(天)>
人の世の無情にマリアの手が優しい。

西日射す父の脛なる戦さ傷  楽千
<しゐ(天)>
多くを語らぬ父親。それだけに全てを察する子。

広島忌指切り千本嘘つくな  万歩
<寿美子(人)>


<素人(地)>
おざなりなスピーチの繰り返し。

行く夏の広島被爆ピアノかな  寿美子
<楽千(人)>
歌を奏でる人は何処へ。

<万歩(地)>
時間の経過のなかでも残傷は残る


・2点句

消え去りし人の影踏む広島忌  丹仙
<英治(人)>
蒸発してしまった人影。

<翔河川(人)>
実体はないが

長崎にナガサキの夏原子雲  水
<春愁(人)>
・・・

<しゐ(人)>
あの大らかで優しい人々の住む長崎が、ナガサキを抱えている現実におののく。

広島の恩師の手記や風灼くる  しゐ
<春愁(地)>
心に響く


・1点句

蒼空へ翔ぶ千羽鶴ヒロシマ忌  春愁
<丹仙(人)>
この千羽鶴は、日本だけでなく海外の人たちへ向けられたヒロシマからのメッセージとなりました。

おざなりな総理挨拶長崎忌  素人
<鈴居(人)>
今年の広島の日はもっと世界に訴える気迫があっても良かったと思う。全体に。

終戦はミズリー降伏調印  実生
<素蘭(人)>
That's right.

長崎の坂をぶらぶら百日紅  風子
<水(人)>